ちょっと先の未来では妊娠から出産まで全て人工の子宮で行うことができる

ちょっと先の未来は、当たり前かもだけど今より進んでて、私たちの世界にはまだない技術が一般的になっている。

この物語は、妊娠から出産までを母親の体内ではなく義胎で行う義胎妊娠を選んだ1組の夫婦の物語。
妊娠が物語の中心という珍しい作品。

義胎とは、ヒトの細胞から作られた人工子宮とそれを管理する機械、栄養や酸素を送る機械などを一つにまとめたものが義胎。妊娠中のリスクを軽減できるからか、作中では国から補助金が出るほど推されている方法だ。
でもヒトのお腹の中で育てるわけではないから不安に思う人も多く、主人公のミチルと妻のツキミも最初は義胎で産むのかを躊躇する。同じような人達や実際に義胎妊娠をした人達で集まって話し合う自助グループに入り、話を聞いていくうちにツキミが義胎で産むことを決意。ミチルも賛成するけど、その後あることが発覚して、自分のお腹で育てなかったという負い目を感じたツキミと弱冠楽観的なミチルとの間で意見が食い違う。このまま、お互いに思うところがあるままで無事に出産の時を迎えることができるのか。

まだこの世にない技術や制度があり、それが孕む問題などまでしっかりと作り込まれているので、本当にありそう、あったらいいなと思わされる。
例えば作中では角膜に機械を埋め込んで現実世界の上にデータやメディアを表示することができる覆合現実があり、瞬時に他人に共有できたり、物理的な操作デバイスが無くなっていたりする。さらに設定すれば重さなどまで感じることができる。義胎妊娠でもその技術を使い、赤ちゃんの姿を目の前に映したり、抱くことができる。
また、義胎妊娠は良いことなのか、子どもにとって良いのか、覆合現実を通しての触れ合いで親子の愛情が育めるのかなど、対立する意見や主張があって考えさせられる。

ミチルとツキミが何を悩み、どんな意見を聞き、どういう選択をするのか、ぜひ自分の目で確かめてみてください。