12 登山ガイドってどこで雇えますか
やってきました始まりの街、名前?知らない。
協会があってプレイヤーの始まりの街、マップ換算0。これだけ分れば問題ないから、強がりじゃないから。
大通りを東に向かい歩んでいく。歩きながらふと頭をよぎるのはこの世界のことだ。
この世界はリアル準拠というか無駄な違いで不要な齟齬を省きたいのか、取り合えず問題ないのはリアル基準で合わせとけって感じがある。
太陽は東から昇るし1日も24時間だ。夜に星を見上げればそっくりそのままコピーしたかのような星座たちを見ることができる。
この調子ならば1年は365日と6時間弱だし四季もあるだろう。
何だかんだで自分も含め多くの人は時間を気にして流されながらも季節と共に生きてるわけだ。凝った設定でぐちゃぐちゃなカレンダー世界で長期間暮らすよりはよっぽどいい。
結局言いたいのはもうすぐ夜ですねってこと。
今も後ろからは赤い朱い夕焼けが街を照らし影を長く引き伸ばしている。
ステータス減少、【闇の住人】のパッシブ効果。
魔技装具店の爺にイラっとしてから気にしてなかったけどやはり相応に下がっていたようで。
重い鞄を下ろした時のような解放感を感じている。
まぁ別に減少したところで戦えないわけじゃないからね、前線でもなけりゃ問題ないない。
やっぱきれいだなぁ。
皆もっとこの世界観光して回ったほうがいいよ。
夕暮れ時の赤に沈む世界。黒く滲む陰が物寂しさを強調して。
在り来りだけど世界が燃えているみたいだよ。現実でもこんな風景見に行けたらなぁ。
門を潜れば壁の外、低くなった日からは光を与えられず色を失ったかのような木々達が立ち並ぶ世界。
始めていくフィールド夜スタート多いな?
でも前とは違って暗視もある。視界は0じゃない。じゃあ大丈夫でしょ。たぶんね。
さぁサクサク進みましょうかね。
◇
うっすらと光る瞳が闇の中を駆け抜ける。ノンアクの鹿、遠い、次。
キーキーと木の上からうるさいのは猿。取得したばっかりの軽業と跳躍を使い木の幹を蹴り三角飛びの要領で高度を稼げば
「ザクっとな」
ハルバードで枝ごと猿を断ち切る様に、速やかに鮮やかに。
ハルバードを空中で振り回したもんだから盛大に体制を崩して着地をミスッた以外はいい感じ。
落下ダメージはヒールで回復っと。
悪くない、むしろいい。この調子でどんどん行こう。楽しくなってきた。
狐、おそらく綺麗なきつね色の毛皮を持った動物カテゴリ、石突による突きで一撃で頭を砕いた。
狸、こちらもそのまま、闇魔法の餌食、爆散。
頭上からは大きな蜘蛛、こちらは現実で見たことないビッグサイズ、500mmくらいあったと思う、気持ち悪くて無理、焼いた。一気に帰りたくなってきた。
ネットではゴライアスなんちゃらって世界最大の奴見たことあるけどVRは格が違った。感知次第すべて燃やす。慈悲はない。
あとは鼬に蛇に熊。
やっぱり熊はこの中では一番強かった。力強く毛も固く肉も固い、そしてそこそこ早い。
ハルバードだけで相手しろって言われたら確かにちょっと時間かかりそうだね。
でもまぁそれだけだ、スキルとステータスによって裏打ちされた力は容易くダメージを通していく。
四足歩行時なんか頭がいい位置にありすぎて蹴り抜いて下さいって言ってるかと思ってしまうほど。
現実じゃそのまま寄られてかみ殺されちゃうけどね。
本来なら強靭な筋肉と比べ物にならないほど太い骨で支えられた小さな脳を収めた頭部は容易く歪み砕け壊れていく。
蹴って蹴って蹴って蹴って蹴り蹴り蹴り蹴り蹴り蹴蹴蹴蹴蹴……
まあしかし何というか、里山かよ。俺が見た日本の原風景ってか?
山の上に何かありそうなだな、具体的には変な神社とか。
それは置いといて、徐々に傾斜がきつくなって来た気がする。そのまま真っ直ぐでもいいけどここはちょっと谷間でも行ってみましょうかね。
進行方向を斜めに切り替え進みながら下ってみる。ザクザクと踏み分け前へ前へ、その間にも引っ切り無しに愉快な仲間たちが襲ってくる。
アクティブが多いというよりはこっちの行動のせいでスイッチが入っちゃってる感んじかな。あと夜だから活発になってるのかも。
俺もか。
掻き分け進むこと数十秒、短い行軍でしたわね?
