20話 合流

20話 合流


パンチドラゴンとエンペラーモグラを討伐してかなりパワーアップした3人。


自分達の力を試しながら帰路に着く。


「ピンポイントブラックホールアタック!!あれ、届かないや。ピンポイントブラックホールアタック、ピンポイントブラックホールアタック。届いたわ!」


マホの新魔法ピンポイントブラックホールアタック、射程距離はしっかり目視できる範囲。

ぼんやりでは発動しないようだ。

その距離、約200m。


生物級モンスターの輪郭だけ残して顔面をえぐり取られている。


「あと4回は発動できるわね。」


3時間に1回しか発動できなかった新魔法ピンポイントブラックホールアタックもパワーアップで3時間に5回は発動できる。


「すごいなマホ!!」


「えへへ。」


素直に喜ぶマホ。


「俺は……100m約5秒、走り幅跳び約20m、フルマラソン約1時間くらいには身体能力が向上しているな……。」


「フルマラソン?」


(全力で走れば高速道路の車くらいのスピードは出るな。スタミナを残しながら走っても時速40キロは出てるだろうか。)



聖一の身体能力は飛躍的に向上している。世界記録の倍近いレベルまで向上しているようだ。


(このまま地球戻ったら、すべての競技総ナメできちゃうな。フフフ。偉いことになるな。)


「そんで…最初に力場を使ってから回復するまで約30分か。」


最終的に聖一の力場は一気に30枚出せるようになった。そしてスキル回復時間もかなり早まり30分もあればスキルの使用回数も回復出来るだろう。


「貫通!貫通!ワイドと貫通!!おぉー!モンスターにおっきな穴が空いたです。」


「エネルギー弾が2発と太いエネルギー弾1発!モンスターに穴が空いている!!シャマ、君は戦闘民族か何かなのかい?!」


「戦闘民族ってなんでありますです?」


精霊弓のパワーに興奮する聖一。


「エネルギー弾?戦闘民族?なによそれ?」


「2種類の精霊魔法を乗せても15発は連続で撃てそうでありますです。」


シャマの精霊弓も大幅にパワーアップした。

使い勝手の良い2種類の特徴を持たせた矢でも15発までなら連続で撃てるようだ。

1時間ほどでまた使えるように回復する。


「よし!俺たちは強くなった!!」


「ええ、そうね。」


「はい!満ち溢れていますです!」


3人は顔を見てうなづきあう。


「決戦の準備組と合流しよう!」


「行くわよ!」


「行くでありますです!」



一度ワガマチに着いて装備品、準備物を整えて、1日ゆっくり休息する。


そして次の日の早朝に出発する。


「よし、ではみんながいる決戦が原へ行こう。」


「ええ!決戦が原は、ここから3日歩くのよね。」


「よーし!頑張って移動しましょうです!朝ごはんは歩きながらです!」


「あ、気合いはいってるところごめん、この中に入ってくれるか?ブラックホール!」


ブゥゥンと何もない空間から真っ黒の渦が広がる。


「え?嘘でしょ?ブラックホールって、人間はいれるの?」


「せ、聖一さん!正気ですか?です!」


「あぁ大丈夫だ。ワガマチに帰ってくる時にワータイガーを一回いれてみたんだけど、なにも問題なかったぞ。」


「ワータイガーと一緒にしないでよ!」


(そういえば、生物級までは生きたままいけたけど、その上のクラスのモンスターは拒否する力が強いのか倒してからじゃないと駄目だったな。)


マホに文句を言われているが、気にせずブラックホールについて考える聖一。


「ワータイガーで入れたなら、入ってみるです!」


ピョンと中に入るシャマ。


(お、シャマが入ってくれた。)


ブラックホールを閉じる聖一。


「え?は、は、入っちゃったわよ。」


「大丈夫なはずだ。ブラックホール!」


ブラックホールの渦からシャマがズズッと出てくる。


「あれ?」


「出てきたわね!どうシャマ?怪我してないわね!ふぅー。良かったわ。」


「もー、だから大丈夫だってばー。」


(ふぅー。動物やモンスターで何度も試したとはいえ、内心、ほんのちょっとだけ怖かったから良かったー。)


