第46話 消えた兼近さん


 兼近さんの部屋に訪れた俺は信じられない光景を目の当たりにする。

 廊下はゴミで足の踏み場もなかったはずだが、一晩の間にゴミがなくなっていたのだ。

 そして廊下を抜けると生活スペースのリビングだ。

 扉を開けるとそこには兼近さんの姿がない。

 それに最低限の家具しかなくゴミも綺麗に片付けられていたのだ。


「ど、どういうこと? 兼近さんはどこに?」


 すぐに俺は兼近さんに電話を掛ける。

 だが、コールが鳴るだけで出る気配はない。

 家出? いや、この部屋が家出先だ。

 と言うことは実家に戻ったのか?

 訳が分からなかった。


「こうなったら」


 俺はもう一人のリア友に電話を掛けた。


『はい。速水です。冴島くん?』


「あ、速水さん。急にごめん。少し聞きたいことがあるんだけど」


『どうしたの?』


「兼近さんがいなくなったんだ」


『いなくなったって?』


「部屋から居なくなった。もう何時間も部屋に戻ってきていない」


『本当に? 私も何も聞いていないけど、心配だね。私からも連絡を取ってみるから何か分かったら教えるね』


「あぁ、ありがとう。俺も近くを探してみるよ」


 速水さんとの通話を切った俺は近所を走り回った。


「兼近さん! 兼近さん!」


 いくら探したところで兼近さんは居ない。

 一時間ほど探し回ったが、無駄に体力を消費しただけである。

 高校生の俺が夜中に走り回っていると警察官から職務質問をされかねない。

 結局、俺は兼近さんの部屋に戻ってくる羽目になる。

 丁度、速水さんから電話が掛かってきた。


『冴島くん。どうだった?』


「ダメだ。見つからない」


『私も何回か連絡を取ってみたけど、繋がらなかった』


「そっか。一体、どこに行ったんだ」


『兼近さんの部屋には入れるんだよね? もしかしたらそこに手掛かりがあるかもしれないよ』


「うん。俺もそう思って部屋に戻ってきたところだ」


『私も行きたいところだけど、この時間だと家に出られないんだよね』


「大丈夫。俺一人でなんとかしてみるよ。何か分かったら連絡するから」


『うん。お願いね』


 兼近さんの部屋には何もない。

 最低限の家具だけで配信に使う機材も無くなっていた。

 引っ越しとは言い難い状況だが、どこか遠出したような感じが射止めない。

 なんでもいい。何かメモかヒントになるようなものが落ちていないか入念に調べた。


「くそ。普段は片付けなんて出来ないくせにこういう時はしっかりと片付けやがって」


 さりげなく酷い発言をしてしまうが、ヒントくらいは残してほしいものだった。


「そうだ。兼近さんのお姉さんに聞けば何か分かるかもしれない」


 そう思って連絡を取ろうとしたが、連絡先を知らないことに気付く。

 名案だったが、一瞬で打ち砕かれてしまう。


「くそ。どうすればいいんだ」


 兼近さんに関わる手掛かりは途絶えた。

 部屋にもない。家族の連絡先も知らない。

 速水さんにも連絡をしていない。

 他に手掛かりはないものだろうか。

 そうだ。


「Vtuber」


 兼近さんといえばこれしかない。

 俺は兼近さんのチャンネル『アズアズチャンネル』の画面を開いた。

 この画面は滅多に開けることはないが、もしかしたらここに何か手掛かりになるものがあるのではないだろうか。

 更新は二日前で止まっているが、それ以前は毎日更新されている。

 チャンネル登録者数は十五万人を突破している。

 兼近さんの動画は基本、生配信がメインのゲーム実況が多い。

 よって一つの動画に対して二時間は普通の超えてしまう。

 これを全部視聴しようと思えば膨大な時間が掛かってしまう。

 何かここから手際よく兼近さんに関わるヒントを見つけ出す方法はないだろうか。

 俺は動画の視聴を諦めて動画のコメントを最近のものから準に確認することにした。

 なんでもいい。何か手掛かりになるものがあれば。そう思って俺は全部のコメントを読み始める。



ーーーーーーーー

急展開。

兼近さんはどこへ?

続きが気になるあなた様

【★★★】をどうかお願いします!

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