川の代わりと言っては何だが明らかに人の手が加えられた不意に開けた場所に出る。
「これ道か?」
おそらく東西へ進んでいたであろうその道の名残。踏み固められ斜面を削り作られた地形は草葉に覆われようとも依然としてその姿を残している。
ブーツの先で地面を掘り返してみれば崩れ埋もれた石畳。
なるほど、言われてよくよく観察すればこの先も木の生え方に癖がある。
余りにも長い年月において使われなかったこの道は森に呑まれていったのだろう。
途切れた道は木の隙間を追っていけば次の名残へと繋がっていく。
「はは、山の中より断然歩きやすいじゃん」
やはり文明…文明の名残?は偉大だな。足場を固めるのがいかに大切か。
しかしこれはどこまで続くのかね、既に山一つをとっくに超えて二つも終わりに近づいている。
ザクザクと、ガサガサと。橋だった物を見ながら沢を超えたところでそれは来た。
《サンク東森林第二山域に到達》
ピンっとSEを鳴らしながら表示されたのはうれしいお知らせ。
どうやらこのエリアは区画が分れているようで。
初期の南は1エリアだったけど、あれはまぁそういうモノなんだろ。ただの一面広いだけのマップだし。
そしてここ。このエリアの特徴の一つなのか初期以外はそういう仕様なのかは分かたないけども、サンプル数一つだし仕方ないじゃんね。
そういう時は
「とりあえず進んでみましょうかい」
ざっくざっくと踏み締め前へ前へ。帰り道?何もわからん。
それまでの森を大雑把に切り開いて道だけを通したものから少し雰囲気が変わってきたね。
木々の間隔が変わってきた、おそらくは林業でもやっていたのか間引かれ整理されたかのように一定の間隔で立ち並んでいる。
「切ったら植える、当たり前のことではあるけど…」
この文明レベルのころから植林ってやってたのかね。その辺はさっぱりだからなぁ。
あくまで何となくだけど基本的に伐りっぱなしで場所だけぼちぼち変えるイメージがあるね。何も知らないイメージだけどさ。
現実じゃもう自然林とか全然残ってないもんなぁ、悉く酸性雨と砂漠化によくわからん疫病でしょう?何かもう完全イタチごっこだしさ、植えて無くなり植えて無くなり。
もうゲームの中くらいでしか自然なんて体験できないし、山しかり海しかり。
まぁぜーんぶ画面越しで知ったことばっかりだけどさ。
いつか実際に自分で見に行きたいよなぁ…
◇
どうやら第二山域というのは出てくる方々もそれまでとは違うようです。
今消し飛ばしたエレメンタルを含めアンデットに亡霊あたりがメインかな。
ゾンビにスケルトン、レイスにゴースト、ファントム人型の影がエレメンタル。どれも動きは早くない。何なら南のウサギのほうが早いくらいで。
魔法使えればここ結構いい狩場なりそうだよ。
全体に足が遅いからリキャ調整しながら引き撃ちで一方的に攻撃できるのと、レイスやゴーストの非実体系はHPも低く魔法の通りもいい、カモだな。
完全に物理無効ってわけではないけども斬ったところで感触もなく近付かれる分むしろ危なそう。
適当にこの調子で進みましょうか、やる気と時間くらいしか消耗するリソースもないからね。
MPは自然回復で十分賄えるしアイテムなんか使うものないしさ。
◇
第二山域に入ってから3時間ほど経ちまして、現在も第二山域なうでございます。時刻も日付変更を挟み完全な深夜帯な訳ですよ。
そして今更ながらここマップがバグるんだよね、正確には方角機能と座標表示の消失。
時々後ろを振り返りながら真っ直ぐ進んできたつもりだがこれだけ進み続けて代り映えのしないというのもおかしなもので。
これもしかして特定フラグ無いと抜けられない感じのやつかな。よくある迷いの森的な正解ルート以外ループ系かもしれないけど。
街でNPCと会話するなりクエスト受注するなりフラグ系と情報入手系だと戻る必要あってめんどくさいなぁ。
ループ系もここまで来たらグチャグチャ過ぎてもう手順も何もなさそうだし。
よくある目印を辿る奴であってほしいなぁ。
「一回休憩するか」
丁度いい高さの石へ腰を下ろして考える。頭空っぽで進んできた道中に何かなかったか。不明瞭な記憶で何とか思い出そうと試みる。
道はなかった。いや残骸は所々あったが連続したものではなかったが表現的には正解かな。
木の種類もあからさまに違うものはなかったし樹齢もバラバラで法則性があるようには思えない。思えないだけで見る人が見たら気が付くのかも。
あとは傾斜、これに関しては結構意識して上に向かったからそこそこハッキリ覚えている。
山頂なんて程のものはなく起伏の一部程度しかなく先が見えない。
ループ説はこの辺から思いついたものだし。
そんで最後がモブか、種類はそこそこで動きも普通、特徴もなく目立つ個体も目にしてない。湧きはそこまで早くないのか通り掛けに片づけてしまえば後ろから襲われることは一度もなかった。
足も遅く向こうがこちらを捕捉して進路を向けるころには射程圏内で確実に先手を取れる。
ふむ、どこもおかしくはないな?自分のリアルINTじゃダメみたいだ。わからん、全然わからん。
まじでどうしよこれ
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