男の俺が大聖女だった件

@shimanekoshippo

第1話聖女誕生

ここはとある異世界のとある国の王都……

魔物が蔓延る世界で力をつけるため、ソラという名の少年が父に稽古をつけてもらっていた。


「いざ!剣士ソラ参る!」


俺は木刀を思いっきり握りしめて、父に向かっていった。

そしてそのまま飛び込むように攻撃する。


「おっ!今のはなかなか良い攻撃だったぞ」


簡単に受け止められた後にそんな言葉を返してきた父にムッとする。


「フン!受け止められてたら意味ないじゃんかよ」


「いやいや、ソラはまだ11歳だってのにこんなに剣技が上手なんだ。充分さ」


「明日で12歳になるし……」


「ははっ、そうだったな。そうか、つまりいよいよ明日、神様より職業を授かるんだな?」


職業……この世界では、12歳になると、すべての子どもが教会で適性職業を与えられるのだ。

神様から与えられるらしく、適性のある職業を獲得したら、皆その道に進むらしい。

魔物が蔓延るこの世界では命を守る術が、剣や魔法になる。魔法は魔法使いの系統の職業を持つ者でないと使えないし、剣技も剣士系統でなければまともには使えない。

よって、職業の半分以上が戦闘職なのだとか……

余談だが、稀に歴史上でも1人しか持っていなかった職業なんかもあるそうだ。

そういった職業はユニーク職業と呼ばれている。


「うんっ!絶対に勇者か賢者か聖騎士……ダメでも剣士や魔法使いになるんだ!」


「意外と選択肢多いんだな……というか、そんだけ選択肢多い割には回復系の職業がいない気が……」


「回復系は嫌だよ。自分では攻撃出来ない癖に回復してるだけで偉そうだもん。あんなのになるくらいなら職業得ない方がマシだよ」


「お前……ヒーラー(回復役)に親でも殺されたのかよ」


「その場合殺されたのはあんたになるぞ。ともかく、回復役なんて死んでもゴメンだね」


すると、そこにソラの双子の妹であるマヒロがやって来た。


「ん?私は回復役良いと思うけどなぁ。むしろ痛い思いしないといけない剣士とかよりよっぽど良いじゃない」


「うおっ!マヒロ、いたのか……。だからお前はダメなんだよ。いいか!回復役は攻撃出来ない。だから、冒険に出たとしても誰も怪我をしなかったら何もせずに終わりだ。それなのについて行っただけでみんなと同じ様な評価と報酬を得るんだぞ?小狡いぜ」


「でも回復役が居なかったらいざという時危ないじゃない」


「そんなの、回復薬があれば危なくないよ。分かったらマヒロも僧侶とか回復士じゃなく、剣士を目指すんだな。魔法使いでも良いぞ」


「え〜私は聖女になりたいの!」


聖女……それはあらゆる職業の中でも特に回復力が高く味方への援護力の高い職業だ。

全職業の中でも最も戦闘が出来ない職業であり、その分それ以外の面なら大半のことができてしまうのだ。

ただし、その強力さ故に聖女は100年に一度しか現れないと言われている。


「最後に聖女様が現れたのが99年前だから、今年現れるのは確実!良いよねー。誰がなれるのかな……」


「おいおい、聖女なんて回復系の職業の中でも1番戦えない職じゃんかよ。俺はそんなのに興味無いね」


「ムゥ…ソラの馬鹿!」


大好きな聖女を馬鹿にされたことで腹を立てたマヒロが家に戻ってしまった。


「ったく、マヒロのやろー耳元で大声上げやがって……」


「いやいや、ソラ。今のはお前が悪いぞ。後で謝っておきなさい」


父が息子に諭すが納得のいかない様子だった。

それでも、これ以上言い争うのも面倒だし、少しは悪いと思っていたようなのでここは素直に謝ることにした。


「分かったよ……」




………………………………

………………

……



その夜、熟睡していたソラの上にマヒロが乗り込んできた。


「ねえ、起きて起きて!ソラ!見て見て見て!私の職業!」


「ん……何だよ。今はまだ夜中の12時だろ……」


マヒロとソラは誕生日になった瞬間にステータスボードを得る。

そのステータスボードに自分の職業、能力値、特技が書かれているのだ。

ソラは翌朝に見ようと思っていたようだが、マヒロは我慢できず、12時を過ぎた瞬間に見たようだ。


「そんなことより見てよ!私の職業……聖女だって!」


「はぁっ!?お前の職業が聖女?馬鹿も休み休みに……」


信じない様子のソラにマヒロがステータスボードを見せつけた。


「……ね?ホントでしょ?」


「……ホントだ」


暫しの沈黙……

ソラは事の重大さを理解している。

マヒロは理解していない。


「ねぇねぇ!私、教会で働けるのかなぁ……前の聖女様みたいにたくさんの人を幸せにできるのかなぁ!」


「……あ、ああ、出来ると思うぞ。良かったなお前成りたがってたじゃん。聖女に」


「うん!めちゃくちゃ嬉しい」


「じゃあ俺は眠いからもう寝るな。明日の朝お父さんとお母さんに伝えとけよ」


「分かった!」


そう言って、マヒロはベットから離れて行った。

まさか本当に聖女になるとは……

あれ程回復役にはなるなと言ったのに。


「うーん……まぁ良いか」


ただの回復役ではなく聖女だ。ソラ自身は嫌いだが、マヒロが望んでいたモノだ。

ならば反対するのも良くない。好きにやらせれば良い。というかよく考えたら俺に口出しする権利とかなかったわ。


「俺が回復役だったならともかく、アイツは好きでやるわけだからな」


少し……ほんの少し遠くに行ってしまった妹の事を羨ましく思うが……


しかし、そこで嫌な予感がしたソラは直ぐにステータスボードを開いて自分の職業を確認することにした。


「俺は……違うはず」


頭の中で何度も否定しながら恐る恐るステータスボードを開ける。


「大丈夫…職業は戦闘系が半分以上。戦闘系の確率が1番高い…」


うわ言のように呟きながら職業の欄を見た。

それを見た俺は初めて聞く職業に首を傾げた。


「……だ、大聖女?」



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