第12話 説得 × 親が約束したルール

王家のリビングには、Duran家も一同揃って集合していた。


リンとエミリオの両親説得会である。


「世界旅行を2人でさせてほしい。いろんな国を廻りたい。僕達と同じ境遇の人がいて、仲良くなれたなら救いたい。そのための金銭援助が欲しい」


そんなような説明をリンとエミリオは熱心に語る。


王家もDuran家も比較的裕福な家庭であり、遠方の大学に行きたいと言ったときのためにある程度の貯蓄をしていた。


当然、毎日2人が話しているのも知っているし、ウェブカメラも買わされたし、またそろそろ何か言い出す時期だろうとの予測もたてていた。


リンの母が口を開く。


「様々な思考を巡らせた結果、やりたいなら、やりなさい。ただし、飛び級をもう1回しなさい。それができたら、2年間自由に学ぶといいわ。そうね、援助も約束するわ」


ようは飛び級できたら、その分は自由にしていいみたいだ。まあ、一般の同じ年齢に追い抜かれるリミットではあるので、わかりやすい考えではある。


エミリオの母が続く。


「その代わり、自分達で稼ぐ術もその2年間で見つけなさい。戻ってきて大学に行きたいなら、大学に行きながら稼げることよ。そして、世界を廻った費用は将来に返却してくれたらいいわ」


父2人も頷いている。


ごもっともな意見である。


実は、2人には秘密にしているが、リンの母とエミリオの母は結婚する前は同じ職場だった。

もちろん、こどもが嫌がらせ的なものを受けていたのを知っていて、それについても話し合っていた。


結論。親は助けないでいよう。その代わり2人を引き合わせてみよう。仲良くなれたなら、お互いが求めたものは援助しよう。


要は、こどものことはこども同士で解決させようという事だ。これが、ウェブカメラがすぐ手に入った理由だった。


なにはともあれ、リンとエミリオは両親の説得に成功した。まあ、実際は先に親が約束したルールの上での頼みごとだったから、両親からしたら突拍子もないことを言い出したけど、応じるしかなかった。


……


今は王家とDuran家が揃ってディナー中だ。


リンの父が口を開く。

「いつも本当に毎日よくそんな話すことがあるな。どんな話をしているんだい?」

リンが答える。

「2人で飽きないようにルールを作ってるんだ。それ以外は勉強したり、いろんな話をしているよ」


「ルール?それはどんなことだい?」

「会話の始まりと終わりにジョークをして、笑った方が負けなんだ」


「そうか、それは毎日楽しいな」

「うんっ!」


それから、リンとエミリオは過去にどんなジョークをしたかを雄弁に語る。

リンはエミリオのジョークを。

エミリオはリンのジョークを。


2人とも笑顔で話していて、その姿を見た母'sは『計画は成功した!』とニマニマしている。


エミリオ父が口を開く。

「それはリアルタイムじゃなく、動画にしてはどうだい?僕達も見てみたいな」


エミリオ父はウェブ関係の仕事をしていた。


「みんなが見て面白いなら、こんなのもあるよ」


エミリオ父は『u-tube』を紹介して見せた。

「一定数評価があればお金も稼げるんだよ」


リンとエミリオは目をキラキラとさせている。


「素顔を晒して襲われでもしたら嫌だわ。ただでさえ海外旅行に行きたいとか言ってるのに」

リンの母が危険だと警笛を鳴らす。


「ルチャリブレみたいにしたら、いいんじゃないか」

リンの父が提案する。


リンとエミリオは「マスクは嫌だ!」と拒否する。


「まあ、2人でどうするかは考えるといいよ。ただの一例を紹介しただけさ」


エミリオ父がそういうと、日常会話に流れていった。


……


ぼくたちは10年後、ホワイトハッカーの会社を作る。


ネットワーク業界の陰謀を明るみにしていく。

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