自分のこと

三宅天斗

プロローグ

 保育園に通っていた時。何気なく描いた絵が県のコンクールの金賞に選ばれた。お遊戯会では毎年、主役を任されて運動会の徒競走でも毎回ダントツの一位だった。


 小学生の時。二年生から始めたサッカー。チームでは常にスタメンに選ばれ、守備の要として活躍した。学校生活では、クラスや係、委員会などでは常に班長や委員長を任され、勉強も熱心に取り組んだ。それに、小学三年生にして初めての彼女が出来た。


 中学生の時。一年の一学期から学級委員に選出されて、クラスのみんなからの信頼を集めた。部活動では一年目からベンチ入りを果たし、二年の時点で地区の選抜に選ばれた。勉強の方も学年で十番以内には常に入っていて、文武両道を体現。中二で出来た彼女は、学年で一、二を争うくらいの美少女だった。


 そして、高校生――。


「じゃあな……」

俺は、カッターナイフの刃を手首に当てている。ひんやりと冷たい刃がやけに心地よく感じる。

 彼女も出来て、友人にも恵まれ、スポーツも勉強も人並み以上にこなし、後輩からの信頼も厚い。順風満帆なこれまでの日々。普通なら何の不満もない人生なんだと思う。

 だけど俺は、そんな生活にすごく疲れてしまった感じがするのだ。

「ふぅ……」

窓の外を埋め尽くす薄水色の空をぼんやりと見つめる。窓枠で区切られた空の中で、数羽の小鳥が楽しそうにじゃれ合って通り過ぎて行く。そんな長閑ちょうかんな空気の中、俺は右手にグッと力を込めた……。

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