28.何言ってんの⁉

 なに、俺が直接手を下す必要は無い。


 事の真相をカインに伝えるだけでいい。


 それだけでアルベルトはこの学園から消え去る。


 はずだった……。


「さすが僕の認めた男だな、ルーク。その事なんだが、しばらく様子見というか、シャインに時間を与えてやってくれないか」


 な……なんだと⁉


 その言い方ではまるで……。


「知って、いたのか……」


「隠しても隠し切れないオーラという物がある。生まれ持った資質というものは同類には見えてしまうものだよ。君と一緒で僕も直ぐに気付いたさ。シャインには何かが有るってね」


 あ、いや、俺は事前にネットで調べただけなんだけど……。


「で、では、このまま放置ということか? こちらからは何もせず?」


「ああ、出来ればそうしてやって欲しい」


「何故だ! 奴はお前を、この国を騙しているのだぞ!」


「それは、君がいつも口をすっぱくして言っている事が答えさ」


「俺が言っている事?」


「人を思いやれ、相手の立場になって考えろ。もし僕が彼の立場だったらどうするか、そしてどうして欲しいか、ずっと考えていたんだ」


 いや、それ、確かに全校集会とかで言ってるけどさ。


 それ、エリナ宛だがら、エリナが悪役令嬢にならない為の布石だから。


 お前宛てじゃないからね。


「正直、一人じゃ背負い込むには重い問題だった。助かったよ」


「ん?」


 どういう事?


「僕達でアルベルト。いや、親友シャインの為に出来る事を考えようじゃないか」


「あ、ああ……」


 なんで?


「しかし、君も人が悪いね」


 どうして?


「本当にシャインを罪人として扱いたいなら、君は一人でやったはずだ。それをわざわざ僕に言って来たって事は、試したんだろ? 僕がシャインをどう思っているのかを。そして、もし僕がシャインに罰を下し、罪人として事を進めようとしたなら、君

は僕を説得して止めた。そうだろ?」


「そ、そうだな……」


 何言ってんのこの人⁉

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る