常連客


 いらっしゃいませ〜っ、おっと、ぽこさんご来店どもどもいらっしゃ〜いませ〜。 店長、ぽこさんですよ〜。ご注文はいつものキリマンジャロコーヒー無糖ブラックと店長のオススメケーキではないでしょうかねぇ。

 え〜、そうかなぁ、絶対今日はカレーライスセットじゃないと思いま……ん?

 あぁ、すいません、お客さんを待ちぼうけさせるなんざ、ウェイのトレス失格もんですねぇ。ではではいつもの席にご案な〜い。

 さてではご注文は、あははは、やっぱり店長オススメケーキとキリマンジャロじゃないですかぁ。へへ、先読み成功てかもうパターンは掴んだというかね。おっとぅ、お冷おひや〜と、はい? なにをいってるんですかぁ、わたしの心の中で愛は込めましたよぅ? はい、お冷ど〜ん。もう、そんな顔してもやってあげませ〜ん、サービス過多は身体に悪いと偉い人も言ってましたぁ、誰が言ったかは知らんけども、アハハ〜。もう一年も通ってる常連さんなのにこの愛がわかりませんかねぇ。ほら、ちょっと多めに愛の音がなってますよぅカランカランと。それは、氷の音? いやぁ、バレちったか。



 はいは〜い、ケーキセットおまちどうさまで〜す。今日のオススメはイチゴのミルフィーユとレモンレアチーズケーキとなっておりま〜す。はえ、いつもよりケーキの数が多いとな? あ〜、それは常連ぽこさんへのサービス――と、言いたいところですけど、実はですねぇ店長いま上機嫌なんですよぅ。だから、常連さんみんなにサービスしちゃいたいんですって、ついてますねこのこの〜っ。

 んぅ、ちなみにこれは特別な常連さんであるぽこさんになら言っていいよと許可をもらった上で言っちゃうんですけどぅ。はい、ちょっとコショコショっとお耳拝借。


 なぁんとぅ〜、店長にカノジョさんができちゃったのですよぅ。んねぇビックラほい、五十越えの春がやってきたてわけなんですよねぇ。いやぁ、めでたい。しかもカノジョさんは二十も下ですってよっ人生なにが起こるかわかったもんじゃ無いですねぇ。んまぁ、二十こ下でもわたしよりはずっと人生の先輩ではあるんですけどねぇカノジョさん。しっかしまぁ、店長もからかいがいがあるからなぁ、男の人はいつまでも純な人は純なんですかね。ひひひ。

 え、うん、そりゃ人のコイバナてやつは幾つになっても好きですよぅ。それにお世話になってる人の幸せてのは更に嬉しいもんじゃないですかぁ。まあ、下世話な気持ちも無いことないですけどねぇ、ウハハハハ〜。


 はい? そんなにコイバナが好きならもうひとつ取っておきのコイバナがある? えぇ、なになに、気になりま――あ〜ぽこさんのコイバナぁ? はいはい目の前の女の子へのアプローチはいつになったら実るのか――て、ちょ〜ちょ〜ちょう、お待ちなさいてば、ストップ・ザ・アプローチトーク。オーケー? はい、オーケー。


 ちょいとぽこさ〜ん。何度も言ってんじゃないですかぁ、わたしは兄貴のお友達とはそうゆうご関係にはなりませんて、けど僕はずっと想ってるよって、もう勘弁してくださいよぅ。わたしじゃなくてもぽこさんにはいい人がいるって言ってんじゃないですかぁ。いやそんなことはないよ、て、うわぁ、それ他の女の子にも言ってるんじゃないですか?

 もう、あったばっかりの頃は女の子への免疫なさそうに見えたのになぁ。いや、こんなこと言うのは忍ちゃんにだけって、言ってなさいってのチャラリーマンがよぅ。はいはい、お話はここまでにしてわたしは仕事に戻りますからねぇもう。ここも一年前よりもちょっとは忙しくなってますもんね。これは誰かさんのおかげでしょうかぁ。えへへ~。



 はいおまたせしました、ご注文をどうぞ――。






 あ、もう帰るんですかぽこさんご会計ですねちょっと待ってくださいわたしがやりますから。

 え~とケーキセッ――はいなんですか?

 うん、今度の休みが揃った日に遊びに行かないか?

 はいはい、別にいいですよ特に予定も無かったですし、じゃあまた後でどこに行くのかはスマホで連絡しましょうねぇ、は〜い。



 ありがとうございました〜。ん〜、だったら休みどこに行くかなぁ。まぁ、後で一緒に決めればいいかぁんふふふ〜。はい、なんですか店長? それで、付き合ってないてのは無理があると? いやいやいやいや、これは、友達としてっ、遊びに行くってだけでしょうよ。

 ぽこさんは兄貴の友達でもありますけど、もう今はわたしの友達でもあるんですから、二人で遊びに行くていうのも普通ですよ、ふ・つ・う。だから、デートなんてものには一度も行ってませんて、店長の幸せの色ボケちからをこっちに擦りつけて来ないでくださいてっ、まったく〜。


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