阪急電車が燃える

 空襲の最中さなか、淀川に架かる鉄橋の上で阪急電車が窓から炎を出して止まっていて、火に追われた乗客が高い橋の上からポトポトと落ちていくのが見えました。

私はその電車に父が乗っていないことを祈りました。

 敵機が去ったあとは、またしても多くの人が亡くなり、川原に繋がれていた荷馬車用の馬も死んでいました。

 生き延びた人々がボーゼンとしている中、私も土手の上で父が帰って来るだろう方向を見ていました。

すると、土手の上の道を父が歩いてくるのが見えました。

私が「あ、お父ちゃん!」と叫ぶと、母は地べたにへたり込んだまま、腰が抜けたように立ち上がれませんでした。

 おそらく、母は私以上に心配していたのだと思いました。

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