いっそ本当にただのひどい奴であってくれたら

 ひどい上司のおかげでもうボロボロのおじさんが、山中で出会った見知らぬ子供に、その愚痴を聞いてもらうお話。

 堰を切ったように話し始める主人公の、その長々続く独白が圧巻。
 これが本当に「ただろくでもないだけの上司」であれば、きっと見限れば済む話だと思うのですけれど。
 でも同時に、その上司の持つ魅力に彼自身が惹かれているという、その事実も伝わってくるのがなんとも切ない。

 離れようにも離れ難く、しかしそばにいればいるほど追い詰められてしまう……。
 どうにもならない詰み状態というか、ジリジリすり減っていく様子が本当にこう、好きなんて言ったら悪いんですけど、でも好きです。たまらんポイント。

 これ以上はなかなか触れづらいというか、ネタバレになっちゃうと勿体無いのでぜひ本編で。
 切々とこぼす愚痴の中に、愛憎入り混じった思いが見え隠れする、その重さが素敵な作品でした。