プロメーテウスの火

第1話. 得手不得手

「そう言えば、獣化の程度って結構バラツキがあるんですね」


 そう尋ねたのはエルだった。

 

 確かにな。

 そいつばかりは自然の気紛れってやつだ。 

 だからそれぞれ得手不得手だってあらぁな。


 エルの姿はほぼほぼ人間のガキだ。

 ただ全身がほぼ金色ってぇだけで。


 本人は目立ちたく無ぇからって濃紺色のローブを着込みフードまで被ってる。

 まるで魔法使い気取りのハロウィンのガキンチョだ。


 オイラは手足と顔は完全に獣化し、ウサギの様な体毛や姿かたちになっている。

 だが二足歩行をし、上着とパンツは必需品だ。

 革のベストは寒さを凌ぎ、しかもポケットにゃ小物を入れて便利だし、下は履かなきゃ丸出しだからな。


 ライリーはパッと見、人間にしか見え無ぇが、よっく見るとやけに肌が艶々してたり、何より眼が違ぇ。

 迷彩柄のタンクトップにショートパンツ、それにブーツとグラブを着用している。

 露出は多いが、動き易さを重視してるのと体の頑丈さに自信があるってこった。


「エル、オメェはまだだ。旅をしながら訓練しなきゃならねぇ。だから……」


 オイラは身に付けていたウェイトを少しエルに分けてやった。

 手首と足首、そして腰に一つずつだ。


「うげっ! ラディさん、こんな重いのを幾つも?!」


「オイラのこの手じゃ、ライリーみてぇに武具を上手く扱え無ぇからな。重しを付け無ぇとが乗ら無ぇんだ」


「ふーん、重しを活かした体術が武器って訳か。面白れぇ、アタシと闘ってみるかい?」


「オメェはなんでそんなに好戦的なんだ?」

「それがアタシの生き甲斐だからさ」


 笑顔でサラッとそう言いのけるライリー。

 単純なのか訳ありなのか……笑顔は可愛いんだがよー。


 オイラ達はこれと言って大した獣の襲撃にも会わず、スムーズにエニ沼まで到達した。先日のエニナメ襲撃戦で気付いた事だが、アイツらは、敵わ無ぇと判ると全く襲わなくなってくる。どうやらそれが続いてるみてぇだ。相当知能も高ぇんだろう。


「無事着きましたね!」


 エルの言葉が、バカに垢抜けた様に聞こえるぜ。


「……」

「……」


 オイラは思わずライリーを見た。

 ライリーもオイラを見て黙ってやがる。

 

 なんてこった!


「あの……これから沼を潜るんですよね?」


「あ、あぁ……そうだな。ラディ、先に様子を見て来てくれ。のお陰で良く沈むだろ?」


 バカ言うな!


「いや、エルの方が向いてるんじゃ無ぇか? だからライリー、オメェがおんぶして行けよ」


「はぁぁっ?! いや、エルを背負うのは悪かねーがなんでアタシなんだよっ?」


「オメェがエルの教官だろっ! それにエルだって今はを付けてるぜ。一石二鳥じゃ無ぇか!」


「て、てんめぇ……」


 オイラは身構えた。

 ライリーも眼が本気だ!


 するとエルが大っきな溜息を吐いた。


「二人とも!……“かなづち”なのでは?」

「「はあぁぁっ!?」」


 いや、そのだぜ。

 

 しかもライリーの奴、同じリアクションだ……。

 仕様も無ぇ。

 

 

(続く)

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