第8話 俺、性奴隷買います!

「蒼炎様と仰られるのですね。どうぞわたくしめを蒼炎様の性玩具にお選び下さい。絶対に後悔は致しません」


 胸元まで伸びた髪はゆるふわパーマが掛けられており、上品な顔立ちにぴったりだ。体の線が細いのにおっぱいが大きいところは◎だ。


「彼女の名はビアンカ。ロケットおっぱいが魅力的なEカップ、歳は22でございます。セックスには自信アリとのこと。ちなみに好きな体位は――立ちバックッ!」


 なぜ立ちバックのところだけ強調するのだろう。


 にしても可愛い!

 一見清楚系な見た目なのに、めちゃくちゃエッチなところもかなりポイントが高い。


「こちらはアンジェリカにございます。28歳と今が一番旬、奴隷になる前は農夫の妻でございました」

「元人妻だと!?」

「蒼炎様のお子様を産みますわ。ですからどうか、私をお選び下さい」


 めちゃくちゃドエロいな。


「アンジェリカは出産経験が有り、Fカップの胸はスライムの如し柔らかい。ご存知ですかな? 出産経験者の胸は大層柔らかくなるのです。もちろん好きな体位はバックッ!!」

「あ、うん」


 だからなんで最後のバックだけそんなに力むんだよ。血管が切れてしまわないか心配になる。


 しかし、出産すると胸が柔らかくなるというのは初耳だ。

 それにやっぱり28歳という年齢がいい。

 初めては年が近い女の子に優しく手解きされながら……ってのも憧れるシチュエーションのひとつだ。


「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」


 この女子大生みたいな眼鏡の子はさっきからなんでこんなに息が荒いのだろう。それに顔が赤いような気がする。


「ミリガンは感度抜群Gカップの21歳! この者は性奴隷願望がございまして、自ら性奴隷になりたいと商会の門を叩いた真の変態にございます」

「えっ、家族の生活が苦しくてとかじゃないの!?」

「違います。セックスが好きで好きでたまらないドMなのです! 村娘だった頃は夜な夜な村の男達に夜這いを掛け、複数プレイを楽しんでおりました。その結果、村の女達によって追放された後、どうせなら夢を叶えようと商会にやって来たのです」


 いや、マジの変態じゃねぇかよ。


「ヤりたいっ! ヤりたいっ!! ヤりたいッ!!!」

「ちょっ、ちょっと!?」


 生徒会長みたいな見た目のくせにドスケベとかレベル高すぎだろ!

 まるで飢えた狼だな。さすがにDTの俺にはちょっとハード過ぎるかもしれない。


「無論、好きな体位はバックにございます!!」


 それはもう分かったよ。


「こちらは世にも珍しいエルフ族と人族のハーフ! 15歳、胸は……リフルにございます」

「ハーフエルフだと!?」


 夢にまで見た憧れのハーフエルフ! が、ベルフェゴールのおっさんは今胸のサイズをあえて聞こえないように言わなかったか?

 おっぱいおっぱい言う割には、この娘だけめっちゃちっちゃいし。


 うん、どこからどう見てもちっぱいだ。


 しかし、こうして間近で見てみると、ハーフエルフというだけあって耳がめっちゃ尖っているな。肌は初雪のように白くきめ細かいし、涼しげな瞳はブルーサファイアを埋め込んだようだ。後頭部で結われた菜の花色の髪も非常に美しい。


 身長は155cmくらいだろうか? 低身長で小柄、だけど気の強そうな目許はM心をくすぐる。

 

 一言でいえばめちゃくちゃタイプだった。


「セックス経験に関しては無し」

「無し!? つまり――」

「処女にございます」

「――――!? 間違いないのか!」

「当商会の職員(女性)が確認しておりますので、間違いございません」


 別に俺は潔癖というわけではない。

 相手が経験豊富でも気にすることはない。

 ないのだけど、できることなら初めての男に……そう願うのは俺だけではないはず。


「……ちっ」


 ん、今舌打ちしなかったか?

