第8話 可愛い女の子の家から帰宅する。

「そろそろ、お暇します。

ありがとうございました。」


話の区切りができたことから、俺は帰宅する旨を伝えた。


「あら、もう帰っちゃうの?」


「はい、父親も心配していると思うので。」


そう言うと、結衣は俺の服の裾を指で掴んで離さなかった。


「無理、しなくても良いんですよ?」


ドキッとした。

‥‥バレていた。


「‥‥大丈夫だよ。」


そう言って、結衣の頭を撫でる。

やっぱり、結衣は可愛いな。


ただ、また、やらかした。

‥‥結衣の両親の前だというのに。


そして、生暖かい目で見られる俺達。

やっぱり、俺ってバカなのかな?



それから、俺は家に帰っていった。

『誰もいない』家に到着した。


「デカい家でも、やっぱ1人は寂しいな‥‥。」


察している人もいると思うが、俺の両親は一年前に離婚して、俺は父親に引き取られた。


離婚の原因は母親の浮気だ。


「父さんもあんなになって‥‥。」


離婚の原因が浮気ということもあり、

父さんはかなりショックを受けた。


それでも、俺を育てる為に、仕事には行っている。


‥‥休日はどこかに消えてしまうが。


「本当にどこ行ってるんだよ‥‥。」


なんとなく、察しはつく。

ぽっかり空いた自分の心を埋めに行っているのだ。

例えば、大人のお店とか‥‥。


「‥‥そんなことに意味はないのに。」


まぁ、それでも、仕方ないのかもしれない。

俺では、寂しいという気持ちを無くせない。


それから、俺は家事を終わらせて、リビングのソファに座っていた。


「はぁ〜あぁ、なんか疲れたなぁ。」


今は、午後7時だ。

眠るには、少し早い。

まだ、風呂にも入っていない。少し仮眠を取ろう。


そう思っていたなぁ。

俺はそんなことを思い出しながら、7時を示す時計を見ていた。


眠っていないわけではない。半日経ったんだ。


俺は、いつも7時30分に家を出る。


「はぁ‥‥なんとか間に合わせるか。」


そう思って、急いでいつもの準備を済ませて玄関に向かって、靴箱を開けた。


それで気づいた。父さんの『仕事用』の靴がないことを。


「あぁ、もう、出たんだ。」


そう思っていると、


「ピンポーン」

と、音が鳴る。


「誰だ?」


そう言って、考える。


「もしかして、結衣か?」

それ以外に、思い当たる人がいない。


そう思って扉を開ける。


そこには、


「おはよう‥‥。」

父さんがいた。






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