34話 決着

34話 決着


ビッグバンベヒーモスの体内にある遺跡にたどり着き、奥の祭壇へ向かう聖一。


祭壇への橋は途中崩落している。


勢いよく走る聖一。


(これくらいなら力場1回で崩落箇所を越えられる。)


「ほっ!」


ぐぐっと踏み込んでふわっと飛び上がる。


後方宙返り気味の軌道を描きながら、頭は前へ、足は後ろに弧を描く。


ジャンプした体が横になった時に力場を出して踏み込み、勢いよく前方に飛び出す。


崩れ落ちた先の橋が残っているところに難なく到着。


ゴロゴロと回転しながら着地し、渡りきった喜びも見せず前方へ進む。



(まぶしいな…すごい光だ。)




祭壇には光輝く肉片が浮かんでいる。



その肉片から声が聞こえる。




……よくきてくれましたね……





(ん?こ!この声は!!!)



頭に直接響くこの優しい声を聖一は知っている。





(この肉片から響いてくるんだ!この声はやはり!!俺にパワーを授けてくれた!!優しい声の人!!!!)





頭の中の意識が混ざりあう。







……ええ、わたしは……


……この世界の守護天使……


……この世界を守るのが使命……


……しかし……


……わたし1人では……


……ビッグバンベヒーモスに勝てなかった……



(この世界の守り神みたいなものか。)





……ビッグバンベヒーモスに噛まれて食べられて絶命する瞬間に……


……最後の力を振り絞り……


……この脇腹の肉片にパワーと意識をすべて凝縮したの……




……でも体内に入ったは良いけど、ここからでは周りの様子もわからないし……


……パワーも体外に飛ばせない……






……だからパワー増幅させて外と受信するために…この神殿を作ったのよ……


……幸いビッグバンベヒーモスは暴食にして悪食……


……建物でもなんでも食べる……


……あいつが飲み込んだ建築物を私のパワーを使って構築してこの神殿を作ったの……





……ビッグバンベヒーモスは強大でこの世界の人間に倒すのは無理だったわ……





……だから……



……あなた達を呼んだの……


……ビッグバンベヒーモスを倒すにはあなたたち2人のエネルギーが必要だったの……




(そうか、だから俺とこの子を呼んだのか)




……そうだったんだね。よくわからないけどボクは会えて嬉しい……





……うふふ可愛い坊やたち……









……さあ…今こそ3人の力を合わせましょう……


「え?」


……え?……






……合体するのよ……


「合体?」


……合体するの?……




(3人で合体する?やれるのか?いや、やるしかないのか。よし。)



「よし!わかった合体だ!!!!!!!!」


……うん!僕も賛成!!合体しよう!!!!!……



……うふふ…じゃあ心の準備は良いわね…聖一に意識が統合されるけど私達はあなたの中にいる…だから…ずっと一緒だから……



「合体!」


……合体!……


……合体!……







(3人のエネルギーが統合されていく。そして意識が俺に統一されていく感覚がする。)



祭壇の上で3つのエネルギーが混ざりあい、爆発的な輝きを放つ。



(…パワーが溢れていく。)









優しい声の正体はビッグバンベヒーモスにやられてしまった守護天使の肉片であった。



守護天使はこの世界から災いを退ける守り神のようなものである。



突如現れた暴力を止めることが出来ずにビッグバンベヒーモスの体内でパワーを溜めていた。



異世界からやって来た2人と出会い、今、合体する。







そう。この世界の災いビッグバンベヒーモスを倒す為に。




まばゆい光は突如生まれたブラックホールへ飲み込まれてゆく。





守護天使と聖一と少年はブラックホールの中で混ざりあい、合体する。









聖一!少年!守護天使!



全てが重なり合体していく!!




光を飲み込んだブラックホール。そのブラックホールから勢いよく飛び出す聖一。


飛び出すとブラックホールは霧散して消えた。





「合体成功だ。」






(ん?神殿の裏側は胃袋の終わりなのか。巨大な次の十二指腸へのトンネルがある。)








「悪いなビッグバンベヒーモス。合体した俺にはお前なんて敵じゃねぇ。」



(力場数回分のパワーを1回に集める。今なら出来る。)



「うぉぉぉぉ!!!りぃきぃばぁー!!」


残りの力場の全エネルギーを使って巨大な杭の形を生成する。


(杭で内側から頭を串刺しにする!!!)




杭の矛先は脳である。




「どりゃあーー!!!!」




円錐形になっている杭の裏側を足場に踏み込んで飛び出す聖一!


ピストルの弾のように弾き飛んだ聖一は、巨大な巨大な胃袋を脳天とは逆の方向に押していく!






3人のパワーが重なる!!


「どりぁぁー!!!!」


勢いよく押して血が吹き出るが少しパワーが足りない。





……3秒間だけ…ハヤブサみたいに飛べるわよ……



(まじ?よしじゃあとどめだ!)







胃の内側から食道を通り、脳に向かって杭が刺さる!!!





ついには巨大な脳をぶちまけながら杭はビッグバンベヒーモスを貫いた!!!!


眉間から杭がブシューー!!!と飛び出した。





「「「よっしゃあ!!!」」」


(やった!!!)


……やったねお兄ちゃん……


……や、やりましたぁ…ついにやりましたぁぁ…ぐすん…えーんえーん…良かったぁ……




(な、泣くなよー。)


……お姉ちゃん大丈夫?……


……大丈夫よ。緊張の糸がきれちゃった…えへ……






(とにかく良かった。本当に良かった。)






ビッグバンベヒーモスからあふれでた脳みそでできた海を外にいる皆はスレスレでかわして誰も汚れる事はなかった。


マホ以外は。



「げほ!おえ!せ、聖一ぃ~!よ、よくやったわー!!おえぇ!誰か助けてー!!溺れるーおボボおえ~。」


マホが溺れながら聖一の勝利をたたえている。







(ついに倒したぞ!!この世界の災いはこれで無くなったぞ!これで無くなったんだ!!!!平和な世界が待っている!!!!)

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