22.助かった

 助かった。


 本当に助かった。


 なんとなく近くの林の中に入ったら、たまたま怪しい小屋が見つかって、その中に怪しい男どもがいた上に、縄で縛られている女の子が2人いた。


 もうこれ、奇跡でしょ。


 奇跡としか言いようがないでしょ。


 良かった~。


 あの男の子になんて言い訳したらいいんだろうと必死に考えちゃったよ。



 隙間から小屋の中を覗き、さて、どうするかと考える。


 男は五人。大して強そうじゃないな。


 剣の師匠である、冒険者のアドル先生に比べたら雑魚なのは間違いない。


 とはいえ、不安だから夜になるのを待とう。


 奴らが寝るか、助けが来るのを待つ……おっと、どうやらそんな余裕はないみたいだ。


「へへ、売っぱらっちまう前にちょっと味見しとくか」


「おいおい、そんなガキでよく興奮できるな」


「いや、やめて! レナに触らないで!」


 壱人の男がレナって名前の女の子の体を掴もうとしたら、もう一人の女の子が間に割って入って来た。


 レナと呼ばれた子も、割って入ってきた子を庇うように前に出ようとしている。


 お互いにお互いを庇い合っている。


 なんて健気な子たちなんだ。


 エリナには、是非ともこの子たちのように育って欲しいものだな。


「じたばたするんじゃねえ!」


 と、男が怒鳴る。


 そんでもって俺が、


「お前がな」


 と言って、ズバシャッ! と男の汚い腕を持っていた剣で切り付けた。


「ぐああああ! いてええええええ! 腕が、腕が切られた!」


「このガキ、どっから来やがった!」


「普通にドアから入って来たぞ。見えなかったのか?」


「くそ! やっちまえ!」


「遅い!」


 やはり雑魚だったか。動きが遅い遅い。


 達人特有の無駄のない歩行をしていないだけで、俺には相手が雑魚だと分かる。


 まぁ、アドル先生に見極め方を教えてもらったからだけどね。


 とりあえず俺は五人全員を切り伏せたあと、女の子たちの縄を解いた。


「ありがとうございます!」


「気にしないでくれ、当然のことをしたまでさ、お礼なら傷付きながらも助けを求めた弟に言うといい」


「ライが? ライは無事なんですね?」」


「ああ、少し怪我をしていたけど俺が回復魔法をかけたから心配ないよ。今頃近くの村で保護されているはずだ」


「よかった……」


 互いに思いやる、良い姉と弟じゃないか。


 素直に羨ましいよ。


 それに比べて我が家の妹は……。


 おや? レナって子はお礼も言わないのか? 別に求めてはないけどさ。


 お礼くらい言ってもいいんじゃない?


 しかも、なんか俺を避けているような気がするし……。


「ん⁉」


 何だこの感じは‼


 急に空気が重くなり、体に纏わりつくような感覚に襲われた。


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