最終回 『 今日はキスの回数多いぞ⁉ 』


「うだぁ~~。やっぱクーラー最高だな。今年もクソあちぃし、外に出るのも億劫だ」


 アマガミさん。ぱたぱたと服を扇ぐ。


「どうしたボッチ? ……「女の子がはしたないよ」って。そんなの今更だろ。あ、もしかしてイヤらしいことでも想像してんのか? ボッチのえっちぃ~」


 イジワルに笑うアマガミさん。ボッチは視線を逸らした。


「なんだその反応……まさか本当に変な事想像してたのかよ。いや、なんかその、悪いな。ボッチも思春期の男子だもんな」


 頬を赤らめて、アマガミさんが縮こまってしまった。


「で、でもボッチもまだまだ子どもだな! こんな私なんかに興奮するなんて! ……は? 「アマガミさんは物凄く魅力的だよ」って、恥いこというなよ! まぁ、胸はある方だとは思うが、スタイルは良くないだろ」


 口を尖らせるアマガミさん。ボッチは首を横に振る。


「「アマガミさんのお腹引き締まってるし、お尻だって可愛いよ」……っていいつ見たんだよ! 私、まだお前に裸見せたことないだろ! ……あー、そういえばお風呂で時々お前に目撃されてるな。その時にか。ボッチのハレンチ!」


 アマガミさん、顔を真っ赤にして自分の体を抱いた。

 警戒心を強めてしまうアマガミさん。ボッチはどうしようかと頬を掻く。


「ボッチが見かけに寄らずエッチなやつだとは知っているが、そ、そのだな。私だって覚悟くらいいるんだぞ……何に、ってそんなこと言わせるな⁉」


 アマガミさん、顔を茹蛸のように赤くして吠えた。

 見かけに寄らず初心なアマガミさん。やっぱり可愛い。


「くぅ~~、このスカーレット・ブロー様に屈辱を味わせるのはお前だけだぞボッチ。あ? 「アマガミさんて見かけに寄らず初心だよね」だと……ほーん、言ってくれるじゃねえかボッチ」


 舐められたのかと勘違いしたアマガミさんが突然ボッチをソファーに押し倒した。


「どうだ? これでも初心だって言えるか? 言えねえよな。だって、初心だと思ってる私に為す術なく押し倒せてるんだから……え? 「次はどうするの?」だと⁉」


 少しイジワルに挑発すれば、アマガミさん、露骨に狼狽した。


「お、お前は何して欲しいだよ。……「アマガミさんの好きなように」って丸投げはズルいぞ⁉」


 押し倒したのはアマガミさんだよ、と言えば、アマガミさん、羞恥心で目尻に涙を溜めてしまった。


「お前はズルい男だっ。女の心を弄ぶ悪男だっ。……「そんな僕は嫌い?」って、そんな訳無いだろ。す、好きに決まってる」


 狼狽えるアマガミさん。ひたすらに可愛い。

 仕草一つ一つが可愛いから、ボッチは我慢できなくなってしまう。


「――んっ。……なんで押し倒されたお前が私にキスできるんだよ。……「アマガミさんがそうさせるんだ」って私はべつに何もしてないだろ」


 可愛いアマガミさん。外だと怖いのに、家の中じゃ凄く可愛い。


「――んっ。また私の許可もなしにキスしやがって。「許可がないとダメ?」ってそんな顔して言うな⁉ べ、べつに構わねえよ。お前が好きな時にすればいい――んっ」


 ならお言葉に甘えて、とキスすれば、アマガミさんが堪らず逃げる。


「今日はキスの回数多いぞ⁉ いや私が言ったせいではあるけども! で、でも、だんだんキスする時間が増えてないか⁉」


 耐えられない? と聞けば、アマガミさん頬を引きつらせた。


「そ、そんな訳あるかっ。私は地元じゃ最強の女ヤンキーだぞ! こんくらいのキスなんて屁でもねぇ……ひゃん!」


 なら、と今度は深くキスすれば、アマガミさんから可愛い悲鳴がもれた。


「「アマガミさんの弱いところならなんでも知ってるよ」って私に弱点なんかない……んっ、こらボッチ、首舐めるな。……んんっ」


 アマガミさんの可愛い悲鳴。ずっと聞きたくなってしまう。

 こういうところが女の子らしくて、本当に好き。


「はぁはぁ……ボッチ、いい加減にしないとデコピンくらわせるぞ?」


 荒い息を繰り返しながら、アマガミさん睨んでくる。

 慌てて土下座すれば、アマガミさん、ふんっと鼻を鳴らした。


「このドスケベボッチ。しばらくお前からキスするのは禁止だ」


 ガーン、と落ち込むボッチ。でも、アマガミさんの言葉に小首を傾げた。

 そんなボッチに、アマガミさんは犬歯を魅せると、


「お前からは禁止だ。でも、私からは何回でもする」


 そう言って、アマガミさん、キスしてくれた。

 瞬かせた目の先には、顔を赤く染めたアマガミさんがいて。


「どうだボッチ。大好きな私からのキスは? 嬉しいよな? 嬉しいって言わないと――何度でもしてやる」


 デコピンをくらって、その隙にアマガミさんがまたキスをしてくる。

 そして、アマガミさんは無邪気に笑いながら、


「――こうやって思う存分イチャイチャできる家はやっぱいいな」


 外では怖いアマガミさん。でも、家では今日もめっちゃ可愛い――。


 ―― Fin ――



 

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