第3話:秋月 朱音

秋月あきづき 朱音あかね


アタシは中学の時に仲の良かった女子と同じ高校に行こうと言って受験先を決めた。どこに行きたいと言うのもなかったから深く考えていなかった。

受験は問題なく終わり、はれて私はになった。女子高校生ではなく女子校生。そう女子校。


最初は真新しい制服、新しい環境に胸踊って希望に満ちていた。

アタシの性格はよく言えば活発。自己評価ではガサツ。

中学までは男子と混ざって遊んでいる事も多かった。

高校からは周りは女子だけ。周りに合わせているうちに素を出すことが出来なくなった。本当の自分を出せなくなってしまった。


唯一打ち込めたのは陸上。教室で溜め込んだものを吐き出すように走った。

きっと無理をしている事が分からなくなっていたんだと思う。

一学期の練習中に転倒してしまった。靭帯断裂。何やってるんだろうアタシ。


そこから部活へ行く気になれなくて、部活は辞めた。気が付いたらもうすぐ夏休み。すごく毎日を無気力に過ごしていて、友達からは気を遣われて腫れ物を触るような感じになってしまった。


『もう、学校もいいかな……』

公園のベンチに座り俯いてそんな事を呟いてしまう。

『何があったか言ってごらん』

『えっ』

耳元で囁かれた言葉に顔を上げると、長身のモデルのような綺麗な女性が目の前にいた。ホワイトピンクのストレートヘアを左手で押さえている。

お姉さんはもう一度『何かあったの』と問いかけてくれた。

私は学校での事を話した。

行き場のない気持ちを抱えてどうすればいいのかわからなくなった事をお姉さんに話した。

少し、気持ちが楽になった気がする。


お姉さん、神義しんぎ 莉里華りりかさんとは連絡先を交換して、それからも時々話を聞いてもらっている。段々と学校で過ごすよりも神義さんと過ごす時間の方が心地良くなっていた。


最初は一年先輩の神義さんに対して敬語で話していたのだが『学校も違うし、堅苦しいのも嫌だから、普段通りに話していいよ』と言われてから普段の私を出すようにした。


ある日、神義さんの同級生の男子を紹介された。

第一印象はパッとしない、魅力を感じない男子。『神義さんには釣り合わない』と言う失礼なもの。でも、その人の隣にいる神義さんの表情はすごく自然。

でも、恋人同士のような甘い感じは無く、親友同士のような感じ。

私の事を聞いても坂槙さかまき 遥希はるきさんは態度を変えることもなく接してくれた。


それだけで私も気が楽になった。


夏休みの間は三人で過ごす事が増えていった。

お兄ちゃんとお姉ちゃんができたみたい。

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