 それに、やはりこの娘だけ俺と全然目を合わせようとしない。


「ジロジロ見てんじゃないわよ。つーかなんでこいつが異世界にいるわけぇ」

「………」 


 ……気のせいかな。

 今異世界と言わなかったか?


「しかも、リフルに関しては性奴隷と戦闘奴隷の二種を望んでおります」

「一人二役だと!? そんなのも有りなのか!」

「ちょっと待ちなさいよ! アタシ性奴隷にはならないって言ってるじゃない!」

「んん? 話が違うじゃないか」

「少々お待ちを」


 そういうとベルフェゴールはリフルに顔を近付けた。


「あなたはわたしくに言ったことをお忘れでございますか? どうでもよいと。仰ったではございませんか」

「でもっ! アタシあいつだけは無理っ!」

「嫌なら買われたあとに拒めば良いのです。相手は童貞、あなたがキモッ! 言うだけで、どうせビビって何もできはしませんよ」

「……でも」


 いや、全部聞こえているんですけど……。


「是非とも蒼炎様の性奴隷になりたいと申しております」


 嘘、すげぇ下手だな。


「でもなんで奴隷に?」

「この者の母は病に伏せっているのです」

「病気……か」

「治療には高額の費用が必要との理由から、自ら性奴隷になる道を選んだのです」


 なんて健気な良い子なんだろう。

 それにちょっとSっ気があるところなんか、初恋の娘に似てて地味にそそるんだよな。


「いくらだ?」


 俺の心はもう決まっていた。

 俺は彼女を、リフルを嫁にする。


「白金貨100枚にございます」

「………は?」


 聞き間違いかな?


「いくらだ?」

「白金貨100枚にございます」

「白金貨……100枚?」


 それって円に換算するといくらだ?

 たしか白金貨1枚の価値は100万円程だったと思う。それの100倍って……一億!?

 馬鹿じゃないのか! そんなの払えるわけねぇだろ!!


「いくらなんでも高すぎるだろ!」

「彼女は大変貴重なハーフエルフなのです。値が張るのは至極当然でございましょう。しかも彼女は性奴隷と戦闘奴隷、2つの役割を望んでいるのですから」

「………っ」


 奴隷の相場とハーフエルフの希少性がさっぱり分からんから、何も言い返せない。


 しかし一億か、そんな大金ニートな俺には逆立ちしたって払えっこない。

 とても残念だが、さすがにリフルは諦めるしかない。


「はぁ……」


 本当はハムスターではなく犬が飼いたかった。けれど高額な上に日々の世話が大変という理由で買ってもらえなかった。

 25年前と今が重なり、俺はガクッと項垂れる。


「なら、彼女はいくらだ?」


 ビアンカちゃんも俺好みだった。

 ハーフエルフのリフルはとても手が出ないけど、人族のビアンカちゃんならワンチャンあるかも、そう思ったのだが……。


「白金貨46枚と大金貨1枚、金貨が3枚にございます」

「…………」


 4680万!?

 高すぎる!

 んっなの買えるわけねぇだろうがッ!!


「ならアンジェリカは!」


 アンジェリカは28歳。こう言っちゃなんだが一番歳を取っている。人によってはおばさんと呼ぶものもいる際どい年齢だ。

 さすがに安いだろう。


「白金貨39枚と金貨4枚にございます」


 3940万。

 無理だ、次ッ!


「ならド変態娘のミリガンはっ!」


 こう言っちゃなんだが、ミリガンはかなりのヤリマンだ。一個人、DTの感覚で大変申し訳ないのだが、ヤリマンは絶対に安いと思う。

 複数プレイを経験しているという点も大きなマイナスポイントではないだろうか。

 こんな事を云えば多方面から反感を買ってしまうかもしれないが、ミリガンは正直言って不良品だと思う。

 ゆえに絶対に安い。


「白金貨35枚と金貨3枚にございます」


 ヤリマンが3530万だと!?

 誰が買うんだよ!!


