リアルタイムバトル ターンベースでもアクションでもないRPGに残された第3の可能性

■イントロダクション

RPGのバトルがアクションになるのが増えた

いったいなぜなのか?

考えられていないのではないか?

コマンドバトルの面白さが──コマンドバトルがなんのためにあるのかというのが


アクションの面白さはよく考えられている

直観的に動かせる

説明しやすくわかり易い

ボタンを押せば決まった反応が直ぐ返ってくる

ボタンを押せばジャンプする

マリオならこの一行で説明可能


コマンドバトルはわかり難い

その代わり直観的じゃない分、プレイヤーに与えられる選択肢の数はコマンドバトルに分がある

アクションは考えなくてもルーティンで動かせるようになってしまう場合がある

そのためアクションは連打ゲーになり易い

考えるより指先の上手さが問われる

プレイヤースキルが問われる


コマンドバトルはプレイヤースキルではなく事前の準備が大切

キャラクタービルドや情報を分析するのが問われる

アクションとコマンドバトルは種目が明らかに異なっている


しかしゲームが3Dで表現される様になりターンベースに無理が生じた

まず時間が停まる

これをどう克服すればいい?

ここでほとんどのRPGはコマンドバトルを捨てアクションに流れた

プレイヤーはアクションのことはよく知っている

説明のためのコストは減った


コマンドバトルを捨てる

それはこれまでRPGが培ってきたゲームデザインの資産を捨てるのに等しい

元はRPGで使うために作られた魔法や装備品などの資産をアクションで使えるよう作り直す

そうなればもうRPGではないだろう


もうアクションが受け入れられている

コマンドバトルは止めよう

アクションを作ろう

「それはおかしいんじゃないか?」と考える人もいる

そんなRPGが好きだった人はゼノブレイドとライザをやって欲しい


ゼノブレイドやライザのバトルはどこが優れているのか?

二つある

一つはコマンドバトルを捨てずRPGが培ってきた資産を受け継いでいること

そして、もう一つはルーティン化を防いでいること


■ゼノブレイドが如何にルーティン化を防いだか

ゼノブレイドにもライザにもバトル中に敵の攻撃が予告されるシステムがある

ゼノブレイドはビジョンで敵の攻撃が予告される

パーティが所持するアーツの中から予告された攻撃に対し対策となるアーツを選択することでダメージを低減ないし無力化することができる


むろん敵の全ての攻撃を対策できる万能アーツは存在しない

戦う敵に合ったパーティとアーツの準備が必要になる

前述した通り事前の準備はコマンドバトルの基本


しかし敵がどんな攻撃を繰り出すかビジョンが発動するまでプレイヤーにはわからない

つまり、どんなに事前の準備が万全であろうとビジョンが発動する度プレイヤーはアドリブを強いられることになる

プレイヤーにアドリブを強いることでゼノブレイドはルーティン化を防いでいる


ゼノブレイドにはもうひとつルーティン化を防いでいるシステムがある

コマンドバトルのパーティは3名から4名であることが多い

しかしプレイヤーが全てのパーティメンバーをリアルタイムに操作するのは難しい

そこでプレイヤーが操作するパーティメンバー以外をAIが操作する


ゼノブレイドXのバトルにはソウルボイスというシステムがある

バトル中に特定の条件を満たすと味方AIがプレイヤーに指示を発する

プレイヤーがAIの指示に応えるとソウルボイスが成立

バトルを有利にする様々な効果が発動する


ライザにもソウルボイスと似たアクションオーダーというシステムがある

ソウルボイスもビジョンと同様プレイヤーにアドリブを強いているのがわかるだろうか?

ソウルボイスもまたルーティン化を防ぐシステムになっている


コマンドバトルにはアクションにはないシステムがある

しかしこれを端的に説明することができない

例えばゼノブレイドの通常攻撃はなぜオートアタックなのか?


オートアタックにすることでプレイヤーの意識をアーツに向ける様になっている

プレイヤーが考えるのはアーツの選択、アーツの順番、アーツのタイミングであり通常攻撃は自動で構わない

これを理解できるプレイヤーがどれだけいるだろう?


