第35話

 テストが終わってからニ週間程度が経った。


 絵美里と霧姫さんとの仲は相変わらず良好どころか、二人との距離がより縮んで僕が二人の愛の重さに押され気味なくらいだ。


 僕と付き合う以前は教室内で、活発な動きを見せていて人気者だった絵美里だけれど今ではみんなにその笑顔を見せることは無く、僕だけの前で最高の甘えた蕩けた笑顔を見せるようになっている。


 最近の絵美里は、抱きしめることだけでは飽き足らず、ついには頬にキスを始めた。


 啄むような、いたずらをするような軽い頬や首筋へのキスが無数にされて、唾液でべとべとになったりする。


 だけれど、絶対に唇へとすることは無い。本人曰く、それは僕自身が絵美里へとしなければいけないらしいけれど、中々その一歩を踏み出すことが出来ないので、むくむくと性欲とドキドキが高まるばかりで困っている。


 それを分かっていてしているのか、絵美里は妖艶な雰囲気を漂わせて甘い声を出してぎゅっと抱きしめてくるものだから、本当に我慢の限界に近い。


 僕の試練はそれだけではない。


 この学校で、いやこの世界で一番の美人である冴姫さんも絵美里と一緒になって誘惑してくるものだから、僕の精神力はそこら辺のお坊さんより遥かに強いような気がする。


 冴姫さんは相も変わらず僕への愛がものすごく重いけれど、絵美里とは違って頬へのキスは恥ずかしくてあまりできないみたいだ。


 だけれど、帰り際になると頬へと軽いキスをして、頬を赤くして俯くものだから普段とのギャップでおかしくなりそうになって仕舞う。

 

 それに、普段から普段からのスキンシップも激しくなり抱きしめたり、廊下で手を繋いだりすることも普通となりつつある。


 教室では相も変わらず定位置は僕の膝の上で僕と向き合う様な形で座る。最近のお気に入りは僕の頬を両手で包み込んでジィっと、深淵のような真っ黒な瞳で見ながらうっとりと幸せそうな顔をしながら見ている。


 この時間がかなり好きらしい。


 最近、変わったことと言えば僕に何かを言ってくる人や二人に僕と別れたほうがいいと言ってくる輩がかなり減ったことだろうか。


 僕に何かをいったり、別れたほうがいい、釣り合っていないなどど言った人たちは二人からの凍てつくような瞳と相手を人間としては見ていないと雄弁に語っている顔で、罵詈雑言、容赦のない言葉が相手へと刺さるため、二度と僕たちへと関わってくることは無くなる。


 それに、それは一種の公開死刑のようなものなので、言う人は極端に少なくなったということだ。


 だけれど、稀に自分に自信がありすぎるバカが言ってくる。


 その場合、二人からの罵詈雑言を浴びせられ逆ギレをして殴りかかろうとしてくるところを今度は二人でボコボコにしてしまうということもあった。


 男である僕が二人にばかり守られているので、少しだけ情けないとか思ったりするけれど、二人は「晴夏君が強いのは知ってるから。あんな蚤に晴夏君の手を煩わせられないもの。だから、自分の事を卑下しないでね?」と優しく冴姫さんに諭されたり「晴夏は優しいから、別に強くなんてなくたっていいの。私がずぅっと守ってあげるから」とぎゅーっと抱きしめられて励まされたりした。


 だけれど、それではダメだとは思っているので、今度から柔道とか習ってみようかなと思っていたり。


 そんな今日この頃だけれど、今日、この日は僕たち三人にとって重要な日だった。


「テスト結果の発表日。大丈夫、テストの結果は私にしては結構良かったから三十位以内に入れてるはず!!」


 テスト結果が張り出されるよりも早く、先生からそれぞれ個別に試験結果が返される。


 今まさに、それが始まりそうになっていた。


 ちなみに、僕のテストはというと前回同様かなり良かったので、もしかしたら冴姫さんよりいいのではないかと思っているのだけれど冴姫さんも自信満々みたいだ。


 点数を聞こうとすると、「秘密」とウインク付きでお茶目に言われてしまい誤魔化されてしまう。


 どれくらいの点数なのかも予想がつかない。


 だからこそ、僕にもまだ希望があるわけだけれど。


 さて、どんなテスト結果かな?

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