第3話女侯爵3

 貴族の子女は例外なく、13歳から18歳の6年間を「聖ラファエル学園」で学ばなければなりません。とはいえ、寄宿学校という訳ではなく、生徒は王都の屋敷から学園に通うのです。地方の貴族は王都に屋敷を借りたりするケースが大半です。婚約者の家に間借りする方も多いので困る事は特にありません。我が国は中央と地方の婚姻が盛んですからね。学園に入学してからもヘンリーの我が家での滞在は変わりませんでした。

 学園での勉学が大変だと言ったり、が出来たという話を聞いたりと、色々な事を互いに何時ものように話していたので全く気が付かなかったのです。なので、ヘンリーに恋人がいたと知った時はショックでした。しかも学生の身で妊娠させた話を聞いた日には寝込んでしまったほどに。私が寝込んでいる間に婚約は解消され、公爵家から多大な慰謝料と賠償金を受け取りました。


 兄のような存在。

 そう思っていた事に嘘はありません。ですが、私は自分でも気が付かないうちに彼に恋していたようです。その気持ちに気付いた時が「恋の終わり」を意味しているとは、なんと間の悪い事でしょう。

 彼はこれから恋人と結婚し新しい家族を迎えるというのに。虚しい……。いいえ、それ以上にこの恋情を彼にだけは気付かれたくない!そう思ったのです。

 この恋は墓場まで持っていく。

 私が決意した瞬間でした。


 それでも国にいれば嫌でもヘンリーとその妻となった男爵令嬢の姿を見る事になります。


「捨てられた女」のレッテルを貼られるも私の誇りが許さない。逃げる事と分かっていても他国に留学する道を選んだのです。表向きは「侯爵家を継ぐための修行」と称して。

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