コマンドバトルの面白さを伝えたい

どうしてもみんなアクションに流れてしまう

そうではなく固定観念を捨て去った先にRPG本来のシステムがあるのに気づいて欲しい

ゼノブレイドやライザのバトルが広まるのを願っている


■ゼノブレイド2とライザのアトリエ2

ゼノブレイドとゼノブレイドXは同じ系統のコマンドバトル

しかしゼノブレイド2は趣が異なる

ゼノブレイド2はアドリブではなく決められたアーツをつなげていくコンボ主体のコマンドバトル

つまりルーティン化している


あえてルーティン化させることで見た目のかっこ良さや爽快感が生まれる

バトルがルーティンになるということはゲームデザイナーがプレイヤーの操作を予測できるということでもある

プレイヤーの動きに合わせ最高のタイミングで最高の演出を入れることができる


ゼノブレイド2のバトルはキャラクターの個性を表現する演出に力を注いでいるのがわかる

ただコマンドバトル本来の面白さからは少し遠ざかってしまった

コマンドバトルとしてはゼノブレイドとゼノブレイドXが最適解だろう


ライザのバトルはゼノブレイドとゼノブレイドXと同じ系統

しかしライザ2のバトルには課題が2つある

ライザの1作目はプレイヤーが攻撃対象を選ぶと味方AIも同じ敵を攻撃したが、ライザ2では味方AIがなぜか別の敵を攻撃する


別の敵を攻撃することのなにがいけないのか?

ライザのバトルにはブレイクがある

攻撃がヒットするとゲージが溜まりゲージが限界に達すると一時的に行動阻害状態になるシステム

他のRPGでもよく見かける


ブレイクゲージを溜めるならパーティメンバーが同じ敵を攻撃する方が効率がいい

しかもライザの敵はスペシャルアタックという予告攻撃をする

溜めがあり、溜めが終われば強力な攻撃が繰り出されるのでスペシャルアタックは必ず阻止しないといけない


スペシャルアタックとブレイクのシステムがセットになっているのがわかるだろうか?

予告攻撃を阻止するためにパーティメンバーは同じ敵を攻撃する必要がある

ゼノブレイドにも転倒という行動阻害があるが、やはりパーティメンバーが同じ敵を攻撃するのが前提になっている


ライザ2のもうひとつの課題はガード

バトル中に防御ができるがプレイヤーの操作しているパーティメンバーしか防御できない

プレイヤーが操作していないパーティメンバーはノーガード


アクションの様なバトルに変えたいなら攻撃がキャンセルできる様になっているはずだがそれもできていない

ライザの1作目はコマンドバトルを理解しているゲームデザイナーがバトルを担当している印象があったが、ライザ2はバトルの担当が代わってしまったんだろうか?


■ファイナルファンタジー7リメイクがアクションじゃない理由

FF7RのバトルはATBゲージを消費してコマンドを使用する

ATBというのはアクティブタイムバトルの略でFFではおなじみのシステム

従来のFFではATBゲージが溜まったパーティメンバーから順にコマンドを選択するというシステムだった


FF7Rは従来通り時間経過はもちろん、通常攻撃をヒットさせることなどでもATBゲージを溜めるのが可能

勘違いされ易いが、FF7Rのアクション要素はダメージを与えたり防いだりする手段ではなくATBゲージを効率的に溜める手段になっている


パーティメンバーを切り替えて戦う方がAIに任せるよりパーティメンバーのATBゲージが溜まり易い

それがパーティメンバーをAIが操作するゼノブレイドなどのバトルにない独自性になっている


ではダメージはどうやって与えればいいんだろう?

FF7というRPGの根幹にあるマテリアとFF7Rより新しく追加されたバーストがバトルの鍵になる

前述したブレイクと似ているが、バーストはゲージを溜めることで行動阻害ではなくダメージ倍率を飛躍的に上昇させる


敵にはバーストさせ易くする方法がそれぞれ設定されており、戦う敵に合わせて装備するマテリアを選ばないといけない

ゼノブレイド同様、FF7Rも事前の準備というコマンドバトルの基本を押さえているのがわかる

おなじみの敵に大胆なアレンジが加えられているところも魅力のひとつ


FF7Rのバトルはマテリアを使ってキャラクタービルドするというFF7というRPGの根幹を完璧に押さえている

それはディレクターの野村哲也も意識したはず

だからFF7Rのバトルは完全なアクションになっていない

しかし従来のFFを知らない未経験者に不親切なバトルだったのは否めないだろう


FF7は当時最先端の次世代機だったPSに挑むことで日本のゲーム全体のレベルを引き上げただけでなく、日本のRPGを世界に広めた

最先端の次世代機に挑むと同時に昔ながらのRPGであることも止めなかった志の高さをFF7Rは受け継いでいる


単にRPGが培ってきた資産を受け継ぐだけならRPGのバトルはターンベースでいいのかもしれない

しかしPS5の様な次世代機のRPGを今更ターンベースに戻していいんだろうか?

だからと言ってPS5のRPGを全てアクションにしてしまっていいんだろうか?

その答えがリアルタイムバトルであるのを願っている

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る