「聖一さん!入ったと思ったら出たであります。」


「ブラックホールの中の、時間の流れはすごーくゆっくりで、ほぼ止まってると言っても良いからな。」


「だからあったかいスープとか入れて2、3日しても、あったかいままなのね。」


ブラックホールには人が入れる。そしてブラックホールの中はすごーくゆっくり時間が流れている。


「よしでは2人ともブラックホールに入ってくれ。」


「いや、ブラックホールの中に入れるのはわかったけど、なんで入らなきゃいけないのよ…ちょ!」


「一緒に入るでありますです!」


シャマはマホの手をグッとひいて一緒にブラックホールの中に入っていく。


普段は歩くスピードを2人に合わせていた聖一。どうやら戦場が原まで全力で向かうようだ。


(よし、ここから身体能力と武器と力場を使って全力で行く。通常到着に3日かかるらしいからな。明日の昼くらいまでには着くぞー。)


ワガマチの門から南へ走り出す。平地になっていて草原の中に街道がある。



そして森が広がっている。街道は森を迂回するように作られているが聖一は曲がらない。


猛スピードで森に突っ込んでいく。


トップスピードのままジャンプして、すーっと高く飛んでいって大木の枝に着地と同時に木のしなりに合わせてジャンプ。


次の大木の枝に手をついて体をくるっと反転させて上半身と下半身を入れ換えながら枝を越える。


体を反転させる事でジャンプの勢いが逆になる。


勢いが逆になったところで、また枝をグッと踏み込んで次の枝に飛んでいく。


(リバースヴォルト!)


これはパルクールのリバースヴォルトという技である。



この流れを繰り返し、猛スピードで進んでいく。


そしてあっという間に森を抜けた。


(あれ?森を抜けた。1時間くらいかな?街道だ。宿場もある。よし。)


森を迂回する街道を、森を抜けることで一直線に進んだようだ。


(ショートカットかなりできたな。)


街道の少し先には宿場街がある。10件程度お店や宿屋がある場所だ。


(なんでこんなところに宿場があるんだろう。まあいいや。えーと、ご飯は~、うーんまだ良いや。腹減ってないし)


と言ってまた走り始める聖一。


街道を30分ほど走ると山がある。


(あの山、800mくらいかな。)


ジャンプして力場を出してジャンプ。


さらにピッケルをブラックホールから出して山の出っ張った岩に引っ掻ける。腕を勢いよく引き付けて真上に飛ぶ。


くるくると回転しながら真上に飛んで、また力場を出してジャンプ。


そしてまたピッケルを使って上に飛ぶ。


繰り返しているうちに山の頂上に着いたようだ。


(1時間かかってないな。かけ降りるか。)


頂上から猛スピードで今度はかけ降りて行く。


「うらららぁー!!!」


ものの5分で下まで到着する聖一。


(あれ、また宿場町がある。)


そのまま休憩せずに走って街道を進んでいく。


1時間ぐらいすると見渡す限りの草原と1000メートルくらいの直線的な岩山に囲まれた平原が現れる。


(ん、あの辺に人がいるぞ!あ、仲間たちだ!!!)


どうやら3日の道のりを3、4時間で到着してしまったようだ。



本来通りすぎた宿場町が宿泊して休憩するための場所なのだろう。



「おーいみんなー!」


「聖一さん!久しぶりですじゃー!!!!」


ジャイがまた抱きついてくる。


「久しぶりなんだから!」


ムスメも駆け寄ってくる。


その後ろでアント、ハイエル、ハネビ、スミフが本当は抱きつきたそうにして、モジモジしている。


「あれ!マホとシャマはどこなんだから?」


ムスメの問いかけにハッとする聖一。


「忘れてた!ブラックホール!」


ブラックホールからズズッと出てくるマホとシャマ。


「へ?ブラックホールに入ったと思ったら……皆なんでいるのよ?」


「ふ、不思議でありますです。」


「着いちゃった。ここ決戦が原。」


「えぇ!もう着いたのぉー!?ってことは3日もこの中に入れっぱなしだったってことねー!!」


「違う!違うんだマホ!聞いてくれ!」



3日たってないどころかまだお昼だという事を言う前に、マホにボコボコにされる聖一であった。

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