食事

「あー。さっぱりした。」


「もうすぐ、出来るよ。はい、お水」


「ありがとう」


優生さんは、俺より身長が高くて、何か勝てない気がした。


「で、君は?」


「僕は、朝比奈俊。」


「初めまして、俊君。俺は、大河内優生、理名の夫だ。」


「初めまして」


俺は、大きな優生さんの手と握手した。


「俊君は、理名についてきたの?」


「そうだよ」


「両親に怒られない?」


「怒られない。あの人達は、僕がいない方が喜ぶから」


「立ってないで、座ったら?はい、これ」


そう言って、理名さんは優生さんにビールと俺に林檎ジュースを渡してくれた。


俺は、優生さんとダイニングテーブルに向かい合わせに座った。


「お待たせ」


理名さんは、ハンバーグを持ってきた。


「お子様ランチみたいに出来なかった。ごめんね」


ご飯に、レタスとキュウリとトマトとハンバーグに目玉焼きをワンプレートにのっけてくれたものを出してくれた。


嬉しくて泣いてしまった。


「これでいい、これがいい」


「はい、フォーク」


理名さんは、お味噌汁をマグカップにいれて渡してくれる。


「ありがとう、理名」


「どういたしまして」


「理名、懐かれてるな。ハハハ」


「そうね」


「こっちに、座ってよ。理名」


優生さんの隣に座ろうとする理名さんを自分の隣に誘った。


「仕方ないなぁー。」


理名さんは、そう言って隣に座ってくれた。


「いただきます」


「食べて」


理名さんは、キラキラした顔で俺を見つめていた。


「美味しいよ、理名」


俺は、泣いた。


理名さんのハンバーグは、レトルトよりもフカフカで美味しくて。


俺は、泣いた。


このご飯を、毎日食べたいと思った。


「よかった、よかった。」


「理名の料理、うまいだろ」


「うん、うまい」


「よかったな。沢山食えよ」


優生さんの笑顔に、俺はこの人を傷つけちゃいけないって思ったんだ。


「うん」


俺は、泣きながら食べたんだ。


この日、食べたハンバーグプレートを俺は、今でもずっと覚えてるんだ。


「おかわり、あるよ。」


「ううん、いらない」


「俊君、食べ終わったらゲームするか?」


「あるの?」


「優生、古いゲームじゃん。今の子は、あんなゲームしないよ」


「ええ、そうなの」


「僕、ゲームした事ないから、それやってみたいよ」


俺は、はしゃいでた。


「ごちそうさまでした」


優生さんと一緒に、TVの前に行った。


「これ、これ、やろうか」


「うん」


俺は、優生さんとゲームをやって遊んだ。


それを理名さんが、ニコニコ見ていた。


この家族の一人でいたい。


そう強く思った。


「22時になっちゃったな。送ろうか?」


「はい」


一人でいるのが嫌だったから、嬉しかった。


理名さんの運転する車で、送ってもらった。


「ここです。」


「えー。歩いてでもよかったな」


車で、5分でついた。


「ほんとだね」


「近かったんだね」


「両親に挨拶とかしようか?」


「いらない」


「そっか、気をつけてね」


「うん、バイバイ」


「おやすみ、またな」


「うん」


理名さんと優生さんは、俺が家に入るまでずっと見てくれていた。


ガチャ


「ただいま」


(アハハ、もう、駄目じゃん)


「あんた、帰ったんだ」


冷たい目を向けられた。


「ただいま」


「あんたの分のケーキないから」


「うん」


「うんじゃねーだろ」


ドカッ


「はい」


「誰かに拾ってもらえばよかったのにねぇー。」


「本当、何で帰ってくるかな」


「風呂はいって、さっさと寝ろ」


「はい」


さっきまでの楽しかった時間と対照的だった。


「再沸騰禁止な!シャワーは、5分だからな」


「はい」


いつも、冷たい湯船に入るんだ。


「あんた、明日終業式だっけ?それ終わったら、夏休み?」


「はい」


「あんたの昼御飯ないから、可愛い顔してるんだし、体売っておばさんにでも食べしてもらいなよ」


ママは、そう言って、俺の頭を掴んだ。


パパが、風呂に行こうとした俺を呼び止める。

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