第23話 肥料と堆肥1

 よく鶏糞と牛糞の違いを尋ねられる。

 私は、鶏糞は肥料で牛糞は堆肥です と答える。鶏糞を堆肥だと言う人もいるが、肥料分の多さで肥料という方が無難な気がする。

 植物は、窒素、リン酸、カリウムの三要素を基本栄養素としている。化成肥料はこの三要素のうち、二要素以上を配合し、一つの粒に固めたものだ。つまり複合的肥料と考えて構わない。

 配合肥料は、化学肥料や有機肥料を配合して、目的の養分を得られるようにしたものだ。つまり、混合物と考えて良い。

 もちろん、植物が三要素だけを養分にしているわけではない。通称苦土と言われるマグネシウム、カルシウムなど比較的多く必要な中量栄養素や鉄、マンガン、亜鉛など微量要素とよばれるものも必要としている。つまり肥料は植物の栄養分と言うことだ。

 それでは堆肥とは何なのだろう。堆肥とは微生物系の土壌改良材だ。

 栄養素が揃っていても植物は育たない。土のなかにはたくさんの小さな生物がいる。見える生物も見えない生物も、植物に有用な分泌物を出す生物も害のある分泌物を出す生物もいる。

 作物を育てると土の中ではその作物に集まりやすい生物がある。これが実は問題になる。土壌微生物の偏りによって同じ作物が育て難くなる事を連作障害と言う。

 つまり、作物の根に寄ってくる生物の種類が偏ると同じ作物は育ちにくくなるのだ。同じ作物とは同じ系統なので、例えばナス科の仲間であるナス、トマト、じゃがいも、とうがらし、ピーマンなどは連作障害の犠牲になる。つまり、じゃがいもを植えたあとにトマトを植えるとうまく育たなかったり、病気になりやすかったりする。ウリ科、マメ科、ナタネ科もそれぞれ同じだ。それを避けるには、同じ系統作物を同じ畑に植えず、3年空けてから植えるなどするのだ。しかし、狭い市民農園や収量が求められる大規模農業などではそれが難しい。

 そこで堆肥が使われる。堆肥は、微生物を畑に入れて、望ましい環境を作るために入れるのだ。だから、環境に合わせて堆肥の量も変わってくる。鶏糞は肥料分が多いので入れられる量に限りがあるので肥料と考える方が無難なのだ。堆肥や肥料の世界は奥が深いので、また続けてみたい。

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