もう、一人で抱えないで

終わるのが遅くなってしまった。


18時にあがるつもりだったのにな。


「崎谷さん」


「はい、何でしょう?」


「今度、ご飯でも行きませんか?」


何故か同期の森ノ宮さんに声をかけられた。


「えーと、申し訳ないけど」


「彼女がいるんですか?」


「彼女って言うか」


「また、声かけます。」


森ノ宮さんは、悲しそうな顔をして行ってしまった。


めんどくさいな。


断るの…。


俺は、葉月さんのマンションの下に行った。


葉月さんは、迷惑をかけるといった。


でも、俺は葉月さんの人生をかえたかった。


ゲイなのに、望むものを与えられないのに、好きの意味も違うのに、それでも俺は葉月さんの傍にいたかった。


葉月さんと買い物をするのが、楽しい。


買い物中に、葉月さんはご飯を食べるのが苦痛だった話しは今もだったと言った。


なんで、そんな思いしながら食べてたんだよ。


俺は、葉月さんを傷つけている何かが許せなかった。


車に乗り込んだ。


「友達が、snsで書いていたんです。」


「何を?」


「デブの職場の人、痩せないって言い訳ばっかしてる。努力してないからだよって書いていたんです。」


葉月さんは、俯いてる。


「嫌だと思ったの?」


「嫌だと思った、それと同時に大好きだった友達を苦手になった自分が嫌だった。」


「そっか、何かそれ。わかるな。」


俺は、笑っていった。


「わかりますか?」


「うん、俺もsnsで友達が男が男好きとか気持ち悪いわ。ないないって発信してたの見た事あるから」


「自分の事じゃないのに、傷ついたりして馬鹿ですよね。私」


「俺も傷ついたよ。自分の事じゃないのに…。だから、わかる。違うのに、胸に刺さるんだよね。」


「かずさんも、辛いんですね」


「そうだね。努力じゃどうにも出来ないから余計に辛いよね」


「それ、わかります。」


葉月さんが、笑ってくれた事にどこかホッとしていた。


家について、車を降りた。


マンションの鍵を開けると、美陸みろくが現れた。


「あー。おかえり。」


ニコニコ笑ってる。


「さばの味噌煮作ってもらうから」


「嬉しいな。」


美陸は、喜んでいる。


葉月さんに、ついていってる。


「お弁当箱、買うの忘れました。


「だと思って、買ってきたんだよ。僕が!!」


「本当ですか?」


「はい」


「明日からよろしくお願いします。」


「勿論です」


葉月さんは、ニコニコしながら下準備を始める。


俺は、それを見てる。


あんな風に、いつまでも笑えたらいいのにな。


迷惑をかけるその言葉で、藤井先輩に言われた言葉を思い出していた。


葉月さんは、何も悪くない。


ただ、そうだったってだけだ。


美陸が、見た目は選べないと言った。


俺も、そう思う。


化粧や洋服を着たって、隠せないものがあるんだ。


葉月さんが足を引き摺ってるのはかえれないよな。


変わることが、その人の為になると本気で信じてるやつは嫌いだ。


そんな感情に苦しめられて、苦痛しか感じない人間ひともいるのを少しは理解してほしい。


「できました。」


そう言って、美陸とよそってる。


変わらないと信じてたんだろうな。


葉月さん、友達の事。


俺もそうだった。


どっかで、理解してくれるって信じてたんだよな。


「うまそーだよ。食べようよ」


美陸が、ニコニコ笑ってる。


「いただきます」


三人同時に言って食べた。


葉月さんも、ニコニコ嬉しそうに食べてる。


よかった。


弁当食べてた時みたいな、しんどそうに詰め込んで食べてない。


美味しそうに、笑いながら食べてる。


「おいしいな」


「うん、凄くね」


「よかったです。喜んでもらえて」


「あのさ、りーちゃん。僕、お弁当代払うよ」


「俺も」


「そんな気にしないで下さい。」


「いいの、いいの。そのお金を貯めて、自分が綺麗だって思えるもの買いなよ」


「どういう意味ですか?」


「いつか、それが、りーちゃんの自信になるから。アクセサリーが一番いいと思うんだよね。僕は」


そう言って、美陸が笑った。


「そうします。」


葉月さんは、笑って頷いた。



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