6 急展開

「へ?」

「覚えてませんか? 今日の昼に、階段のところでこのメモを拾ってもらったのですけれど……」


 取り出したメモに書かれていたのは、部長会議に参加するようにというな趣旨しゅしの内容だった。けれど正直そんなことはどうでもいい。サラサラくんに話し掛けられているんだよ私!


「あえ、あのその、えっと」

「またお話したいと思っていたんです。色々気になることもあったので」

「ほ……!」


 本当ですかー⁉ はいっ、何なりと!

 そう心の中ではいくらでも答えられるのに、いざ声に出そうとすると、喉の奥で言葉が詰まってしまう。

 でもサラサラくんは、そんな私を変に思うような素振りは一切いっさい見せなかった。どちらかと言うと、興味を示したように眺めてくれた。


「待ちなさい、あなた! ワタクシのあやみんちゃんに、何をされるつもりですの? なんだか目線がえっちですわ!」

あやみんさまですよ、お嬢さま。そういうわけなので、気安く話し掛けないで頂きたい。あやみんさまを変な目で見るのもなしだ」


 ひぇぇ。止めてー! サラサラくんに対して、何てことを言っているのー!


「ちょ、ちょっと二人とも、勝手なこと言わないでったら……。ほ、本当なんかすみません……」

「いいえ全然。あやみんさんは相変わらず人気者なんですね。実は男子の間で噂になっているんですよ? ……E組に、可愛い子がいるって」

「ふぁ⁉」


 覗き込むように上目遣いになるサラサラくんに、思わず胸が高鳴った。髪が滑らかに流れ落ちていく様子が、何だかとても妖艶に見えた。


「あやみんちゃんったら、顔が真っ赤ですわ! 二度目の浮気は許しませんの!」

「仕方がありませんね。またお仕置きをしませんと。今回は緊縛にしましょうか」

「な……! 普段からしているみたいに言わないでってば二人とも! そ、それに、別にそんなんじゃないって言ってるじゃない。普通に褒め慣れていないだけなんだから……」

「またまた~。ね、茉鈴?」

「そうだよ。今だって美鳥の方に行っちゃった時、めっちゃへこんでたじゃん」

「ち、違うから! それに私っ、部活命だから。恋なんて絶対にしないんだからー!」


 あ……。


「へぇ、そうなんですか……ふふ。なら良かった」

「え?」


 サラサラくんは細めた目を、そっと開くと言った。


「だって、誰にも取られる心配がありませんからね?」

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