第29話 戦聖女と魔王
「要は我が其方に勝てば、其方は我の物と言う事で良いのだな。」
「お手並拝見します。」
魔王は、黒炎を左腕から放ちメルティアをねらう。黒炎は、消火が困難な上に魂にもダメージを残す厄介な攻撃だ。
『ホワイト・サイクロン』メルティアの聖属性魔法は、黒炎を巻き上げ四散させる。
息つく暇もなく、魔王は、メルティアを捕らえようとする。地面から薔薇の蔓が伸びて巻き付いてくる。
『セイント・フレイム』巻き付いた蔓が灰になって消える。
続いて周囲には、既に7本の黒く巨大な槍が、メルティアを囲んでおり、間髪入れずに撃ち込まれる。
撃ち込んだ筈の攻撃音がしない。
メルティアの懐には、大きな真っ白な光球が眩しい光を放っており、近づく物全てを消し去っていた。
メルティアは、左手に光球、右手には光の剣を握る。その姿は、まさに戦聖女と呼ぶに相応しい立ち姿である。
『ホワイト・セイバー』右腕を振り下ろすと、魔王に向けて白く眩しい閃光が走り、大地が裂ける。
魔王は閃光を避けると黒い翼を広げて舞い上がる。
『セイント・プラズマ!』魔王に向けて白い雷が走る。
《ガジジジィ》
魔王の左の翼に命中、魔王は落下し膝をつく。
「うむ、流石は戦闘に特化した聖女・・・名ばかりでは無いと言う事か。」
戦闘は、メルティア側が有利に進めていたが、他の魔族から声がかかる。
「残念だが、そこまでだ!こんな小さい子を連れて来たのが、失敗だったな!」
クロエが魔族のNo2に捕まって、既に気絶していた。
「当然言う事を聞いて貰うとしよう。」
その頃、シェスターは一人で、最上位魔族を含む魔族10体を戦闘不能にして、残る5体を相手にしていた。
クロエに目が届かなかったのだ。クロエも上位魔族程度なら対応出来たかもしれないが、最上位ともなると荷が重かった。
「魔法防御と魔法アイテムを全て外して前に置け。抵抗はするなよ。」
聖属性魔法を纏わず、シェスターのブローチを外すと、真っ白な身体の線が見える魔法着だけの極めて無防備な状態である。
《ゴォ》魔族のごつい触手がメルティアを薙ぎ払う。
《ゴキィ!》
「きゃあぁっっ」悲鳴と共に飛ばされて地面に叩きつけられる。左腕と左胸肋骨骨折・左肺損傷で吐血して座り込んで動けなくなる。
メルティアの首に強力な魔封具がはめられてしまう。もう何もできない。
「よくもこれだけの仲間を倒してくれたなぁ・・・少し痛ぶってやる。」
メルティアの骨折した左腕を掴んで吊り上げる。メルティアは、泣き叫ぶが当然、残った魔族は、やめてくれない。
吊り上げ硬く太い打棒で両大腿部を何度も何度も殴打する。
《グシャッ ゴキャッ》
骨が砕け筋肉が潰される音がする。メルティアは、もうただ泣き叫ぶしかなかった。もう自力で逃げ出す事もできない。
「それくらいにしろ!そいつは我の性奴隷にするのだから。さぞかし良い、子孫が沢山作れる事だろう。」魔王は、冷ややかに笑った。
メルティアは、血だらけのボロ雑巾の様に牢の石畳みに投げ捨てられた。
シェスターは、メルティアを人質に取られ別な部屋で、サキュバスたちに拷問されていた。クロエは、別の牢屋に閉じ込められている。絶望的だった。
メルティアは、めちゃくちゃにされた身体ではあるが、精一杯の抵抗をする。魔王は、抵抗すればするほど、残忍になっていった。
メルティアの身体は、全身打撲、内出血で腫れ上がり、酷い部分は皮膚や筋肉が裂けて傷口が外から覗いているのだ。魔王は、それでもやめない。メルティアの泣き叫ぶ声は止む事はなかった。
そんな中、忘れられて拷問を受けていないクロエは、魔封具は付けられたものの、通信用の魔法アイテムは、使える状態だった。クロエは、嫌ってはいるものの、自分達を助ける事か出来るのは、シーベルしかいないと考えていた。
程なく連絡がつき、数時間後には、シーベル・アルフィン・カルセドの3人が、ベルリオーズ城に乗り込む。
シェスターは、アルフィンが、クロエはカルセドが対応し、メルティア救出には、シーベルが向かった。
酷い光景であった。あの綺麗で可愛らしい微笑みをくれるメルティアは、血生臭い牢屋の中で殆ど服など着ていないあられも無い姿で、ボロキレの様に打ち捨てられていた。
シーベルは、鉄格子を難なく焼き切るとメルティアに駆け寄り抱き上げる。
「なんて、酷い事を・・・」
「た・・・すけに・・・てくれた・・・だぁ」メルティアは、それでも精一杯の微笑みをシーベルに向ける。
思わず、シーベルの眼に涙が溢れる。
「また、こんな無茶して・・・ばかだなぁ」
「ごめんね、迷惑かけて・・・そうか・・・今日はベルが王子様になってくれるんだね。」
《ガハアァッ》
突然大量の吐血をして、呼吸が出来なくなる。
シーベルは、慌ててマウス・トゥ・マウスで人工呼吸して蘇生する。メルティアがこんなに酷い状態になるのは見たことがなかった。
シーベルもいつもなら、魔王と決着をつけに行く所だが、メルティアが危険な気がしてどうしようもない。一旦、アンブロシアに帰還する事にしたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます