役立たずの守護獣持ち!とバカにされて家を追い出されましたが、こいつはスキルを統べる神獣です!〜全てを失った少年が英雄王になるまで〜

三桐いくこ

第1話 輝かしい将来と絶望

「ラスキン家のお前なら、偉大な守護獣ビーストがつくよ」


 俺の肩を叩きながら、父さんは言った。

 俺はレオナード・ラスキン。15歳。レオと呼ばれている。


 一人につき一体の守護獣ビーストを持つ、ビストルーヴァ王国。

 人にも動物にもなる彼らを使って、この国は成り立っていた。


「緊張してきた……」

「大丈夫だ。うちは水スキルの名門だぞ?

 お前にも強い守護獣ビーストがつくよ」


 ここは王宮の一角にある大広間。

 15歳になると、守護獣ビーストを召喚する儀式が行われる。

 もっとも、王宮で行われるのは、俺が貴族の息子だからだ。

 俺は火、水、風、土の四大名家の一つ、水スキルの名家ラスキン家に生まれた。


「俺も父さんみたいな、格好いいワニの守護獣ビーストがいいな」


 父さんは得意気に笑った。父さんの足元には、大きなワニの守護獣ビーストがいる。

 この国最強の水スキルを持つ守護獣ビーストだ。

 ワニが背の高い男の人になった。


「レオナード様なら大丈夫ですよ」


 父も兄も代々水を操るスキルを持つ、強力な守護獣ビーストを持っている。

 その守護獣ビーストの力で、枯れ地に川を作ったり、洪水を止めたり、魔獣と戦ったりして王国の為に働いているのだ。

 強大な力で王を支える。それがラスキン家の誇りなのだ。


「ありがとう」


 父さんの守護獣ビーストに励まされて、緊張がほぐれた。

 俺もいつか、父さんや兄さんみたいになりたい。

 そう願い続けてきた。その夢が今日、叶うのだ。


「やぁ、レオ」


 声をかけてきたのは、アルベルトだ。

 一足早く守護獣ビーストを召喚して、隣には牛の守護獣ビーストがいる。


「アルベルト!でっかい牛だな!やっぱり炎スキルか?」

「ははは、当たり前だろう。うちは炎スキルの名家なんだから」


 アルベルトは牛を撫でながら笑った。


「ただし大き過ぎるかな。馬車には乗せられないかも」


 笑いながらそう言うと、牛の守護獣ビーストは大柄の男性になった。


「アルベルト様、それは困ります」

「ははは、冗談だよ」


 アルベルトと牛の守護獣ビーストを見て、すごく羨ましくなった。


「羨ましいな。早く俺も守護獣ビーストが欲しいよ」


「いやだぁぁぁあ!!」


 突然、叫び声と一緒に召喚部屋から、一人の男の子が男の人に引っ張り出された。

 父子みたいだ。ざわめきが起こる。


「ギャハハハ、最悪だな」

「どうやって生きていくのかしら?」

「かわいそう……」


 男の子は床に座り込んで泣いている。

 肩にはイタチの守護獣ビーストが乗っていた。


「あいつ、ハズレに当たったらしいぜ」

「良かったー。私はお父様と同じスキルの守護獣で」


 ざわざわと色んな声がする。

 おかげで騒ぎの理由が分かった。


「可哀想に」


 俺は呟いた。

 ハズレとは大した力がない守護獣ビーストのことだ。

 ちょっと水を撒くだけのスキルとか、足が早くなるスキルだとか、そんな庶民の守護獣ビーストと同じくらいの弱いスキルなんて、貴族の恥なのだ。


「エイデン家の息子か、あそこは5人兄弟だ。他の兄弟がいるから大丈夫だろう。

 うちであんな事になったら大騒ぎだよ。なにせ、息子が二人しかいないからな」


 父さんの話にうなずく。

 兄は守護獣ビーストは美しい白鳥で、強力な水スキルを持っている。

 先祖代々、違うスキルが出たことはなかった。

 だから俺も、強力な水スキルの守護獣ビーストがやってくると信じて疑わなかった。


 俺の名前が呼ばれた。


「さ、行って来い」


 父さんに背中を押され、守護獣ビーストを召喚する部屋へと踏み入れた。


 召喚部屋は、真ん中に大きな魔法陣が描かれた部屋だった。


「目を閉じて下さい」


 魔法陣の前で、俺は言われるがままに目を閉じた。

 王宮魔術師が呪文を唱える。

 目を閉じても分かるくらい、激しい光がしばらく続いたと思うと、突然消えた。


「目をお開け下さい」


 魔法陣には白猫がいた。

 水色の眼で俺を見つめている。


「こちらがあなたの守護獣ビーストです」

「可愛いな。これからよろしく」

「ご主人!イオだにゃ!よろしくお願いするにゃ!」


 イオという名前の猫は、俺の足にスリスリと体をこすりつけた。

 小さな猫だが、守護獣ビーストに姿はあまり関係ない。

 おそらく強力な水スキル持ちのはずだ。


「早くお前のスキルを見たいよ」


 俺はイオを抱き上げて頭をなでた。


 宮廷魔術師が、俺たちの前にきた。

 水晶玉をかざしてスキルを確認するのだ。

 水晶玉をやわらかな光がつつむ。


「何!?」


 宮廷魔術師が慌てだした。


「ス、スキルが見れない」

「へ?どういうことだ?」


 俺が怪訝に思う間に、たくさんの宮廷魔術師がやってきた。


「私でも無理だ」

「次は私が見よう」

「こんな事は前代未聞だ」

「こんな事はあってはならない」

「大魔術師を呼べ!」


 大魔導師と呼ばれる、偉い魔術師がやってきて水晶玉をかざす。


「何ということだ……!」


 俺はもう泣きそうだった。


「ご主人、大丈夫?」


 腕の中のイオが心配そうに声をかけた。


「レオ、どうした」


 魔術師に呼ばれて、父さんがやって来た。

 王宮魔術師が父さんにありのままを伝える。


「嘘つけ!そんなことがあるはず無い!」


 父さんが王宮魔術師に詰め寄る。

 王宮魔術師を守るように、トラの守護獣ビーストが立ちはだかった。


「お前たちの魔術が失敗したんだ!!」

「手順は間違いありません」


 大魔術師が淡々と答えた。


「スキルを持たない守護獣ビーストなんて!そんな事があるわけがない!」




◆◆◆


 読んでいただきありがとうございました。 


 続きが気になる!レオはどうなるの?と思われましたら、

 ↓★評価とフォローをお願いします!↓

https://kakuyomu.jp/works/16817139556723122966/reviews

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る