俺は魔女に握手をした。


いやしようとした。

俺が近づき始めた途端に、表情を硬くして魔女は少し後ずさり、短く言葉を発した。


何て言ったか分からない。


直後、頭を押さえつけられるような感覚がして床が目の前に迫ってきた。

衝撃に耐えようとしたが、いつまでたっても痛みが来ない。

魔女に言い訳しようとしても喋ることができない。


これはなんだ。四つん這いになったような感覚。視界が広くなったような感覚。周りの植木鉢や水がめや、いろんなものがすごく大きく感じる。大男?いや、大女が地面を揺らしながら近づいてくる。逃げたくても足が動かない。靴が目の前に迫る。


足をつかまれ、逆さまになりながらぶぅううんと持ち上げられる。ひいぃ、ここで落とされてはたまらない。力を抜いてなすがまま、でもいつでも逃げられるよう隙を……。

大女は魔女だった。ということは、俺は魔女に魔法をかけられたのか。


『ふんっ。何をしようとしたのか知らないが、アタシに盾突こうとするからだよっ。ちょうどカエルの干物が切れていたところだったんだ』


いや違う。握手したかっただけなんだ!でも声にならない。


『じゃあ、まずはこのを乾燥させなきゃね』


え?カエル?


大女は焼き鳥の串のような棒を右手に持ち、左手で俺の腹を持って、俺の尻から……


― 終 ―


A.寒村に戻る

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