気づいたらTS転生~急募:バトロワで生き残る方法~

柿奈グリ

EP1 front : ここはどこですか?

「目ぇ覚めた?」


 誰ぇ? 


 起き上がったら見知らぬ少女が目の前に座ってました。感情の読み取れない表情でこっちを見つめてくる。えっ、マジで誰ですか? キュートでもパッションでもない明らかなクール属性オーラを醸し出す黒髪ロング少女の知り合いとかワタクシには存在しないんですけれども。とか考えてると当の少女がおもむろに指を3本立てた状態で突きつけてきた。


「これ、何本に見える?」


 3本ですかねぇ


 見たまんま答えると少女は相変わらずの表情で元の姿勢に戻った。何の確認これ。

 色々とよくわからんので現実逃避気味に周りを見渡すと、崩れた天井に割れた窓ガラス、ヒビ割れたコンクリートの壁が目に入ってきた。どう見ても廃虚ビルです、本当にありがとうございました。


 えぇ……どういうことなの……

 こんなことある? 俺はさっきまで自室にて圧倒的スヤスヤ状態だったはずなんですが。ただの一般市民に寝起きドッキリでしょうか。視聴率は絶望的ですね。


「わからない事があったら聞いてよ。多分答えられるし」


 絶賛困惑中の俺に謎の少女A(仮称)が救いの手を差し伸べてきた。実は天使かもしれない。

 しかし、そんなこと言われてもあらゆる事がわからんすぎて何を聞けばいいかもわからんな。


「ま、やっぱそうなるよね。私も最初は混乱しっぱなしだった」


 ほう、最初は~ということはこの少女はすでにそれなりの時間を過ごしているとみていいかもしれん。


「うん、結構長い事ここにいる。けど初めの方はさ、いきなりよくわかんない場所に居るし、過去のことは思い出せないし、これからどうしたらいいかもわかんないって状態だった。わかんないこと尽くしだよ」


 はい今聞き捨てならない言葉が飛び出しました。過去のことは思い出せないとか言ってますけど俺の場合記憶はあるんですよね。推しの配信見ながらソシャゲの周回してたとかフィギュアの撮影してたとかガッツリ憶えてます。

 ただし昨日の夕飯の記憶はない。


「でも、そうなったのはアンタと私だけじゃない。ここには大勢の女の子がいて、みんな過去の記憶を取り戻すために戦ってる」


【悲報】ここにいる少女全員フォウ・ム〇サメ状態。しかも戦ってると来た。何と戦ってるかは色々考えられるが、最悪のパターンはバトロワだ。

 少女同士の殺し合いとかあもりにも悪趣味すぐるでしょう? もしそうだったらマジで親のダイヤの結婚指輪のネックレスを指にはめてかなぐり捨てンぞ? 


「察しがいいね、まさにその通り。ここに来た私たちはずっと殺し合ってる。与えられた勝利条件は1000人倒すこと。手段は問わない、あらゆる手を尽くして敵を討てばいい。それがこの世界のルール」


 嫌な予想が大的中。つまり一騎当千をこの身で実現しろと。

 厳しすぎて草も生えない。主催者はクリアさせる気があるんですかねぇ。


「その条件をクリアすれば、過去の記憶を取り戻してこの世界から開放される……らしい」


 ふむ、ですか。条件を達成した物は未だいないということかね。やっぱ条件厳しすぎるだろ……修正はよ。


「証人がいないんだよね。いつの間にかこの世界からいなくなってても、それが人に倒された結果か条件達成によるものかわかんないし。ぶっちゃけ1000人とか数えてられない」


 ですよねー。

 しかし、そうなると本当かどうかもわからないルールを信じてこれから戦わなきゃならんということか。

 これは中々にキツイ。1番に信じるべきルールそのものが曖昧では、そのルールを疑って戦う意欲が削がれていく事請け合いだ。


「別に戦うことだけが道じゃないけどね、この世界で生きがいを見つけて生きてる子も居るし。逆にここのルールを知った途端に絶望して自ら死を選ぶ子もいる。で、アンタはどうすんの?」


無論、戦う。


 そりゃそうだ。過去の記憶はあるが、どっちにしろこんな世界にずっとは居られない。元の世界には家族も居るし友達だっている。そしてなによりガン〇ム俺の人生があるからな! 


「じゃ、まずはここがどんな世界で、どんな手段で戦ってるかを理解することから始めようか」


 どうやらこの世界での生き方をレクチャーしてくれるらしい。願ってもないが初対面の俺にあまりにも優しすぎる。この子の過去は多分天使で間違いないだろう。

 となればさっそく弟子入りだ。お願いします、師匠! 


 謎の少女は驚いた表情を見せてから、少し笑った。

 やはり天使だったか……。

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