19.襲来

「ふう、これでやっとリンゴの収穫も半分終わったわね」


「うんうん、ありがとねレナ。あなたが来てくれたおかげよ。私たちだけだったらあと三日はかかってたよ」


「ほんとだよ。レナねーちゃん、最初はどっかの貴族様みたいでミミズも触れなかったのに、今じゃモグラも蛇も平気になったもんな」


「こら!」


 ゴツン!


「いて!」


「どうでもいいこと言ってないで、ライからもレナにお礼を言いなさい!」


「うう……ありがとうレナねーちゃん」


「フフ、いいえ」


 

 今、このリンゴ園にいるのは、レナことエリナと、エリナの友人であり、雇い主であるリーシャと、リーシャの弟であるライ、そして二歳になる妹、ナナである。


 リンゴの収穫を半分終え、三人は休憩に入ろうとしていた。


「でも、ライの言うことも間違っていないわ。確かに私は世間を知らなかった。最初は手伝うどころか、随分と足を引っ張ってしまったもの。むしろお礼を言いたいのは私の方、有難うリーシャ、ライ。私に色々と勉強をさせてくれて」


「もう、またそういう難しいことを言う。何の勉強か今一わからないけど、そんな事気にしなくていいのよ。私たちは今レナのおかげで助かってる。それでいいの」


「はい、その通りですね。リーシャ先生」


「レナったら!」


「フフ」


「よし、じゃあ一旦お茶にしましょ。ライ、お茶を取って来るからナナをお願いね」


「いいよねーちゃん。俺が取りに行くから」


「そう? じゃあお願いね」


「ほーい」


  そう言って、ライはその場から離れた。



「ねぇレナ、いつか本当のレナの事を教えてね」


「ええ、いつか必ず教えます。私が自分に自信を持てたその時に」


 しばし談笑をする二人であったが、ライの帰りが遅く、どうしたのだろうと気になった時、二人の目の前に、見るからに怪しい刃物を持った数人の大人たちが姿を現した。


「へへ、こりゃガキにしては上玉だ。高く売れそうだぜ」

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