㐧弐拾壱話 エゴイストの救世主

「……は? 急に何言ってんだ? お前……。」


シザースの突拍子もない言葉に俺たちは困惑するしか無かった。


2度目の、人生……? 転生にも、種類があるのか……?


「俺はこの場所でそこの雑魚どもに殺されるのを。」


意気揚々と語るシザースの口は止まることを知らない。


「だから俺はこの日のために鍛練に鍛錬を重ね……根回しを施し……そして——」


こいつ、完全にハイだ。自分が勝つと信じて疑わないタイプだ。


「飯島、向井……お前もお前以外ものことも! 全て知っている……。」


「敵を味方にすることだって‥‥できるッ!」


「例えるなら……完璧に予習したペーパーテストでも受けてる気分だなァオイ!」


絶頂。今のシザースを表すには完璧な言葉。本編において底辺導師だった冴えない男が……恐ろしい“何か”を掴み、利用している。


「だが……俺は用心深くてねぇ…。」


奴が深くため息を吐いた、その刹那。


心臓を串刺しにされた、生き残りのメンバーが現れた。

機会を狙い飛び出したがその瞬間にシザースに刺されたのだ。


「………ッッッッ!」


「こうやって余裕ぶってるけど実は内心ビクビクしてる」



「自分で言うのもあれだが、笑えるだろう?」


シザースは、言葉こそ自嘲しているがその態度は、完全に己の強さを誇示していた。



「一つ、聞きたいことがある。」


血塗れの廃墟の中で俺は奴に問う。


「何故飯島の名前を知ることができた? レギオンの個人情報はそう簡単に見られるもんじゃあない。」


「確かにには見てねぇなぁ……」




シザースの笑みが酷く歪み切ったと同時に、背中に鋭い痛みが走る。



「ぐぁっ……どうして……?!!?」



鋭い痛みが全身に走り、背中には温い血が流れる。

刺された? どうして?


痛みに耐えながら振り向くと、


刺した男は討伐部隊のメンバーだった。


「ふ、ぐふふっ…!はははははははッッ!」


シザースは嗤う。滑稽な無音映画を鑑賞するかのように。


「てめぇ……! 裏切りやがったな……!?」


「裏切ってはないぞ……? 俺は、シザースについてたんだ。」


「まさか……異獣統師か!?」


「そうッ! ま、民間人上がりだけどね……。」


茶色の髭を撫でながら男はいけしゃあしゃあとした表情をする。


「飯島くんだっけ……? 君のことシザースに教えたの俺だから。」


「なんなら任務の補助に君たち二人を呼んだのも俺の口添え。」


とんでもない内容を整理しながら、俺は掠れた声を叫びながら問う。


「何でそんなことしたんですか……!」


「有能な目は早いこと潰した方がいいからね」


メンバーが言い終わる瞬間、ナイフの刃が抜かれた。


俺は血を凍らせて止血させることしかできなかった。


「ふうん……凍結かァ」


でメンバーは呟く。


止血したとは言えこのままじゃあ死を待つだけだ。


怒りが胸中を満たす。どうしてこんな目に遭わなくちゃいけないんだ。

どうしてあんなふざけた目的もわからない奴に殺されなきゃならないんだ……!

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