一生懸命

「一生は重すぎるよね」

 

 そう彼女は言ってケタケタと笑った。

 

 それは学校祭のクラスごとのスローガンの事だった。僕たちのクラスのは【一生懸命】。

 黒板にでかでかと書かれている。

 彼女に言われて確かに!  と思って、僕も笑った。

 

 それから数ヶ月して彼女は亡くなった。

 詳しくは聞いていないけれど、あのスローガンの話をした時には既に余命宣告されていたらしい。

 

 あの時彼女はどんな気持ちで笑っていたのだろう。僕にはわからない。わからないのだけれど、彼女の言葉がふと思い出された。

 

「一生は重すぎるよね」

 

 その声はひどく優しく響いた。

 

 END

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