【絶対攻略不可?チート必須?】~隣の席のクール系美少女を好きになったらなぜか『魔王』を倒すことになった件。でもオレが本当に攻略するのは君の方だったようです。~

夕姫

1. プロローグ

1. プロローグ




 オレは初恋をした。それは突然現れた女神といっても過言ではない。窓の外を見る横顔が美しい、隣の席の彼女。一瞬で心を奪われた。


 そして、入学してから1週間。オレは彼女に話しかける勇気もなく、ただ遠くから眺めているだけだった。


 オレの名前は霧ヶ谷颯太。今年の春から高校に通うために一人暮らし生活を始めることにしたのだ。


 しかも家賃が安くて2LDK。トイレ風呂別。まさか東京でこんなにいい物件に巡り合えるとは思わなかったなぁ……しかも、アパートじゃなく一軒家。まあ、その話は置いといて、今は目の前の状況をどうにかしないといけないだろう。


 いつものように学校を終え、オレが家に戻るとそれは起こっていた。見知らぬ荷物が部屋にあり、「なんだこれ?」と言う思考と共に訪れる。


「霧ヶ谷君?」


 後ろからオレを呼ぶその可愛いらしい声。初めてハッキリと聞いたその声。振り返ると、腰まで伸びる黒い髪に整った顔立ち。そして何より、透き通るような綺麗な目。思わず見惚れてしまうほどだ。そうそこにはあの隣の席の彼女がいた。






「それでどうするつもりなんですか?霧ヶ谷君」


「いや。どうと言われても……」


 とか言ってる場合じゃない。なんとなく分かると思うがお決まりのあれだ。『二重契約』と言うやつだ。世の中こんな技術が発展しているのに、そんなこと起こりえるなんてあり得ないだろ?なんて思うかもしれないが、世の中何があるか分からないからな。こういうこともあるんだろう。


「なるほど。ならあなたが出て行ってもらえますか?」


「いやちょっと待て!オレだってここに住めないと困るんだよ」


「じゃあ新しい部屋を見つけるしかないと思いますが。早く見つけてください。私はソロで攻略できますから」


「さっき不動産屋に行ってきたんだけどもう部屋がないって言われたんだよ」


 まさかこんな早くから問題が発生するなんて思わなかったぞ。しかも惚れた相手と揉めるなんて……ついてない。


 彼女の名前は『柊 咲夜』。この春からオレと同じ高校に通っている。しかも同級生でクラスメートで隣の席だ。そして彼女はとても可愛い。クール系美少女というやつか。だから入学してすぐにモテまくっている。


 まぁオレもそのうちの1人なのだが……。


 正直一目惚れした。彼女にしたい!そんな願望はある!とりあえず今はいいか。とにかく今はこの状況を何とかするべきだ。


「ふぅ。まさかここで予想外のことが起きるなんて厄災が起きるかもしれない……。もしかしてこれは大天使スカーレット=ナイト様のお導きなの?この先はさすがにソロでは厳しいと言うことかしら……。」


「え?大天使スカーレット=ナイト?」


「まぁ仕方ありません。ここは共闘といきましょう。魔王はすぐそこまで来ていますからね?魔王を倒さなくては世界は救えません」


「魔王!?」


 何言ってんだ?柊さん。それに魔王が来る?


「私の力はまだ未完成……使うことは出来ない……。霧ヶ谷君。あなたに頼みましたよ!」


「いや、ちょっと待て!いきなり何を言っているんだ?」


「せっかくなので、魔王を倒すまではあなたとパーティーを組んであげますよ。足だけは引っ張らないでくださいね?」


「あの柊さん?ゲームのやりすぎじゃ……。」


 厄災だとか魔王だとか中二病ですかこの人?ゲーム脳なのか?とにかく発言がまったく理解できない。というか学校でのクールな柊さんはどこにいったんだ!?


「私の名前は咲夜です。名前で呼んでくれませんか?」


「あーはいはい。分かったよ咲夜さん。それで?とりあえず新しい部屋が見つかるまで同居するってことでいいのか?」


「同居ではありません。パーティーですが。」


「ああそうだったな。この事は学校や周りの人にはバレないようにしないとな」


「ならばここで騎士の誓いを立てましょう。まず私たち2人の関係は絶対に周りに秘密にすること。次にお互いのことを詮索しないこと。最後に何かあったら必ず報告すること。これさえ守れば大丈夫でしょう」


 騎士の誓いが分からん。なんか急にしっかりしてきたけど、まあしょうがない。オレもこのまま野宿とか嫌だしな。というかこれはラッキーなのでは?咲夜さんの言葉じゃないが、ゲームで例えると『攻略』。これは頑張れば咲夜さんを攻略してお付き合いできるのではないか?


「そうだな。じゃあこれからよろしく頼む咲夜さん」


「よろしく頼まれました」


 こうしてそんな安易な考えからオレと咲夜さんとの奇妙な共同生活が始まったのであった。

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