「あんた本当に売る気があるんだろうな! 見せびらかしてるだけじゃないだろうなっ!」

「勿論でございます。彼女達は特定のお客様用でございますから、少々値が張るのも事実でございますが」

「特定……?」

「貴族様ということにございます」

「……そういうことか」


 このボケは俺を貴族だと勘違いしているのだ。


「なら、平民も買ったりするんだよな? 奴隷」

「場合によりますが、買われる方もおりますよ」

「ならそっちを見せてくれ」

「……さようでございますか。ではこちらへ」


 あっ、この野郎。

 あからさまにガッカリしやがったな。

 しかもリフルちゃんはなぜかめっちゃ俺を睨んでるし。




 ◆◆◆◆◆




「ここに居る者はすべて奴隷にございます。お好きにご覧くださいませ」


 地下室にやって来ると、そこには男女様々な奴隷が檻に押し込められていた。

 筋骨隆々とした男と目が合えば、力こぶを作ってアピールしてくる。戦闘に自信があるのだろう。生憎男には興味がない。


「男はいらん」


 女だ、可愛い掘り出しものの女を見つけるんだ。


「……げっ」


 酒樽みたいな女がウインクを投げて来やがった。正直キモい。無料ただであげると言われても受け取りを拒否するレベルだ。何より飯代だけで破産する。


 どうやら異世界にもブサイクは沢山いるようだ。


 うわ、すげぇ出っ歯だな。

 デカっ!? ありゃ2mは優に超えてるな。

 あれは女なのか? 性別を間違えてるんじゃないだろうな。

 こっちは明日にも死にそうなババアじゃないか。


「あの子は結構可愛いな! …………あ」


 両腕がない。

 それはちょっとなぁ……。


「おお!」


 うん、可愛い。

 しかも五体満足。


「おい、あれはいくらだ」

「ヒルダでございますか?」

「ヒルダちゃんていうのか」


 めちゃくちゃ気が強そうな娘だけどタイプだな。


「白金貨12枚と大金貨1枚、それに金貨4枚にございます」


 1290万!?

 どこが平民用なんだよ!

 この野郎、俺をおちょくっているんじゃねぇだろうな。


「ここに居るのは平民用の奴隷じゃないのか? 平民用にしてはいくらなんでも高くないか? 平民は買えないと思うのだが?」

「これは失礼いたしました。わたくしの説明不足にございます。ここには冒険者用の奴隷もおりますから」


 つまり戦闘奴隷というわけか。

 可愛いけどヤらせてくれないなら、いらないかな。


「ちなみにどれが性奴隷なんだよ。沢山いて分からないんだが」

「あそかからあそこまででございます」

「…………」


 さっきの酒樽達じゃねぇかよ。

 誰が買うんだよ。


 その後も小一時間ほど性奴隷達をチェックしたのだけど、正直先程のリフル達のような美人はいなかった。


「お気に召す奴隷は居りましたでしょうか」


 居るわけないだろ!

 俺はベルフェゴールを睨みつけた。


 正直ヒルダちゃんは少しいいなと思ったけど、高額な上にヤらせてくれないなら買う必要はない。


「では、残念ではございますが、今回はご縁がなかったということでしょうかな」

「いや、ちょっと待ってくれ!」


 ここまで来て性奴隷が手に入らなかった、それは嫌だ!

 俺はもう性奴隷が欲しくて欲しくてたまらないのだ。


 そりゃ最初は買う気なんてなかったけど、ベルフェゴールに自慢するように極上の性奴隷達を見せびらかされたら、さすがに欲しくなる。

 買わずになんて帰れない!


「ひとつ聞きたいんだけど、分割払いは可能だろうか?」


 ローン、借金、これだけは絶対にしたくなかったのだけど、金を貯めている時間はない。

 あれだけ可愛いのだから、きっと俺が金を貯めてる間に売り切れてしまう。

 ならば、ここは致し方ないではないか。


「可能でございますが、金利はかなり高額となっております」

「高額って、どのくらい?」

「100%でございます」

「100%!? 金利が100%!? いくらなんでもぼったくりだ!」


 金利100%なんて聞いたこともない。


「はい、わたくしもそう思います。ですが過去に分割で奴隷を購入後、奴隷商人を装い個人で売却する事件が起きたのです。そのような悪質な行為をなくすため、以降は奴隷業界全体で分割でのご購入時は金利100%と定められたのでございます」

「……っ、なるほどな」


 そういう理由なら納得せざるを得ない。

 が、金利100%か。


「予定より早く返せば金利が減るとかの処置はないのか?」

「一律でございます」


 チッ、くそったれ。


「さらに返済が一日でも遅れた場合は、全体額の一割が加算されます」

「一日一割!? それは金利を含めた額の一割ということか?」

「さようでございます」


 闇金も真っ青の一日一割!?


