Day3-2 後輩のノアちゃんと登校

3日目・朝



寮の外に出ると、ひとりの女の子が待っていた。


ネレアではない。


僕より一つ年下だろうか。

すごくかわいい。

セミロングの黒髪は朝日を浴びて天使の輪が出来ている。

天使の様にかわいい。


僕に気が付いて挨拶をしてきた。



「おはようございます。私はメルレちゃんの付き添いできました。ノアと言います」



メルレって……昨日、ぶっ倒れた女の子か。



「今日、ネレア様はコンサートのリハーサルで学校をお休みされるそうです。代わりに、メルレちゃんがヒロト様と一緒に登校することをお許しくださいました」



何だろう。ネレアはえらくメルレに目をかけているな。

ライバルって話だったけど、妹の様にかわいがっているのかもしれない。



「で、本人はどこにいるの?」


「あそこの茂みで吐いてます」



茂みからお尻だけが見えている。


ノアが近づいていく。



「メルレちゃん、ヒロト様出てきたよ」


「おえっ……。えっ!もう?まだ心の準備が出来てな……げぇっ」



メルレ……


この世界に来て初めて食指が動かない女の子と出会った。


かわいいし、僕のことを好きでいてくれるだけでありがたいはずなんだけど。


それよりも、こんな感じで一緒に登校できるのか?



「メルレちゃん、酔い止めのお薬は飲んだの?」


「ちゃんとひと瓶全部飲んだよ……」


「一錠でいいんだよ!飲み過ぎだよ!だから吐くんだよ!」 



酔い止めは乗り物酔いだけじゃなくて、緊張した時の吐き気も効果があるのか?


どうにも残念過ぎるやつだな……。面白いけど。



「メルレも歌手だって聞いたんだけど、たくさんの人前で歌うんじゃないの?いつもこんなに緊張してるの?」


「私、メルレちゃんのコンサートの控室に行ったこともあるんですが、ここまで緊張はしていなかったですね」



好みの問題ではなく、体調の問題でメルレとは絡まない方がよいのではないだろうか……。



「歩ける?大丈夫?」


「あわわわ……ヒロト様だ!お見苦しいところをお見せしてすみません……おげえっ」



僕が近づくと吐いた。


盛大に吐いた。


僕に反応して吐くって、それはもうアレルギーなんじゃないか?



「体調が悪いなら、帰って休んだらどうかな?」


「大変申し訳ないですが、そうさせてもらいます……」


「あっ!メルレちゃん……送っていくよ」


「大丈夫だから……ノアちゃんは、ヒロト様と一緒にいて……」



メルレは一人で帰って行った。




ーーーーー




僕はノアちゃんと一緒登校することになった。



「……ごめんなさい、私なんかメルレちゃんみたいにかわいくないのに。歌が上手いとかの特技があるわけでもないし……」


「別に特技なんてなくたっていいじゃん。僕も得意なことって別にないしね。それに、ノアちゃんはすごくかわいいよ! 」


「……はわわわわ。わ……私がかわいいなんて……。な、なんか今日は暑いですね!」



ノアは顔が真っ赤になっている。


今まで出会ったのは押しが強い女の子ばかりだったので、こんな反応が新鮮だな。



「一緒に行くっていっても、学校の場所が違うんじゃないの?」


「はい。ですが、今日は学園の方に許可を頂いておりまして、ヒロト様と一緒に授業を受けることができます」



本当にネレアの代わりがあてがわれた感じだな。


メルレではなくて、ノアちゃんになったけど。


それにしても、ノアちゃんかわいいな。


何て言うか、かわいい。


妹にしたい。



「お兄ちゃん……あっ!ごめんなさい」


「えっ……何?」



一瞬、僕が心の中のことを読まれているのかと思った。



「……ヒロト様のことが私のお兄ちゃんになってくれたらうれしいな、何て妄想していたら、そう呼んでしまいました……」


「ビックリした……」


「……すみません、変なこと言って驚かせちゃいましたよね」


「ちょうど僕も、ノアちゃんが妹だったらいいな、何て思っていたところなんだ」


「……え? 本当に?」


「うん、本当」


「えええええっ!?」



目が飛び出さんばかりに驚くノアちゃん。



「じゃ……じゃあ、相思相愛ですね。へへへ」


「そうだね」



ノアちゃんの頭をポンポンとなでてやった。



「お兄ちゃん!私のこといつまでも子ども扱いしないでよね!……あ、冗談です。ごめんなさい」


「あ~。ノアちゃん、最高にかわいいわ。リアクションも最高だわ」


「は……恥ずかしいです」



くだらないやり取りをしながら、ノアちゃんと楽しく登校した。


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