第19話 メルティア魔法師団

 次の町は、ロドナイト。本来は、由緒正しき騎士を生み出す町。聖騎士ガードナの伝説の聖地だった地である町なのだ。


 町に入るなり、ゴロツキが寄ってくる。


 「おい、この町に入って来たからには、手間賃払ってもらわないとなぁ。」


 「貴方達は、何方ですか?あまり、印象の良くない方達ですね。」


 「・・・あぁ、お嬢さん。貴方には、取り調べが必要ですね。」


 ゴロツキも、銀白の髪、真っ青な瞳を目にして、慌てて目の色を変えてきた。このまま逃してくれそうにない。こっこれ程の上玉は、、、まずいない。捕まえてボスに献上しないとな。彼らは必死である。


 「私の妻に、手を出すとはいい度胸だな。」シェスターが彼らに割ってはいる。


 「どいてな!」言うより先にナイフがシェスターを襲う。


 シェスターの左拳がゴロツキの顎を撃ち抜く。


《ぐぅ》一撃で崩れ落ちる。


 シェスターは、特殊な体術にも通じていて、急所を確実について、一撃で仕留めるのが得意なのだ。数回の挙動で3人のゴロツキは、沈んだ。


 「メル、行こう。付き合う必要ないよ。」


 「シェス、結構喧嘩っ早いんじゃない?」話しながら町中に入っていく。


 「何か心配な町・・・教会に行ってみましょう。」


 暫く歩くが、町の街頭を歩く人の姿はなく閑散としている。


 「これは、予想以上にひどい町なのかもしれない。」高台に、教会が見えてくる。


 近づいて初めて分かるのは、教会は廃墟になっていたのだ、しかし周囲には、ガリガリに痩せた、子供達が隠れ住み着いていた。


 「君たちは、一体どうしたの?お父さんは?お母さんは?」


 なにも言わずに、ただひたすら悲しそうに、俯く彼らにそれ以上聞く事が出来なかった。


 「みんな、殺されるか、奴隷として売られたんだ。」リーダーらしき子供が一人答える。


 メルティアは、じっとその子の瞳を見つめて話しかける。


 「お名前は?」


 「セージ・・・」


 メルティアは、抱きしめると、はなしだす。


 「そう、セージ・・・みんなでご飯食べようか。」そう言うと、ストレージから、準備を取り出して準備しだす。


 「もう大丈夫だから、皆んな呼んでおいで。」優しく話しかける。


 「だめだ、早くここから逃げてくれ。あんたらいい人達だから、こんなところにいちゃダメだ。」


 思わず、また抱きしめてしまう。メルティアの胸に抱きしめられると、とても良い匂いがして、暖かくて、セージは何故か泣いていた。


 「大変だったね。大丈夫。誰もここには来させないからね。安心して・・・」


 メルティアは、右手を翳すと周囲に、淡い薄桃色の光が広がって明るく照らす。侵入防止結界を展開した。


 「もう誰も入って来れないよ。私これでも聖女なんだよ。信じてくれた?」セージは、なにも言わずに、抱きついてきた。


 「そうだね。寂しかったね。何とかしてあげるからね。」


 メルティアは、食事を拵える。山牛の肉のたっぷり入ったスープと、ストックしてる白パンを出してたべさせる。


 全員で男の子3人、女の子4人であった。「そっか、セージたちが皆んなを守ってたんだ、偉いね。いっぱいたべてね。」メルティアも泣いている。


 「お姉ちゃんの名前聞いてない。」


 「あっごめん。私は、メルティア。お兄ちゃんは、シェスターだよ。メルとシェスでいいからね。」


 この無常な環境を、天を見上げながら憎々しく思っていたが、ふっと思いつく。


 「明日から、貴方たちに、魔法と剣術を仕込みます。これからは、その力でこの町を良い町にして行くのです。」まるで自分が決心したかの様に話す。


 「貴方達を必ず強くしてあげるからね!」


 その日は、みんなで教会の中を片付け生活魔法で綺麗にして、眠りにつく。セージは、メルティアに思い切り懐いて、しがみついてくる。女の子は、王子様がいいのか、シェスターが人気だ。みんなで寄り添って眠りについた。


 翌日、さっそく彼らの鑑定から確認が始まった。


 メルティアとしては、どうにもセージがリーダーである事を重視しているようで、特殊な魔法強化を行う考えを明らかにしていた。


 神様はとても厳しくてそういう必要な人間にその才能を与えないのだ。そう、セージにはその才能がなかったのだ。


 「大丈夫、わたしが何とかしてあげるからね。ずっとそういう檻の中で生活してきた私はいろいろな非合法な魔法がつかえるんだから。」


 セージの額にメルティアは人差し指を充てると特殊魔法を放つ。


 『キャパシード!』


 魔力のない素体の器に強制的に魔力容量を作り出す魔法である。セージにはかなりの量の魔力容積が与えられた。この魔法はメルティアにかなりの負担をかける問題点があるが結果は成功であった。


 属性は炎と無属性の二つでった。魔法自体も、『ティーチ』という魔法指導スキルを使い、覚えさせた。


 ファイアランス・ファイアストーム・空間転移・空中浮遊・空間障壁などの使用を可能にした。


 剣術は、シェスターが指導を開始、相談の上で両手剣を選択した。


 他の子達にも、満遍なく魔法を付与していく。バランスよく属性も配置して、回復系魔法も二人の女の子が使用できた。


 魔法師団としてみても、なかなか見栄えが良い集団が結成された。


 彼らに対して最初の指示が出された。ギルドに登録して、最低限の生活が自分でできるようになると言う指示である。彼らは成長していった。

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