探知と観察眼に優れた、賢者

 サトミは校舎の外に置いてあるベンチを見つけると早足で駆け寄り、急いで腰を下ろし席を確保する。


 それから、安堵のため息をつきながら周囲を見渡していき、


(やった、静かに食事ができる場所の確保に成功! って、あれ?)


  少し離れたベンチには、女生徒が一人寂しそうに座っていた。


 サトミは持っているお弁当の包みを開けながら彼女を見据えて、


(あっ、あの子ももしかして、私のように一人で――静かな場所でお弁当食べてるのかな? うーん、気になるなぁ。親近感を感じるよ。どうしよう、よかったらお昼ご飯一緒に食べませんかーって声をかけてみる? でも、迷惑じゃないかな。本当に一人で居たかったらどうしよう。……私は、彼女と一緒にお昼を食べることから、逃げ……る)


 サトミは視線を遠くのベンチの女性から膝上のお弁当に視線を移した。






 それから数日間、サトミは同じような生活を続けていった。


 そして、ついにその時が訪れる。


 サトミが教室に入ると、一瞬体を硬直させて怯み、


(うっ、なにこれ!? 他の生徒たちとの間から見えない圧を感じるようになった!? 物理的に近づけるけれど、体が警告してくるっ! 苦しい!)


 サトミはうつむきながら自分の席に腰を下ろしていく。






 さらに数日後、サトミは自分の部屋の窓から外の雨模様をぼんやり眺めながら、


(私は自分の居場所がない、楽しくない苦痛な学校に行くことから、逃げ……る)


 床に腰を下ろし、壁に背中を預け、ペンダント型端末が与えてくれる情報の雨に身を任せた。

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