退職

俺は、店長に怒られていた。


「困るんだよ!突然」


それでも、辞めたい事を伝えてた。


10代の若者じゃないんだよ!


こんな辞め方は、おかしいよね!


わかってる?大人なんだよ


めちゃくちゃ、責められたけど…


全然、辛くなかった。


掃除の人に、事務所の場所を聞いて葉月さんを待っていた。


期待されていないと嘆いた葉月さんを抱き締めていた。


「かずさん」


「何?」


「私の為に、ごめんなさい」


「謝らないでよ」


「でも…。」


俺は、葉月さんから離れた。


「車に行こうか」


「はい」


一緒に並んで歩く。


「葉月さんに出会えてよかったって思ってるんだよ!俺」


「そうなんですか!」


「うん、そうだよ」


俺は、助手席を開けた。


「ありがとうございます」


「いいえ」


運転席に乗り込んで、エンジンをかける。


「葉月さんに出会ってなかったら、美陸に告白してなかったし。葉月さんに出会ってなかったら、夢なんかなかったから」


「夢ですか?」


「うん!俺、スライド方式でなんとなく。スーパーに残ったからさ!でも、葉月さんを幸せにしてあげたいって夢が出来たんだ。」


「私なんか」


「私なんかじゃないよ!葉月さんは、自分が思ってるより素敵だよ。努力じゃどうにもならない事を知ってるって凄い事だよ」


「そんな事ないですよ」


「そんな事あるんだよ」


俺は、葉月さんの家の下に車を停めた。


「りーちゃん」


「はい」


「努力が自分を裏切るって知った時、どう思った?」


「それは…。怠けてるって」


「怠けてなくても、頑張っても、痩せないんだろ?それを、誰も理解してくれないんだろ?それを知った時、悔しくて悲しくて辛かったんだろ?」


「かずさん」


葉月さんは、ボロボロ泣いていた。


「いつか、痩せれたらいいな。ゆっくりでもさ!誰の為でもなく、自分の為に…」


「かずさん、ありがとう」


「俺と美陸と、幸せになろうな!」


「ありがとう」


葉月さんは、泣き続けていた。


「片付けするだろ?」


「はい」


「何かあったら、すぐ呼んでくれよ!駆けつけるから」


「はい」


「じゃあ、俺も片付ける」


「はい」


俺と葉月さんは、手を振って別れた。


これからの、未来は俺達が一緒にいるから!


俺は、家に帰った。


「ただいま」


「おかえり、かずくん」


「めちゃくちゃ怒られたよ」


「僕もだよ!りーちゃんは?」


「怒られなかったから、凹んでた」


「そっかあ…。」


「片付けしてくよ」


「うん」


「美陸」


「うん」


「りーちゃんと三人で幸せになろうな!」


「うん」


俺は、そう言って自分の部屋に行った。


片付けをしていく。


この選択が、間違ってるかいないかなんて関係なかった。


俺は、美陸と葉月さんと生きていきたいと思ったんだ。


葉月さんには、もうあんな悲しい顔をして欲しくなかった。


誰にもわかってもらえない気持ちを抱えていて欲しくなかった。


俺は、部屋のものを仕分けしていく。


「いったん休憩しない?」


「うん」


美陸がやってきて、俺は休憩する。


「かずくん」


「何?」


「りーちゃんは、いつか僕達の元を離れていく日がくるよね?」


「そうだな!きっと」


「ちゃんといい人か見極めようね」


「そうだな!」


「悪いやつだったら、嫌だよ!僕、りーちゃん好きだから」


「うん、わかってる。」


美陸は、俺の肩に頭を乗せる。


「僕達が、りーちゃんを幸せにしよう。そして、素敵な人を見つけてあげよう」


「わかってるよ」


「それまで、僕とかずくんが、りーちゃんの王子様だね」


「そうだな!美陸」


「うん!」


ニコニコ笑う美陸の頭を撫でる。


みんなで、幸せになろう!


今は、それしか浮かばない。


今は、それしか思えない。


葉月さんは、絶対に幸せになれる。


俺と美陸が、絶対に幸せにするから…。


だから、葉月さん。


俺達と、ずっと、ずっと一緒にいような!


俺と美陸は、また片付けをしに行った。

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