第6話 坂本さんと調理実習

「調理実習の班はっと、あれ? オタク君しかいないの?」


 俺はその言葉に頷く。


「うそ、先生人数調整ミスってるじゃん。ちょっと先生に聞いてくるから待ってて」


 そう言って坂本さんは先生の方へ走っていった。


「欠席者がいるから2人でやってくれだって……まあ逆にいえば2人だからこそチームワークの見せ所だね!」


 その言葉に頷く。


「それで今日は何を作ればいいんだろ? この紙に書いてるのかな? えー、味噌汁、だし巻き卵、秋刀魚の塩焼きってザ・和食って感じだね。じゃあまずは魚を焼いちゃおうか」


 そういうと彼女は魚の内臓を取り始めた。

 手際がいいんだねと言うと


「料理ができるのが意外だった? まあエリナさんクラスになればなんでもできるのだよ! ということで、この魚の下処理はしておくから味噌汁で使う野菜を切ってくれない?」


 俺はこくりと頷いた。


「じゃあ玉ねぎを切っといてくれない?」


 俺は坂本さんの指示通り玉ねぎを刻んでおいた。


「ありがと! おっ、意外とオタク君もやりますなぁ。

 じゃあ次はこの人参をいちょう切りにしといて!」


 俺は言われた通りに切る。気分は料理人だ。褒めてくれたおかげでやる気も上がった。


「次に出汁を取るからその間に乾燥わかめを水に浸しといて」


 俺はワカメを水につけた後坂本さんの方を向いた。するとそこには出汁の様子を味見して確認している坂本さんの姿があった。

 制服の上からだが、エプロン姿を着てきてなんか奥さんの様だ。髪の毛は金髪だが……



「じゃあ次にお願いするのは………ってそんなに私を見つめてどうしたの? ……さては、エリナさんのエプロン姿に見惚れていたの?」


 違う、と否定してもコノコノーと言って肘で突かれる。


「違うって、ふーんそんなこと言うんだ。……コホンッ、あなたおかえりなさい! ご飯にする、お風呂にする? そ、れ、と、もー……」


 急に新婚のノリをしてきた坂本さんにびっくりしつつも、唾を飲んで続きを待つ。


「エリナさんのエプロン姿に見惚れてたことを白状する?」


 と言って鼻をちょんっと弾かれた。

 ……可愛い。


「か、可愛いって急に何言ってんの!? 授業中だよ!? エリナさんもびっくりだよ! ………すみませーん」

 

 と騒いでいると先生にうるさいと怒られてしまった。


「き、君のせいだからね!」


 と小声で言われた。


「………続きやろっか?」


 坂本さんの問いに俺は素直に頷いた。


「出汁は取れたから切ってくれた野菜をいれてっと、あとは野菜に火が通るのを待つだけだね!」


 俺は頷く。


「後はだし巻き卵だけだね、これは味噌汁の時にとっておいた出汁をといた卵に入れてこんな感じで……くるくる回して行くだけだね」


 と言って見事な出際でだし巻き卵を作ってしまった。


「あとは味噌汁にワカメを加えて火を止めて味噌を入れれば完成! 魚もいい感じに焼けてるね!」


 と言って全部作り切ってしまった。


「おっ、私達が1番みたいだね!」


 本当だ。数が1番少ないのにすごい。

 でもこれも坂本さんのおかげだ。俺はほとんど何もしてない。

 俺は坂本さんに料理得意なの? と聞いた。


「料理が得意かどうかかー、どうなんだろ? モデルの仕事で家帰るのが遅い時とかに自分で作ってたからかな?

 まっそんな事どうでもいいじゃん! 食べよ!」


 いただきまーすと手を合わせていう。

 味噌汁を飲む。美味しい。卵を食べる、美味しい!焼き魚を食べる。美味い!

 俺は目の前にあるご飯を一心不乱に食べた。


「すごいがっつくなぁ……そんなに美味しかったの?」


 俺は頷いた。そして坂本さんのおかげだと言った。


「私のおかげって……違うよ! 私達2人で作ったじゃん! もぐもぐ、うん美味しいね」


 俺達は作ったご飯を食べるのだった。

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