第3話

 詩が下校途中、不良グループに絡まれている中学生がいた。詩は怖くてそのまま逃げようとしたが、林間学校の頃から聞こえる謎の声が、

「一実坊弁存よ。また逃げるのか?」

「仕方ないじゃん…。不良だし…」

「けど、早くしないとあの小僧やられるぞ。行け!」

 謎の声は怒鳴るように言った。

「あー!もう!五月蝿いな!ずっと!あなたは誰なの?姿見せなさい」

 詩は苛立った。

「俺かい?俺はここにいるぞ」

 そう言われて詩は周りを見渡したが、誰もいなかった。

「違う!お前のランドセルの中にいる!」

 そう言われて詩は、ランドセルの中を探り出した。

「いないじゃん!」

「アホ!俺はお前の家の鍵に付いているだろ?」

 詩はランドセルから家の鍵を取り出した。鍵には、赤茶色のトイプードルのぬいぐるみのキーホルダーが付いていて詩のお気に入りのキーホルダーだった。詩は、キーホルダーを見ると

「まさか…トイプーの?なんで?あなた誰?」

「俺は、光善寺の霊犬早太郎だ!」

「は?何でそんなの私のキーホルダーになってるの?」

「詳しい話は後だ!早く助けろ!」

 その瞬間、詩の体は勝手に不良グループに向かって全速力で走った。

「何だ⁉︎あのガキ」

 不良の1人が詩に驚き後退りしたが、詩は鳩尾目掛けてパンチをしたり、飛び蹴りしたりと不良グループを1人残らず倒していった。絡まれていた中学生は、口を開けたままポカンとしていた。

 詩は体の自由がきいた後、絡まれていた中学生と視線が合ったが、中学生は会釈した後何処かへ行ってしまった。


 翌日再び詩は親同伴で学校に呼び出され、厳しく注意を受けた。

 詩が不良グループを倒した話は学校中に広まり、なぜか詩を怒らせたら飛び蹴りされたり殴られるという噂まで立ってしまった。


 そして、霊犬早太郎がなぜピンチの時だけ詩に取り憑いたか詩が話を聞くと、1ヶ月前の林間学校で詩が早太郎の墓を見てた時、早太郎は詩のある事に気がついて詩に取り憑いたのであったそうだ。

「私の何に気づいてたの?私その光善寺ってお寺、あの林間学校で行ったのが初めてだし」

「だろうな…。お前は覚えていないからな」

「え?マジ知らないんだけど」

「単刀直入に言おう!お前は一実坊弁存の生まれ変わりだ!」

 早太郎は真面目に話した。

「え?えー!私が生まれ変わり?待って!一実坊弁存って早太郎と一緒に毎年生贄を捧げている村を化け物から助けたお坊さんだよね?私前世そんな事ししてたの?」

 詩は頭の中がこんがらがりパニックになった。

「そうだ。だから一実坊弁存、またこの間みたいな事があったら助けろよ」

 早太郎にそう言われ、詩はどっと疲れた。

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