グループ:新メンバー

 選択肢には――『①豊沼健吾、②藍川勝太、③大平弘人』とあった。

(これはねぇだろ、クソが)

 健吾は内心毒づいていた。

(いくらゲームの主催者でも、これはどうよ)

 こんな卑怯な質問はどう答えればよいのだろう。

 本音は①をクリックしたくなるが、本当にそうなのかという自問に陥る。俺で良いのか、と。それでも、弱音を吐くなと自分を鼓舞する。でも、やっぱり早織は自分のことを思っているのか……この永遠のサイクルが健吾を苛立たせる。

(伊織先輩、ひでぇ奴だな)

 言ってはいけない暴言を吐いて、健吾は思い切って一番目のチェックボックスクリックした。




『第十問:最終問題ダヨ! 下の三人の中で、早織が一番好きなのは誰?』

(これはどうなんだよ)

 弘人は思わず顔を渋らせ、頭を掻いた。

(これは、自分で行った方がいいのかな……)

 伊織先輩のことだ、何かを張り巡らせているはずだ。

 だが、それが分からない今、自分、つまり③を選ぶくらいしか選択肢は残っていないのではないか。

(早織ちゃんが一番好きそうなのはどう考えても勝太だけど……)

 それでも、自分に期待している自分がいる。

 それが弘人にとってはウザかった。

「チッ」

 弘人は覚悟を決め、二番目のチェックボックスをクリックした。




『第十問:最終問題ダヨ! 下の三人の中で、早織が一番好きなのは誰?』

 勝太は目を細めた。

(何だこの質問、訝しすぎる)

 早織がデートを申し込んできたのだ。だから、もうこれは自分に選んでも良いのではないか……と思うが、どうする。

 三つのチェックボックスが並んでいるが、どれを押せばいいのだろう。

 伊織は一体何を仕組んでいるのだろう。

 でも、これは行くしかないのではないか。

 そうだ、彼女が直々にやってきて、LINE交換までしたのだ。問題は――ない、ハズだ。




 誰が早織を自分のものにできるか競うグループ

 参加者 健吾・勝太・弘人・いおりん♪


 健吾『うわ、最悪っすね』

 弘人『伊織先輩、最後の問題はひどすぎます』

 勝太『これはズルいけど頭いいな……悔しい』

 伊織『あれぇ? 何のことかな?』

 弘人『チェックボックスの件ですよ』

 伊織『ああ、それね。いやぁ、親切に、一つだけを選択するじゃなくって、を置いておいてあげたのに』

 勝太『完全にやられた』

 伊織『ほらさ、やっぱり誰も告白する権利をもらってないのにさ、誰か一人選ばせるわけにはいかないじゃん?』

 伊織『というわけで、最終問題の答えは、①②③の全部でした~』


 伊織『さてと、それじゃ結果はっぴょ~』

 伊織『一位、勝太(七問正解)、一位、弘人(七問正解)、三位、健吾(三問正解)』

 伊織『でした~』

 弘人『え? マジで? っしゃ!』

 健吾『は、終わっとる』

 勝太『で、一位が二人いますけど、これどうするんすか』

 伊織『お、さすがしょーちゃん、鋭いねぇ。まあ、どっちみち一位が二人いても、一位は一位なんで、残ってもらいまぁす♡』

 健吾『いや、それは変でしょ? あいつは落とすべきでしょ? ねえ、不正したやつを意地の悪い伊織先輩は許すんすか?』

 伊織『ちょ、私への悪口言っていいの?』

 健吾『すみません!! さっきのは無かったことに……』

 伊織『弘人君のことを落とそうとするくせに。自分はやっぱり可愛いんだね、健吾クン? ねえ? どうよ? なんか答えてみてよ?』

 健吾『すみません! ガチで、ホントに、すみませんでした!』

 伊織『じゃあ、最後に一個だけ聞こうか。健吾君は、本気で早織を愛してる? 本気で私のかわいいカワイイ妹に告って、自分のものにしようと思ってる? その自信はある?』

 健吾『もちろん、全部あります!!』

 伊織『じゃ、弘人君も許すね?』

 健吾『はいっ』

 弘人『やたー』




「ふざけんなよ、ゴミが!! 鈴川伊織は男遊びしか考えてねぇだろ!」

 健吾は感情を爆発させていた。

「おい、どうした、なに伊織の悪口言ってんだ。これ、伊織にチクってやろっか?」

 壁を蹴りまくる健吾を見た兄、要吾が脅してきた。

「あ、いや、それはやめてくれ、頼む」

「あ? 何があるんだよ。気になるんだけど」

「何もない。話すことねぇから」

「あ、そ」

「ところでさ、なんで急に『なに伊織の悪口言ってんだ』って言ったの? しかもものすごい剣幕で。そんなに伊織先輩の悪口言うやつ腹立つ?」

 健吾は、少し要吾をイジることにした。

「ああ、腹立つよ」

「何で?」

「だって、それは俺が伊織をあい、いや、ごめん」

「あい? あいの続きは何? 愛してる、じゃねぇの?」

「いや、それは違う……」

「嘘だって」

 あの兄があの伊織先輩のことを好きだと考えると、健吾は思わず吹き出しそうになった。それを必死にこらえるのだが、そのせいで呼吸困難になりかけていた。


 自分の部屋に戻って、スマホを眺める。

 点数が発表され、一位が七点、三位が三点となった。正解数のまんまだ。

 一位は勝太で、五十二点。二位は健吾で四十七点。三位は弘人の八点だった。一位と二位の点差が縮まり、健吾も一位が見えるところまで来た。


 伊織『んじゃ、次のゲームの準備しよっかな。みんな今日は大丈夫って聞いたから、サービスで今日二回目のゲームだよっ』

 勝太『はーい』

 健吾『わーい! 伊織先輩サイコー!』


 適当に返事を返す。伊織先輩を怒らせたら今度こそもうダメだ。だから、ヨイショしておいた方が今後のためになる。


 伊織『そ・の・ま・え・に。発表だよ!』

 伊織『どうぞ!』


 何だなんだ。何の発表なのだ。まさか、伊織先輩が付き合い始めたとかじゃないよな? いや、早織の彼氏が見つかったとかでもないよな?


 かず『こんちは! 五十嵐一樹いがらしかずきっす! よろ!』

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