第二十二話 ケインはがんばる
次の日の早朝――
「よし。準備はいいか?」
「ああ、ばっちりだ」
「うん。完璧」
「じゃあ行くか」
みんなの準備が終わったことを確認した俺は、古代大洞窟の外に出た。そして、ゲルディンとメグジスを繋ぐ道へと向かって歩き出した。
「なあ、ほ、本当に俺が一人でやるんだよな?」
ケインが怯えながらそう言った。
「ああ。まあ、大丈夫だ。危なくなったら俺たちが助ける。それに、出てきたとしてもBかB+だ。意外とA以上は少ないんだぞ?」
「じゃあ、昨日のロックコングは何だ?」
ケインがジト目で聞いた。
「……まあ、頑張れ」
「おい!」
ケインがこんなにもビクビクしているのには理由がある。それは、次現れた魔物は、ケインが一人で倒すことになっているからだ。因みにそうするよう言ったのは俺だ。まあ、ケインの成長の為にやらせることにした。
別にケインは弱くない。危険度がBかB+ぐらいなら、何とかなる。だが、Aランク以上は対処できないことと、昨日ロックコングと出会ったことが、こいつに恐怖を与えているのだ。
「……お、早速いたぞ」
前方にいたのは一頭のフォレストウルフだ。
「ふぅ……あれくらいなら何とかなりそうだ……」
ケインは安堵の表情を浮かべると、息を吐いた。
「じゃ、行ってくる」
ケインは両手に短剣を持つと、走り出した。
「!? グルルルルゥ!」
フォレストウルフはケインに気づくと、ケインを威嚇した。
「はあっ!」
ケインは左手の短剣で牽制しつつ、右手の短剣で少しずつダメージを与えている。
「ふむ。動きはいいな。だが、短剣を振る力が足りない。動きの練習ばかりしていて、実践を全くやっていなう証拠だな。もしかして、魔物を相手にするのは初めてか?」
俺はケインの動きを冷静に分析していた。
「ず、随分と正確なこと言ってくれるじゃないかっ!」
「無駄口を叩く暇があったら体を動かせ!」
「この鬼畜が!
ケインは騒ぎながらも、短剣を振った。その時、ケインの力が少し強くなったような気がする。
「はああっ!」
「グルルア!」
ケインの
「あ~魔物ってこんなに硬いのか……」
ケインは短剣をしまうと、深くため息をついた。
「それそうだ。だから、人間相手とは違う立ち回りが必要になってくる」
俺はちょ~とだけ偉そうにそう言った。
「やれやれだぜ……まあ、今のでコツは掴めた」
「そうか。じゃあ次はロックコングにしてみるか?」
俺はニコッと笑みを浮かべながらそう提案した。
「いや、それは無理だ! てか、俺をいじって楽しんでるだろテメー! 表情で丸分かり何だよ!」
ケインの叫び声が、辺りに響き渡った。
「おい。叫んだからまた魔物が来たぞ」
「マジかよ……だが、フォレストウルフなら何とかなる!」
ケインは再びけんを構えると、フォレストウルフ切りかかった。
「……これで良し」
二頭のフォレストウルフを燃やして、埋めた俺は満足気に頷いた。
「やっぱそのスキルは反則だよな~」
ケインは短剣の手入れをしながらそう言った。
「てかさ、お前のスキルって何だ?」
「ん? 俺は〈気配隠蔽〉だよ」
「いや、お前も普通に良いスキルじゃん」
隠密性に優れたこのスキルは、かなり重宝される。暗殺者、斥候、諜報部員などが主な例だろう。
「まあ、俺はどんなスキルにも可能性があると思って、鍛錬してきたんだ。そのスキルでは出来ないと思われていることを出来るように努力することが大切なんだよ」
〈創造〉では火や水を作れない? だが、努力すれば出来た。
〈操作〉では同時に動かせるのは三個が限界? だが、努力すればその十倍は出来た。
「はぁ~……お前はスキルのことをそのように思ってたのか……そんな考えが凡人の俺の頭に出るわけねーよ」
ケインは深くため息をついた。
「そう言うなって。ほら、〈気配隠蔽〉で、出来そうなことってないか考えてみろよ」
「そうは言ってもなぁ……気配を隠すスキルに可能性ってあるのか……精々スキルの精度を磨くぐらいだと思うんだけど……」
「そうだな……例えば、〈気配隠蔽〉で、他者の気配を隠せないのか?」
「あ~なるほどな。そう言うことか……頭柔らけぇなお前……」
ケインは腕を組むと、頷いた。
「まあ、話はこれくらいにして、さっさと先に行くか」
俺達は、再び歩き始めた。
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