第10話 デート?
「お待たせ!」
着替えが終わった兼近さんは俺の目の前に現れる。
手と足が丸見えでまさにギャルという見た目をした格好である。
部屋着の時はダボっとした大きめの服だったが、これはこれで新鮮味を感じた。特に服の上からでも分かる胸の膨らみが目につく。
「少し派手じゃない?」
「そうかな? いつもこんな感じだけど」
「まぁ、いいけど」
「じゃ、行こうか」
「うん」
冴えない俺が美少女ギャルと並んで歩く姿は少しレアである。
まるでカップルのようで勉強しかしてこなかった俺に転機が訪れた。
「とりあえず駅に行こう」
「電車移動だね。図書館ってどこだっけ」
「いや、今日は図書館にはいかない」
「え? どうして?」
「兼近さんと行くと絶対に追い出されることが見えている」
「それってどういう意味よ」
「いや、絶対うるさくするし」
「しないし。私みたいな常識人が図書館で追い出されるような失態あるわけないじゃない」
どこが自分を常識人だと言える?
学校での態度を見れば兼近さんは常識から外れている。むしろ非常識の部類に入るのだが、本人にその自覚はないのだろうか。
「行かないにしてもどこに行くつもり?」
「俺も勉強ばかりでは身体に毒だと自覚している」
「じゃ、遊ぶ?」
「いや、遊ぶとは少し違うな。今日の目的は気分転換をしようと思う」
「気分転換? じゃ、遊ぶんだね」
「だから違うって」
そのまま電車に乗り、五駅先で降りて改札を抜けた。
向かった先は市内でも大きな公園だ。
科学館や美術館が内包するため、年中通して多くの人が訪れる。
彩り豊かな樹木や花に加えて芸術的な噴水や彫刻を楽しめる公園として有名だ。
「あーここね。一度来てみたいと思っていたんだ。冴島くんにしてはセンスあるね。女の子と来る場所としては正解だよ」
「なんで俺が試されている感じになっているんだよ」
「えへへ。それで何をする?」
「ひたすら歩く」
「歩く?」
「ウォーキングにはメリットしかないんだ。脂肪燃焼効果や肥満解消。それに中性脂肪の減少や血圧・血糖値にも良い影響を与える。生活習慣病の改善・予防効果も期待できる。何より日光を直接浴びることでビタミンDが活性されて丈夫な骨や歯を作ることができる。更に日光にはセロトニンという物質が分泌されて神経伝達物質の向上にいいんだ」
「冴島くん。さっきから何を言っているか分からない」
おっと、兼近さんには少し難し過ぎたようだ。
「まぁ、ウォークングは身体にイイってことだよ」
「そうなんだ。じゃ、早速始めよう」
トコトコと兼近さんは歩き始めた。
それに続き、俺も並んで歩く。
だが、歩幅が合わないのか、兼近さんと距離が離れる。
「兼近さん。歩くの速いね」
「そうかな? 足が長いから?」
「確かに足は長いかもしれないけど」
「ただ歩いているだけで汗掻いて来ちゃった。今日は暑いね」
「そうだね」
俺は額から徐々に汗が流れる。
それに対して兼近さんは暑いと言いながらも涼しい顔をしていた。
「ダメだ。休憩」
俺はベンチに座り込む。
「あれ? 冴島くん?」
「意外とキツイ」
「情けないな。私はまだ余裕だけど」
「兼近さん。何かスポーツをやっていた?」
「そういうのはやっていないけど、体育ではいつも『5』だったよ?」
元がいいのだろう。それに対して俺は『2』でたまに『3』が付くある程度の凡人だ。
ウォーキングに汗を流して満足の俺だったが、兼近さんはどこか物足りなさを感じているようだった。
「ねぇ、次何をするか私が決めていいかな?」
「え? あぁ、構わないけど、何をするの?」
「そうだなぁ……。動いたからお腹空いちゃった」
「な、なるほど」
時刻は昼時。丁度、ランチタイムである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます