第23話 対決 殺し屋兎 その1

 エリザ視点 


 いたずら兎がギラリとした目つきで、私を見ている。私の籠を標的にしたようだ。


 絶対に穴を空けさせない。守ってみせる。あの角だと籠に穴が空くどころか、壊れてしまう。この籠はね。トレシャツ5枚分なんだよ。


 この可愛い兎が、いたずら好きで私にじゃれてるつもりでも、これは譲れない戦いだった。


 いたずら兎は私を見て舌なめずりしている。よほど、この籠と中の薬草が気になって仕方がないのだろう。いたずら兎と私は様子をうかがいあった。


 にらみ合う仲……、この兎は本当に可愛いのだろうか。流石に可愛いくないような……、そう考えてしまった時だった。


 いたずら兎は私に向かって突進をしかけてきた。よほど籠が好きなのか、物凄い速さで私に向かってくる。それに合わせて私は前に出た。そして、アリスは後方へと下がった。


 いたずら兎の角が、私ごと籠を貫こうとしている。だけど、今の私はオジ槍弐式(ゲイボルグ)を手にしている。私は角を振り払う。私の手に強い衝撃が響き渡った。そして、私は後方に下がった。いたずら兎も私の様子を窺い深追いせず後方に下がった。


 このいたずら兎は、戦い慣れしてる?


 あのまま攻めこんでくれたら、一撃で終わらせてあげたのに、もしかして、ただのいたずら兎じゃなかった? コツコツと薬草を盗んで、冒険者の籠に穴をあけて、レベル上げを頑張っていた、頑張り屋さんの兎だったかもしれない。


 少しこの兎が可愛いと思ってしまった。でもここで私に会ってしまったのが、 運の尽き。さぁ、次で終わりにしてあげる、と力を込めて槍を構えると──。


 いたずら兎はさらに後方へ下がり、角を空に掲げかかげ雷をまといだした。そして、角を私に向け放電させた。いたずら兎が私に向けて電撃を放ったのだ。さらに、それだけでは終わらない。いたずら兎は私に向けて突進攻撃をしかけてきたのだ。


 私が電撃を避けたあと、体勢をくじいたところをいたずら兎は、籠を狙うのだろう。いたずら兎の口元がニヤリとしている。


 電撃を避けずに受け止めれば薬草が焦げてしまう。躱せば籠がやられる。熟練のいたずら兎だけあって、知能が高い。私はどうすればいいの、このままでは、わたしの籠がやられる。


 そこでアリスが、


「電撃はわたしに任せてください、『ファイアウォール』!!」


 彼女の火の聖痕スキルが発動する。火の柱が壁となって電撃を相殺していく。


 先ほどの余裕の笑みが、いたずら兎から消えた。いたずら兎は、私の正面からただ向かってくる。


 赤黒いもやが私の槍にまとわりついていく。


 いたずら兎は私の槍を見て恐怖を覚えた。いたずら兎は足を止めることができない。私は地面を強く蹴った。そして前に飛んで加速する。とてつもない速度で、いたずら兎の頭に槍を突き刺した。


「ぐおおおおおぉぉっ!!」


 私はいたずら兎の頭から槍を抜き、振り払った。いたずら兎の頭から血しぶきが上がる。いたずら兎は絶叫をあげだした。もがき苦しみ暴れたあと地面に転がったまま、いたずら兎は動かなくなった。

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