「もし……逃げたら?」

「それはおすすめ致しません。商会の手の者が地獄の果まで追いかけて来ましょう。その後は死んだほうがマシ、そう思えるほどの苦痛が死ぬまで続くのです」

「………」




 ◆◆◆◆◆




「どうすりゃいいんだよ」


 俺は先程の応接室に戻り、頭を抱えていた。

 仮にリフルを分割払いで購入すれば白金貨200枚、2億の返済に追われることになる。

 ニートで2億の借金か……さすがに笑えないよな。親に知られたらさすがに勘当ものだ。


「ちなみにローンを組むのに審査とかっていらないのか?」

「ございません。先程もご説明した通り、商会を敵に回す者などおりませんから」

「……そうか」


 奴隷商会というのは、俺の世界でいうところの反社会組織のようなものなのかもしれない。そう考えると、異世界人が奴隷商会を敵に回したくないのも当然か。


「2億……か」


 マルコスにぼったくり価格でコピー用紙を大量に売りつければなんとかなるとは思う。

 だけど、あまり派手に動くとこちらの世界の厄介な連中に目をつけられかねない。

 コピー用紙だけでなく、安価で高く売れそうな品を見つけるしかないか。

 だがそうなると、元の世界での資金が必要になってくるんだよな。


 ニートの俺には貯金がない。

 向こうで物資を調達するには円が必要。

 親から貰っている月5千円のお小遣いでは心許ないしな。何らかのアクシデントが発生して返済が遅れたら地獄だ。

 

「問題は換金方法だな」


 こちらで稼いだ金をどうやって日本円に換金する? 今手っ取り早く思いつく方法といえば、質屋に金貨を売るというシンプルなもの。


「ちょっと聞きたいんだけどさ、この金貨の重さって何gか分かったりするか?」


 俺は金貨を1枚取り出し、ベルフェゴールに見せた。


「金貨のg数は一律7gと決まっております」

「7gか……」


 現在金1gあたりの価格はたしか8700円程だと記憶している。

 単純計算で金貨1枚あたり60900円か。

 金貨はこちらの世界で10万程の価値なので、ざっと3万9千円のマイナスになってしまう。


 この際、円に換金した場合に生じるマイナスは仕方ないとしても、やはりこの方法だとそう多くは換金できない。


 大量に金を売れば必ず不審に思われる。

 そうなれば通報されるのも時間の問題だ。

 その後やって来た警察に金の出処を問いただされれば、俺の異世界成り上がり計画はそこで破綻するだろう。

 そして、税務署に殺される未来がやって来る。


 金貨を質屋に入れるとしても数枚が限度だな。


「う〜ん……」


 考えていても解決策が思いつくわけでもない。


 ということで――


「リフルを売ってくれ!」

「宜しいのですか?」

「うん、構わん」


 買わずに後悔するよりも、俺は買って後悔しようと思う。


「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ! あんた今の話聞いてたの!?」

「うん」

「白金貨200枚がいくらか分かってんの!? あんたじゃ絶対に払えないからやめなさい! どうしても性奴隷が欲しいなら、せめてもう少し安い娘にしなさいよ!」

「おお! 俺のことを気遣ってくれるのか。優しいんだな」

「ち、違うわよっ! バカなんじゃないのあんたっ!!」


 時代錯誤のツンデレか。

 うん、悪くない。


「ま、とりま買ってから考えるからいいや」

「……本当に相変わらずバカなんだから」


 それで後で首が回らなくなったとしても、それは未来の俺がなんとかすればいいだけの話。

  今、この時、この瞬間の俺には関係ないのだから。



「ん……相変わらず?」

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