4-4

 3回目に充君と会う前の日には。お父さんの昔のズボンをお母さんに出してもらって


「なぁ 意外と イケてる?」


「うーん ベルトすればなんとかね でも 裾は少し直してあげる」


「ありがとう 明日 穿いていくんだー」


「サンドイッチも作っていくんでしょ ねぇ あの充君と一緒なんでしょー?」


「ウン 午前中勉強終わったら、食べるつもり」


「なんか 楽しそうね 最近 明るくなったと思ったら、そのせいかー・・・」


「そんなんちゃうってー ただ たまたま 一緒に勉強してるだけ」


 それでも、私は朝早くから、サンドイッチを作って、久々に会えるからラグビーボールのキーホルダーを握り締めながらルンルンして図書館に向かった。玄関にもう充君は来ていて


「待たせてごめんね」


「いや まだ 時間前だよ 紗奈 それ 男物のズボンちゃうんかー?」


「そーだよ ばれたかー お父さんのん直してもらったの 変?」


「いいや まぁ 妙に可愛いいよ」


「うふっ お母さんも 微妙な顔してた」


 その日は、二人で数Ⅰの同じ問題集をやってみた。私は、充君の速さについていくのがやっとで、問題の度に、充君は自分が終わると私のをじーっと見ていて、たまに、ヒントをくれたりしていた。


 お昼になる時、私は


「ねぇ 充君 ウチ サンドイッチ作ってきてん 一緒に公園で食べよっ」


「えー 紗奈が作ったんかー へぇー 変なもの入ってないかー」


「入ってへんわー 初めて作ったんやけどなー 味見してぇなー」


 私達は中央公園のベンチを探して、座ることにした。充君はおいしいと言って食べてくれた。私は、充君の気持ちを確かめようと前から思っていたことなので


「なぁ 充君 ウチみたいな ブス女なのに なんでぇー ほんまに、かめへんのー?」


「あぁ 最初は、目ん玉飛び出してくるようでチリチリの髪の毛だろー 気持ち悪かったけど・・でも、ブスなんて思ったことないよ 昔から、賢くて優しい女の子だとしか・・ 紗奈なぁー 自分でブスなんて言うの よせ! そんなこと無いんやからー 小学校の時な 俺が風邪で2日ほど休んだ時あったんや そしたら、お前 その間のノート貸してくれてな 見たら、びっくりした 丁寧に書いてあって・・ お前、授業中は全然ノートとってへんやんかー 先生の話を一生懸命聞いているけどな だから、帰ってからまとめていたんやろー?」


「ウチなぁ 不器用やから、ノートとってると先生が何話したんかわからんようになるねん せゃーから帰ってからゆっくりとな先生の言葉思い出しながら・・」


「それでも すごいー 天才的や思ったわー それに、俺にノート貸した次の日 お前は別の紙切れにまとめを書いたものを 俺が返した自分のノートに貼り付けていた。気持ちのやさしい奴だなって思った。ノート貸したら自分が不便するのわかっているのに・・ それで・・こんな子・・その時 お前を好きだと感じた」


「だったら なんで はっきり言ってくれへんかったんよー ウチ 充君のこと・・」


「ばか そんなこと 小学生で あの時 言えるかー? だんだんとなー」


 その時、白い子犬を連れた女の子。サロペットの短いスカートで、犬を散歩してるのだろう。私に向かって深々とお辞儀をしていた。知らない こんな子と思ったが、頭をあげて、今度は充君の方を見つめていた。そーしたら、軽く会釈をして通り過ぎて行った。


「あっ 思い出した あの子 十和姉ちゃんの妹さん 前は髪の毛長かったのにー 切ったんだ 充君知ってるのー? なんか 見てた 充君のほうも・・」


「うー 教育大付属に行っているみたい 電車でよく会うんだ 私立と違ってダサい制服で一人で乗っているから逆に目立つんだよね 途中で降りるけど」


「ふーん 気になってるんだ 可愛い?」


「バカ 何 勘ぐってるんだよー」と、私の頭を押さえて・・。


 公園を出て、私、別れ道に来るまで、充君の腕にすがりつくように手をつないでいた。そして、別れる時


「なぁ こんなウチでも 好きって言ってくれてありがとう ウチも充君のこと ほんまに 好きと思っていいの?」


「もちろんだよ 一緒にな 進んで行くんだよ だけど、紗奈 すまん 来週から日曜日も合同練習になった 試合 近いんだよ 少し 会えない」


「えー 仕方ないよね じゃぁ 練習がんばってね 試合も ウチ ひとりでも行って勉強しとく 午後も行ってるし、もし、早く終わったら来てね」


「あぁ そん時は 電話するよー 紗奈もがんばってな」


 私、どんどん幸せ感じて行く。絶対に、受験して受かるんだ。もっと、幸せ感じたいと思っていた。今まで、ドス黒い毎日だったのが、こんなに晴れ晴れとするなんてっと。普段は、風で飛ばされた葉っぱが意地悪するように私の髪の毛に絡みついたりしていたのだが、その日は周りの樹々も太陽も全てが私の味方をしてくれているんだと感じていた。

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