第8話 薬局 × 彼女との別れ

──eightersポテチ×コーラ事件より遡ること一年。


英人は、薬局が一階に店舗として入るマンションの計画をしていた。


薬局は、客に受け渡す場所と待合室、後は大量の薬をしまう棚から、構成されている。


今日は、その薬局運営会社との打ち合わせだ。


英人は、彼女に振られたばかりで憂鬱だった。


まあ振られるのは当然のことである。


仕事が終わって、家に帰ればパソコンと相対する日々。


英人にとっては、仕事のストレスの捌け口としてその時間が必要なのだから、仕事と同じ優先順位だ。


だから彼女から連絡が来ても、議論中は集中して携帯の鳴る音も聞こえない。


議論が落わったあと連絡はするが、いかんせん、折り返す時間は議論次第のため、既に彼女が就寝していることが多々あった。


休みの日は、彼女とランチや買い物、ディナーをしたりしていたが、平日の連絡が取れない事が問題となり、案の定振られた。


まあ、いつもの事だとは思いつつも、反省しながら薬局運営会社との打ち合わせに向かう。


薬局運営会社の担当は、非常に明るく話をしてくれた。どれくらいの量の薬を棚にしまうのか。から始まり、待合室から調剤室内を見通せるつくりにしないといけないとか。


ここから、話が違う方向に流れていく。


新薬ができる前には治験と言われるものがあり、実際に人間でその薬の効果を試す。


そして、その時点で情報が流れるため、今ある薬を整理しながら、新薬発売予想をした上で棚を準備する。


治験の前にはモルモットで検査もされる。そういった流れで、薬はできるそうだ。


担当はまだまだ話したそうだったが、配置についてはだいたい固まったため、笑顔を武器に足早にその場を立ち去ることにする。


今日は仕事も一段落したし、早めに帰れそうな気がする。

と思いきや逆で、会社に戻ると机に山積みの資料。


英人の残業が確定した。


……


なんとかかんとか仕事を済ませ、電車ではeightersの動画に癒してもらう。帰宅したのは23時だった。


いつものルーティーンでパソコンを起動させて、お決まりのお気に入りチャットグループを、日本と海外で2つ開く。


今日は、日本が静かなようだ。


今日の海外の議題は『エリクサー(万能薬)は作れるか』だった。


エリクサーって、某ゲームにでてくる全回復アイテムだよね?


英人は、伝説や過去の歴史には疎かった。単純に興味がない。


過去の歴史があって、今があるのは理解できる。


ただ英人が興味があるのは、今でもなく間違いなく『未来』だった。


しめたっ!


今日は、薬局運営会社から仕入れたホットな情報がある。


これから新しく作られるであろう薬情報だ。


回答を思案する。


彼女に振られたばかりだ。議題チャットは仕事とイコールなので、仕事以外では彼女が大切だった。


休日のデートでは疲れもとれたし、デートが決まっているときは、その3日前から体調や仕事さばきには集中もした。


体調的にも、朝までチャットしないように心がけた甲斐もあり、頗る健康体だった。


以上に鑑みた結果、英人の得られた回答は、


『答えはyes。エリクサーは作れる。ありとあらゆる薬を混ぜればいいんだ。これからも新しく作られるであろう薬も含めて。これ以外でもエリクサーは既に存在してる。それは、愛する人の笑顔と共に過ごす時間』


我ながらキザな回答だと思った。

日本のチャットならこの回答はしなかっただろう。


ただ海外だったから、自分により素直に、ストレートな言葉が浮かんできた。


結果……


今日のベストアンサーをゲットし、残業の苦労が帳消しになった。


英人は、満たされた気分で無事終えられたので、安息の眠りに着くのだった。──


……


ぼくたちは2年後、ネット通販会社を買収する。


いろんなコレクション販売で出会ったみんなを助ける。

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