晒し者

「おはよー。イケメン君」


美陸みろくが、俺の顔を覗いていた。


「頭が痛いです」


「簡易のお味噌汁いれたよ。」


「ありがとう」


俺は、起き上がって味噌汁を飲む。


俺も美陸も料理が出来ない。


湯を注ぐ行為以外、出来ない。


「今度の休みは、お外で食べよう。人の作る料理が食べたい」


「わかる。湯を注ぐ行為しかできないからな」


「そうだよ。料理できたらいいんだけどねー。」


「そうだな。」


「じゃあ、僕行くね。」


「はーい、いってら。気をつけて」


「はい、バイバイ」


美陸が、出ていった。


味噌汁のゴミをゴミ箱に捨てた。


ブー、ブー


「はい、もしもし」


「あのー。どこに行けば、後何時に?」


自信ないから、声が小さいな。


「スーパーの前に、一時間後にいける?」


「わかりました。」


「じゃあ」


俺は、電話を切ってシャワーを浴びて用意をした。


「ふー。さて、何を話すかな」


頭を乾かした。


カッターシャツ、ズボン、ジャケットでオッケー。いくか


俺は、車でスーパーに向かった。


俺は、スーパーの前で待っていた。


「おはようございます。」


きた。


「おはよう、行こうか?」


「はい」


私服初めて見たけど、悪くないよ。


メークもちゃんとしてる。


「自信ないから、声が小さいの?」


「そうかもしれないですね」


「何で、自信ないの?太ってるから?」


「あの人かっこいー」「ほんとだ」「なに、あれデブだよ」「ヤバイ、ありえない」「イケメンってデブ専」


通りすがりの人が、適当に言ってきやがる。


苛々する。


「離れて下さい。」


「足が悪いのとか気にしてる?」


「もう、充分ですよ。晒し者にしたかったんですよね?」


えっ?


葉月さんが、泣いていた。


晒し者って、俺そんなつもりないよ。


「待って」


手を掴んだ。


「車、こっちだから」


俺は、葉月さんを連れてきた。


「後ろで、いいです。」


葉月さんは、後ろに乗った。


「そんなに、自分を責めなくていいんじゃないの?」


葉月さんは、泣いてる。


俺は、車を走らせて、走らせて、

人が少なそうな駐車場に停めた。


車から降りて、自販機まで走って飲み物を買った。


後ろの席を開けて、隣に座った。


「水がいいよね?」


俺は、葉月さんに水をあげた。


「ありがとうございます。」


「ごめんね。晒し者にするとか感じさせちゃって」


葉月さんは、俺を見つめてる。


「俺さ、葉月さんに前から興味あったんだよ。太ってるとか痩せてるとかじゃなくてさ。前に、何か本読んでたでしょ?あれから、興味持って」


「そうなんですか」


「葉月さんから、自信奪ったのはなに?太ってるから?それとも、足が悪いから?」


「わかりません。」


「俺で、よかったら話してみてよ。話なら聞けるからさ。」


「そんな事は、ありえないっていいませんか?」


「言わないよ」


「嘘つきって、いいませんか?」


「言わないよ」


「怠けてるだけって、いいませんか?」


「言わないよ」


「なら、話します。でも、少し時間かかります。」


「構わないよ。ゆっくりで。それまで、ゲームしてていい?」


「どうぞ」


俺は、スマホを取り出してプニプニをやってる。


葉月さんを見ると悩んだ様子で、なにかを考えている。


話してくれるのだろうか?


痩せたら、綺麗なのにって言う人いるけど


綺麗な人って、痩せなくても綺麗だ。


葉月さんは、そのタイプだ。


睫毛長いな。


太ってても、足悪くてもいいじゃない。


別に、誰にも迷惑かけてるわけじゃないし


なんで、さっきみたいな酷いことを平気で言えるんだろうな


葉月さんは、どれだけそういうのに苦しめられたのかな


プニプニ、タッチパネルで潰すこのゲームが謎過ぎて好きだ。


俺、結構、丸いフォルム好きかも


プニプニ、プニプニ、プニプニ


はー。うける。これ


「あの、話してもいいですか?」


「あっ、はい。」


俺は、スマホをポケットにしまった。


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