第24話

* 田鹿浦議員事務所


 7月13日、田鹿浦はかつての仲間四人を集めた。大雪山洋行、大峰大河、大分寺孝介と小学校の同級生都地川源(とちがわ・げん)。

田鹿浦が一人席に座り、右に洋行と大河。左に孝介と源が座る。

 初めは田鹿浦が自らの所業を告白した大河と孝介を責めた。

「お前ら、何喋ってんのよ!次回、孫助けるために適当な事を言った。全部作り話だと言えよ!」田鹿浦は命ずるように言った。

大河が大声で反発する。

「何馬鹿なこと言うな!俺が事実を言ったのに、お前が喋らんから、孫が殺害されてしまったじゃないか!お前の責任だ!どうしてくれるんだ!」

「そうだ、もう、お前の言いなりになんかにならん。お前が殺人者だ!」洋行も続いた。

「バカたれ!そんなこと言って、将来はないぞ!」田鹿浦が怒鳴りつけると「バカはお前だ!お前がさっさと殺されてしまえば良いんだ!こそこそホテルに籠城なんかしやがって、恥ずかしく無いのか!この臆病者めが!」大河が怒鳴り返す。

「なにい!」腹が立って田鹿浦が大河を殴ろうとすると、横から孝介に嫌というほど顔を殴られた。

「げっ!てめえ俺を殴りやがったなあ。覚悟あるんだろうな!」田鹿浦はもう堪忍袋の緒が切れ孝介を睨みつける。

その瞬間、テーブルに土足で上がった大河に、田鹿浦は腹に思いっきり蹴りを入れられた。

「ぐっ」腹を押さえて「洋行!こいつらを殴れ!」田鹿浦がそう命ずると、黙ったままの洋行に、今度は顔に真正面から拳を叩きつけられた。

「ぎゃっ!」と叫んで鼻を押さえる。その指の間から血がダラダラ流れる。

「山崎っ!ちょっと来い!」田鹿浦は秘書を呼ぶ。

ドアをノックして大柄な男が入って来る。

「何か、ご用でしょうか?」

「こいつら、叩き出せ!」

「はい」

そう返事をして、秘書は三人に向かって、頭を下げる。

「議員がこう申しております。申し訳ございませんが、お引き取りをお願いします」

丁寧だが、目は鋭く三人を睨んでいる。


三人は過去の鬱憤を晴らしたようなスッキリした顔をして出ていった。それでも田鹿浦を見る目は三角だ。

「山崎!もういい」

秘書は一礼して部屋を出る。

「なあ、源!少し犯人を探ってくれないか?礼はタップリする。ちょっと待っててくれ」

そう言って、立ち上がって部屋を出る。自分の部屋の金庫を開けて、帯封を五つ鷲掴みにして、応接室に戻る。

ドサっとテーブルにそれを置く。

「どうだ、これで?」

「ほほー大金だ。良いだろう」源は口の端を上げてニヤリとする。

田鹿浦はティッシュで鼻血と切れた唇を拭う。

「先ず、自殺した金山真一の身辺からだ。復讐しそうなやつを見つけてくれ!」

「そいつをどうすんだ?」

「それは別料金でお前が考えることだ!」

「なーる。で、次は?」

「お前が撥ねた銀野供子の身辺だ。同じく復讐しそうなやつを探すんだ!」

「そいつも、別料金で俺が考える事になるのかな?」

「相変わらず話が早い」田鹿浦は鼻で笑った。

「じゃ」そう言って源は出て行った。

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