第33話「妹にお使いを頼んだ」

「なあフォーレ、ちょっとお使いを頼まれてくれるか?」


 そうギルドハウスにいるフォーレに話しかけると露骨に嫌そうな顔をした。


「お兄ちゃん、そういうのは自分でやるからこそ達成感があるんですよ? クエストを人にこなしてもらっても、ゲームとして楽しくないでしょう」


 ド正論で返されてしまった。いやまあ確かにそうなんだけどさあ……


「ギルドクエストなんだが経験値が結構入るんだよ。俺が受けても意味無いしさ、他の人には頼みにくいんだよ。頼む!」


 妹は渋々内容を聞く気になってくれたらしい、テーブルについてくれた。


「で、なんのクエストなんですか?」


「パラトニウム鉱石の輸送、インベントリの半分くらい使うからアイテム欄の整理はしておけよ」


「面倒くさいクエストですね……ギルドクエストで残ってた原因はそれですか?」


「ああ、面倒くさいから今まで残ってたんだよ。ただ、このクエスト運搬するだけで結構な経験値が入るからな、悪いことばかりじゃないさ」


「カンストしているお兄ちゃんには関係ないこと……ですか」


 俺は頷いた。鉱山からプリミアへの運搬だが難しいところはないはずだ。アクティブモンスターも出現しないし危険も無い。面倒なだけであるから妹に任せても問題無いだろう。


 フォーレはクエスト一覧を開いて今回のクエストの内容を確認している。 問題無いと判断したのだろう、受注ボタンを押した。


「じゃあちょっといってきますね。鉱山までのポータルをお願いします」


「頼むぞ」


 俺は鉱山あてのポータルをギルドハウス内から開いた。パラトニウム鉱石はポータル経由で運ぶと崩壊するというクッソ面倒な属性を持っているので、鉱山まではポータルで行けるが、プリミアへ運ぶのは手作業という面倒なことになっている。


 そうしてようやくフォーレのアバターはポータルの中に消えた。報酬の石と経験値で満足してくれるといいのだが……


 一人になったギルドハウスで事務処理を進める。なんだか最近は妹から直通チャットがいつも届いていたので一人でいるのは珍しい気がする。少し寝るか……


「……ちゃん……お兄ちゃん!」


「おっと、寝てたな。フォーレ、終わったのか?」


「はい! バッチリお使いをしてきましたよ! 褒めてくれてもいいんですよ?」


「えらいえらい」


「ところでお兄ちゃん、報酬の石でガチャを回そうと思うんですが、ついてきてくれませんか」


「そのくらいなら構わないぞ」


 ガチャ広場へのポータルを開いて俺とフォーレはその中に入っていった。


「相変わらずここはケバケバしいですね」


「課金誘導のためだろ。やたら目が痛くなりそうなデザインの通販サイトみたいなもんだろ」


 そして妹は期間限定ピックアップガチャに向かう。目的はアバター用アクセサリだ。大きなリボンが最高レアで実装されている、性能も高く歩行速度上昇の強力な効果だ。


「リボン出ろリボン出ろ……」


 そう祈りながらガチャを回す、残念ながら単発なので昇格演出すら出ずに、使い捨ての全回復アイテムが出た。


「うぅ……お兄ちゃん……私、がんばったのに……」


「まあそんなもんだよ、ガチャに期待をするな、レベルは上がっただろ?」


「上がりましたけど……納得はいきませんよ……」


 結局、妹の愚痴を聞くために多くの時間を使う羽目になる、結果時間節約のために妹に頼んだクエストだったのに、その愚痴を聞くために多くの時間を割いたのだった。

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