第14話 緊急事態
「なっ!?」
僕が振り返り向かってくる剣をはじき、相手を見ると確かに消滅したはずのゴブリンたちが僕に各々の武器を向けて飛び掛かってくる。
「くそっ!どういう事だ?このダンジョンの敵に復活する奴なんていないはずなのに」
あまりに突然の出来事だったのでパニックになってしまったものの、ゴブリンと一旦距離を置いて冷静になることができた。
(このまま戦うのもアリではあるんだけど此処は…逃げる一択かな?)
「よっしゃ!にぃげるんだよぉ~スモーキー!」
体を反転させ、全速力でこの階層から逃げ出すため走ろうとし…
「ヘブッ!」
さっきまで無かった筈の石壁に思いっきり顔面をプレスした。
訪れる静寂。敵であるゴブリンでさえ固まり、誰一人として音を出さない。
僕はゆっくりと後ろに振り向く。
すると、ゴブリンを代表してゴブリン・ソードマンが声を出した。
「グギャギャ?グギャァ…」
僕はゴブリン語なんて分からない。何なら、ゴブリンなんて今日人生で初めて見た。
けれど、今この時、この瞬間だけ、ゴブリンが何を言っているか理解できた。
これ、「大丈夫ですか?痛そうですけど…」って言われてるわ。
「あ、はい。大丈夫です。僕、身体頑丈なんで」
「グ?グギャ、グギャギャギャ」
「そうですね。はい、戦いましょう」
僕は武器を構えなおし、ゴブリンの方を見る。よく見るとゴブリンの後ろの方にも壁ができており退路がないことが分かった。
僕が武器を構えなおすと、ゴブリンも武器を構えなおす。
「退路が塞がってやがる!しょうがねぇ、戦ってやる!かかって来いよ!!」
「「「「「「グゥギャァァァァァッ!!!!」」」」」」
僕の声を皮切りに、ゴブリン・ソードマンを先頭としてゴブリンたちが襲い掛かってくる。
――――――――――
「強敵…って訳でもなかったなぁ」
僕は最後に残ったゴブリン・ソードマンの首を軽々と弾く。戦い始めてからは一瞬で、3分も掛からずに僕はゴブリン達を倒し終えた。
別に、怪我を負っているわけでもないのでゴブリンの死骸から魔石だけ抜き取って辺りを見渡す。
周りには依然として、通路を塞ぐ壁が存在していた。
「コレ如何すればいいんだろ?」
壁に近づき、何かないかと探していると…僕は浮遊感を感じることになる。
下を見ると、先の見えない真っ黒な穴が空いていた。
「ほ〜ん?そういう感じ?そういう感じなの?」
妙に長く感じる滞空時間を終え、僕の身体は落ちていく。
「ふざっけんなああぁぁぁ」
僕は落ちている内に冷静さを取り戻し、この穴を落ちきって何処に着くのかを考え始めた。
(僕は4階層から落ちてきているんだよな?で、下に落ちてきているということは?)
一つの考えに僕が至った瞬間、僕の考えが合ってるぞと言わんが如く部屋の全貌が見えてくる。
其処は今までとは違い、石壁の通路は無く、その代わりに只々広いと感想を抱かせる、殺風景で何もない大きな広間がひろがっていた。
その広間の奥にはこの何も無い部屋で唯一、豪華な椅子が存在し、そこにはこのダンジョンのボスであるゴブリンキングが座っていた。
「黒部さん。これって僕、悪くないですよね?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます