第27話

 霧姫さんに手を引かれて連れてこられたのは、特別棟の屋上だった。


 鎖に巻かれていて普通は開けてはいけないんだけれど、霧姫さんは慣れた手つきで開錠して、屋上へと二人で踏み入れる。


 フェンスが立っていて、風が吹いていてとても気持ちがいい。


 僕を引っ張っていた霧姫さんが立ち止まって、僕の方を見る。


「ねぇ、赤塚君」

「な、なんでしょう?」


 霧姫は若干時をはらんだ瞳で僕のことを射抜く。


「なんで私が怒っているか分かっていますか?」

「えぇっと、霧姫さんに黙っていたからですか?」

「まぁ、半分正解です。ですが、赤塚君は、私に何て言いましたか?私は先生に用事を頼まれたと聞いたのですが?」

「そ、それは.........」


 確かに霧姫さんにはうそをついてしまった。


「分かっています、赤塚君は私に心配をかけない様にあえてあんな優しい嘘を吐いたことぐらい。私の赤塚君ですから、そういうことをするに決っています。ですよね?」

「……はい」

「赤塚君の優しさはとってもありがたいですし、嬉しいですけれど、この場合はあまり素直に喜ぶことができません。だって、貴方が私のせいで傷ついてしまいますから。そんなことになれば私は今度こそ自分を許せなくなってしまいます」

「ご、ごめんなさい」

「いえ、赤塚君だけが悪いというわけではないですし、赤塚君の優しい心は理解していますから。ですが、次からはしっかりと私に相談してくださいね?様子がおかしいと思って今回は気づくことが出来ましたが万が一、私が気づけない可能性もありますから」

「分かりました」


 霧姫さんに淡々と諭されて頷くことしかできない。だって、この人全部正しいんだもん。


 反論できる余地がない。


 将来結婚したら、僕は霧姫さんの尻に敷かれることになるんだろうなぁ。そんな未来が予想できるけれど、それも良いなと思う。


 だって、絶対に暖かい家庭になるはずだから。


「……お説教はこのくらいにして、お仕置き、ですね」

「え?今のがお仕置きじゃなかったんですか?」

「え?何を言っているんですか?赤塚君。今のはこれからしないでねっていうただの注意喚起とお説教です。お仕置きは別に決まってるじゃないですか。なんのためにこの人が来ない場所へと来たと思ってるんですか?」


 ニコニコと怖いくらいの笑顔でそういう霧姫さん。


「赤塚君、じっとして動かないでくださいね。でも目はつむっちゃだめですよ」


 霧姫さんが僕のことを座らせて、耳元で囁く。


 霧姫さんの甘い、蕩けるような声が脳内に響いて理性が溶けていくような感覚がある。


「あぁ、私の赤塚君。私を守るためにあんな嘘をついて。本当にイケない彼氏君。でもそんなあなたのことが大好きなんです」


 後ろから抱きしめられて、手でそっと胸の部分をなぞる様に這わせてくる。体がぴくぴくと反応してしまう。


「可愛い、本当に食べちゃいたいくらい。少しの味見ならいいですよね?」


 そう言って首筋あたりをペロリと一舐めされる。霧姫さんの理性も僕の首筋を舐めたことによって大分蕩けてきているのか、はぁはぁと荒い息を上げている。


「赤塚君、私、すごくエッチな子だって自分でもそう思うんです。だって、舐めただけでこんなに発情しちゃうんですから。ほらここ、触ってください」


 霧姫さんがブレザーのスカートの中へと僕の手を持っていってジメッとした布のようなものに触れる。


 触れた瞬間嬌声のようなこえを上げて僕異常に体をビクつかせて恍惚とした表情を浮かべる霧姫さん。


 僕の理性は段々と焼ききれそうになっていく。


「赤塚君、ここでシタい?」


 僕がコクリと頷くと、意地悪そうな笑みを浮かべてこういうのだ


「だぁめ、それじゃあ罰にならないじゃないですか。今日はそのまま悶々と過ごしてくださいね」

「そ、そんなぁ」


 僕が情けない声を出すと霧姫さんはウットリとした表情になって僕を慈しみを込めた瞳で見てくる。


「あぁ、本当に私の赤塚君は最高です。どこをとっても非の打ち所がないほどです」


 感極まった様子で僕のことをギューっと抱きしめてくる霧姫さん。


「私も相当溜まってしまいました。今日はお互い少し悪いところがあったというところで我慢しあいましょう?今日は貴方のことを思って、家で一人で寂しくヤることにしますね。あぁ、貴方とまぐわう日も近いですね。その時が楽しみです」

「僕もです」


 二人で抱きしめ合ったままお互いの気持ちを確かめ合うようにギューっと抱きしめる。

 

 深く深くお互いを感じることができるように隙間がないほどぴったりと。


 その後、学校が閉まってしまうギリギリまでお互いがお互いを離したくないあまりに悶々としたまま手をにぎにぎと握りあって、別れる時は、熱に浮かされたような目でお互いを見つめ合うくらいだった。




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 家に帰った私は、着替えることもせずにベッドへとダイブし、スカートを荒々しく脱ぎ捨てワイシャツを乱雑に半脱ぎのような形にして胸を露出させた。


「あぁ、赤塚君。大好き、大好きです。こんな気持ち、もう貴方でしか味わうことなんてできないです」


 私の赤塚君を思う気持ちは日に日に強くなっているし、私が一人でする回数も物凄い増えている。


 正直欲求不満と言っても過言ではではないくらいだけれど、今日のお仕置きをした時の赤塚君は一段と可愛かったし、その後のお互いを抱きしめ合っているときは夢のような感覚で一生そうしていたいと思うほどだった。


「あぁ、赤塚君、赤塚君.......いえ、春夏君。大好きです」


 私が彼を思う気持ちはこれからも募っていくだろう。これ以上彼を好きになってしまえる自分自身に驚く。


「あぁ、春夏君。そこ、気持ちいいです。もっと、もっとぉ」


 長い夜が始まった。



 

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